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【小説】フラッシュバックデイズ 22話

この小説は決して違法薬物を推奨するものではありません。
架空の話であり、小説、エンターテイメントとしてお楽しみください。

22話 インド編② 「またお前かよ」

数時間しか眠れなかったのは時差のせいか、暑さのせいかわからないが、
天井で回る頼りない扇風機を見るともう一度寝付く気にはなれず、外に出ることにした。
昨晩のあれほど不安だった暗闇のニューデリーの街は、日常の朝の光景に変わっていた。
ショットグラスのようなグラスに注がれたチャイを買った。
熱くて縁を持ちながら飲んだ甘ったるいチャイは水しか飲んでいなかった身体に染み渡った。たった一杯のチャイを買って飲んだだけだが、なんだかインドに来た事を実感し、少し心が解き放たれた気持ちがした。
心が軽くなると、俺は少し楽しくなってきた。両端に店が並ぶ長い商店街を歩き出した。

メインストリートの商店街を一人で歩いていると、引っ切り無しにインド人に声をかけられる。あいさつ程度の日本語は勿論、おそらく、日本人旅行者に教わったであろう日本で流行っているギャグまで知っている。
それだけならまだいいが、コレを買わないか、ガイドをしてやる等、次から次に声をかけられゆっくりさせてくれない。その中でガンジャを買わないかという声に立ち止まってしまった。
いくらかと尋ねると1G日本円で2,000円程だという、相場が分からないが、
とりあえず実物を見せてもらう為にその男についていく。
メインストリートを入った人気のない路地で男はパケを取り出す。
パケの中には茶色い草が入っていた。匂いを嗅ぐもマリファナ独特の匂いはなかった。大学生は騙せても、アムス帰りの俺は騙されない。
「ノー」強い口調で断り、メインストリートへと戻る。

俺がインドに来たこの当時はバックパッカー/海外一人旅が流行っていた。
日本は勿論、世界中からバックパッカーがインドを旅していた。
メインストリートを歩くと、ヒッピーぽい西洋人やバックパッカーとかなりの確率ですれ違う。声をかけたいが、英語に不安のある俺はなかなか声をかけなられずにいた。
しかし異国の地で見かける東洋人には何故か親近感が沸く。
東洋人ぽい顔を見つけるとすぐに声をかけた。中には中国や韓国人もいたが、ほとんどが日本人だった。そして国籍関係なく、必ず立ち止まって話をしてくれる。
そして立話もなんだからと、近くの店で冷たい飲み物を飲んだり、飯時であれば一緒に飯を食ったり、出会って数分で仲良くなれた。
放す内容は大体決まっていた。
どのルートでニューデリーにたどり着いたか、どの街が良かったか、どこのホテルが安いか、どこの飯がうまいか、両替のレート等の話で数時間はつぶれる。
情報はドンドンと入って来て、これはこれで旅らしく、RPGのレベル上げのようでかなり楽しいのだが、肝心なドラッグの相場や情報はあまり入ってこなかった。
正直インドに来るバックパッカーは全員ドラッグ目的だと思っていたがそうでもなかった。

俺は手当たり次第声をかけるのはやめ、ドラッグ好きそうな見た目のヤツをチョイスして、東洋人、外国人関係なく声をかけていった。
ドラッグ好きそうな見た目のヒッピーぽい西洋人はかなりの確率でイスラエル人が多かった。もう少し英語を話せれば仲良くなれたのにと後悔したが、
ある程度の相場を把握はできた。
今日にマリファナを手に入れると決意し、何とか金を使わそうと声をかけてくるインド人にガンジャはないのか?と逆に聞き返す。
誰一人としてそんなものは知らないと答えない。別のヤツを紹介され、それならコイツがという風にたらい回しにされながらついていくと必ずガンジャに行きつく。実物を見せてもらい結局納得できないモノという事を何回か繰り返す。
面白いのは何回かたらい回しにされている間に、またお前かよと、同じ人間に会ってしまう。相手も同じ結果になっては無駄足なので、別のルートを紹介してくる。
歩き回った甲斐もあってか、お世辞にも良いものとは呼べないが、まともなガンジャにありつけた。吹っ掛けられたが、相場を分かってると相手に悟らせると値下げは容易だった。

日本人旅行客から聞いたお湯の出るシャワーのホテルに移った俺は二日ぶりの汚れを落とし、ベッドの上でジョイントを作り、インドに来て初めての一服をした。
初めてのインドでの一服は格別だった。
朝チャイをのんだ時に心が解放された気がしたが、さらに心が解放された。
インドとマリファナの相性は抜群だ。
インドでの旅がやっと始まった気がした。

つづく

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