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第39回:健康意識が高まるシンガポール

2022年9月28日掲載


先日私はシンガポールを訪問しました。三年ぶりに開催された食品展示会『FHA 2022』に出展するためです。その会場で目撃したのはコロナ禍を経ての現地の変化でした。健康を意識した商品が以前にも増して多く出品されていたのです。そこで今月はシンガポールで広がる健康意識について考察します。

■展示会の注目はプラントベース

FHAは東南アジアで最大級の食品展示会です、シンガポールで二年毎に開催され、出展社は100ヵ国以上から約2,000社、来場者数は40,000人超にも及びます。三年ぶりのFHAは9月5日から8日まで開催され、約42,000人が来場しました。

会場の様子(筆者撮影)


今年のFHA会場で最も混雑していたのは「代替タンパク質パビリオン」です。プラントベース(植物性)食品が集まるエリアなのですが、日本ではまだ見ることがないブランドが多数集結していました。例えば、世界最大の代替肉ブランドの一つであるインポッシブルフーズ(米国)、今年1億米ドルの資金調達を実現させたネクスト・ジェン・フーズ(シンガポール)、ASEAN(東南アジア諸国連合)を代表するフードテック企業であるグリーンレベル(インドネシア)などです。

世界で事業展開する彼らはプラントベースは着実に消費者に届き始めていると自信を深めていました。ブースにいた彼らに状況を聞くと、「数年前はまだ珍しいものとして捉えられていたが、コロナ禍で健康志向が強まり、選択肢として選んでもらえるようになった。味について似ている似ていないという議論は収まってきていて、むしろ違和感なく食べられるという認識が広がっている」と話していました。実際街中でもプラントベースをオプションとして選べるレストランが増えていたと私も感じました。

■ヘルシアチョイスが広まる理由

FHAの会場で「代替タンパク質パビリオン」に次ぐ混雑を見せていたのはシンガポールパビリオンでした。ここでは以前にも増して『ヘルシアチョイス』のロゴマークを確認することができました。ヘルシアチョイスとはシンガポール政府の健康促進局による認定制度で、文字通り同類の商品よりもより健康面であると判断されているものです。日本でいうところのトクホ(特定保健用食品)に近いものですが、商品だけではなくレストランやフードコートといった店舗でも使われているため、地元の人達にとってはお馴染みです。

ヘルシアチョイスのロゴマークは13種類あり、主に5つの特長に集約されます。①塩分が少ない、②糖分が少ない、③脂質、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸が少ない、④カルシウムが多い、⑤食物繊維が多いです。1998年に制度が始まってから今では100種類以上の食品の4,000以上の品目が認定されています。

このヘルシアチョイスが普及している理由はシンガポールにおける生活習慣病患者の増加です。かつて同国のリー・シェンロン首相が糖尿病との戦争発言をしたことは本コラムでも紹介しましたが、状況は残念ながら改善していないようです。


図はシンガポール住民の生活習慣病の割合を示しています。糖尿病、高血圧、高コレステロールのいずれも上昇していることが確認できます。中でも高血圧は3年間で約1.5倍増となっており、問題は深刻です。自国住民の3人に1人が高血圧または高コレステロールまたはその両方であるという事実がシンガポール政府に健康を強く意識させている理由となっています。コロナ禍でさらに大きくなった問題について、日本はどんな貢献ができるのでしょうか。

■薄れるジャパンブランドの存在感

本稿の冒頭私は出展するためにシンガポールを訪れたと書きました。それは植物性タマゴを出展するためで、私が共同創業したUMAMI UNITED(シンガポール)の商品『ウマミエッグ』をASEANでデビューさせるための出展でした。

FHAで植物性タマゴを出展したのは当社とフロートフーズ社(シンガポール)の二社のみ。その二社のブースは通路を挟んで対峙するよう配置され、「来場者に食べ比べてもらおう」という主催者の意図を感じるものでした。そこでブース越しに私たちは、来場者に積極的に食べ比べてもらい、フィードバックを得ることにしました。商品の優劣ではなくそれぞれの特長を確認することにしたのです。その結果、オンリーエッグはドライな食感の“製品”として、ウマミエッグはしっとりな食感を創り出す“原料”として評価されました。

FHAではウマミエッグのような日本産品を並べるジャパンパビリオンがありましたが、会期中は例年のような盛り上がりではありませんでした。コロナ禍で出展が制限されていたことが影響したのかもしれませんが、多数の出展者で構成されていたEUパビリオンとは対照的で、同じく大きなスペースを確保していた韓国や台湾にも見劣りするものでした。日本の食でイメージされるのはヘルシーです。今こそ健康的な食に悩むシンガポールで新たなジャパンブランドの貢献が期待されます。最終商品だけではなく、原料もその一つとして考えられるでしょう。


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