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シリコンバレーの思考術(2)

また、ロボティクス(ロボット工学)の発達により、メカニカルの領域もかなりの割合で自動化できるようになってきています。いまでは工場の組み立てラインに工業用ロボットが使われ人がいないため普段は照明すらつけていない「ダークファクトリー」が急増しています。アマゾンの配送倉庫で何万点に及ぶ商品の中から機械がピックアップして梱包ラインに運ぶ映像を観たことがある人も多いのではないでしょうか。

次に「人材循環」があげられます。

シリコンバレーでは、世界中から起業家が集まり激流の中で切磋琢磨して、新たなシステムやアイデアを具現化しています。先ほど話したように100社のうちの1社から2社が驚異的な成長をおさめ残りの98社の開発資金をペイできるようになっているわけですから、ほとんどの起業家は失敗します。(細かくいうと成長過程でM&Aされたりシステムごと大企業に売却してしまったりするケースを含む。)

しかし、ここで失敗した起業家たちは少なくともVCのお眼鏡に叶うだけの期待を受けチャレンジして失敗しただけなので、この失敗を生かせばまた次の可能性が大いにあります。(それでも、失敗の理由を建設的に話すことが出来なかったり、実は資質がないことが分かり失敗した場合は次はないそうですが)ある人は、次のプロジェクトを立ち上げ再度チャレンジしたり、またある人は失敗に終わったプロジェクトの一部を大企業に売り大金を手にして自分がVCになったりもします。

プロジェクトにはいくつかのフェーズがあり、そのフェーズごとで役割や求められる人材も変わるそうです。例えば、ある起業家がシステムのエンジニアが必要だとか、アイデアはあるがお金を上手に集められないので誰か助けてほしいとか、タイムスケジュールを管理できるマネージャーが欲しいなど、様々なスペシャリストが存在し求められるそうです。

この人材循環こそがスピードを生み強度を生むのです。日本にも産学連携というものがありますが、日本の場合「政府・大学・産業界」と三つをトライアングルで結ばれたりしますが、「政府→大学」にお金が配分され、「大学→産業界」に知財(IP)やパテント(特許)が流れ「産業界→大学」にパテントやライセンス料が支払われたりします。

このように日本の場合は流れが一方通行であり循環していなく相互しないことが多い。それに比べシリコンバレーでは、大学の研究者が問題意識を産業界にも張り巡らせ、セオリーのブレイクスルーがあれば、学術的にもビジネス的にも発展がある領域を研究します。また、産業界からも研究者大学のラボに受け入れて、資金提供とともに機材を譲り受けて実験をすることも多いといいます。

そして、研究ラボに所属している博士課程の人材も、共同研究している産業界から研究者に評価されれば就職のオファーが来ることもあるそうです。このように引き抜きにあったカーネギーメロン大学のコンピュータサイエンス部を統括する立場の教授はメディアのインタビューに対して

「こういうことが起こることは当然であり、別に困っていない」と答えたそうです。この教授自身も大学の教授職から一度グーグルに引き抜かれており、その後また大学の教授に戻ったそうです。このように大学と民間企業のあいだにも健全な人材循環があるのです。

さて、これまで述べてきたようにシリコンバレーでは、スピードが驚異的に速く人材循環によって、常に最適な人材が最適なポディションで働いているようにみえます。では、私たちはここから何を学ぶことが良いのでしょうか。

「アイデアを持って驚異的なスピードで世界を席巻し、大金持ちになろう!」というのも良いですが、それはかなり野心的な考えで、壮大な夢を持って自己を奮い立たせなくてはかなり難しい選択だと思います。しかし、シリコンバレーから学べることは多いとわたしは考えます。

「ペインポイントを意識する」

シリコンバレーのスタートアップのアイデアの多くはペインポイントと呼ばれる生活上や作業上の痛点または苦労しているところを改善することにあります。皆さんも社会生活をしている上で「なんでこんなに面倒なやり方なんだろう」や「ここのこれが足りない。これが無駄。」など生活の中には非効率なものがたくさんあると思います。そこを劇的に変えるアイデアが必要なのです。社内会議で1~2時間ディスカッションした位で考えられたアイデアは凡庸で社会に浸透するほどの変革は起こすことは難しい。

何か一つをフォーカスして、それを吟味し熟慮を重ねて、初めて画期的なアイデアは生まれるものです。つまりアイデアは多層構造になればなるほど秀逸になる傾向があるということでしょう。

日本の例でいえば、当時コンビニではしっとりした海苔をまいたおにぎりしかなかったものをパリパリの海苔をご飯と別に包装し劇的におにぎりの需要を拡大させました。パリパリの海苔を別にすればいいと思いついた人はいたと思います。しかし、その海苔をご飯にまくところにまで吟味し仕組みを考え出した人や企業はいなかったのだと思います。

パリパリおにぎりのアイデアでいえば、まず海苔とご飯を別にするアイデアが生まれる(思考)→海苔をフィルムに巻いても湿気らないようにフィルムの材料を熟慮する→フィルムによって分離されたご飯と海苔を再結合するための仕組みを考える→仕組みを具現化するための技術を獲得する。このように一連の流れで商品化されるわけですが、ペインポイントは作り立てのパリパリ海苔のおにぎりが食べたいということから始まり、そのためのいくつもの技術や仕組みを総合してアイデアに肉付けされ、秀逸なものになるのではないでしょうか。

また物事を自分の周りにフォーカスすれば自分だけのペインポイントは多く存在してるのではないでしょうか。このペインポイントを改善することにより自己の時間を効率化し自由な時間を増やすことが可能なのではと考えます。例えば今まで通勤に使う時間の間に日課のものを組み込むことでそのものにかける時間を効率化したり、同じ内容のメールを複数の人に出す場合用の長い定型文を作ったりと、時間の効率化→スピードを獲得することは可能ではないでしょうか。

「チャレンジすることで生まれる失敗の数を増やす」

シリコンバレーで失敗を多く経験した人が評価されると述べましたが、私たちも経験者の話は素直に聞き入れやすいという事実と、社会の失敗に対するプレシャーを無視する精神が必要なのではと考えるからです。どうやら私たちは大人になると失敗しないように、恥をかかないように生きることを選択しがちです。しかし、私たちの脳は常に新しい刺激を求めているように、停滞して留まることが何を意味するのか身体は理解しています。

これは闇雲にぶつかって無謀なことをしろというのではなく、人に誇れるような失敗にチャレンジした方が良いというものです。その失敗は自分を成長させるに留まらず、人の評価をあげることにも一役買ってくれるのではないでしょうか。また、成功を結果として考えた場合、用意周到に準備をしている間に社会の求められる答えが変化してしまうこともありますし、そんなことよりもトライアンドエラーを繰り返した方が時間短縮になったりもします。

失敗の数が多いということは、似たようなケースでは失敗しなくなるというメリットがあります。つまり、今日の失敗は明日の失敗にはならず、明日の失敗は明後日の失敗を予防する効果があるといえます。当然、失敗には痛みが伴うことでしょう。しかし、それこそが私たちにより良い結果を与えてくれる糧となるのではないでしょうか。

2005年にアップルの創業者ジョブズは、スタンフォード大学の卒業式でのスピーチで、よく知られた彼自身の失敗について語っています。そこでジョブズは「自ら立ち上げたアップルを解雇されたのは、当時はわからなかったが、後から考えれば自分の経験の中でベストな経験であり、それまでの成功の重圧から解き放たれ、またゼロからやり直す機会が与えられ、人生で最もクリエイティブな時期だった」と話しています。

偉大な人間ですら失敗を糧にしていることが良くわかります。

私たちも、そろそろ失敗の解釈をかえて、より良い挑戦を始めてみるのも良いのではと思う今日この頃です。

                               おわり

ペインポイントとはコロンブスの卵のことなのではと思うのは私だけ・・・

参考文献:シリコンバレー発アルゴリズム革命の衝撃 櫛田健児著

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no.34 2020.10.2

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