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第43回:値上げラッシュは代替食品普及の契機

2023年1月25日掲載

昨年から市場関係者を悩ませているのがコスト高です。その主因となっている人手不足については先月解説しましたが、同じく大きな要因となっているのが食品の値上げです。値上げになった分を訪日客に価格転嫁することはできても、日本人客に同様の対応をすることは簡単ではありません。日本の消費者はとりわけ価格に敏感だと言われています。では価格を上げられない中で事業者はどう対応したらよいのでしょうか。

■米国では卵が値上がりトップ

米国でも食品・日用品の値上げが続いています。2022年の通年インフレ率は5.79%。新型コロナウイルス禍とウクライナ危機によるサプライチェーン(供給網)のダメージで一時期8%に達していましたが、ここにきて低下しつつあります。とはいえ、11月単月で見ると前年同月比で10%以上上昇している品目が多く、景気の本格的な回復に影を落としています。

図は米国の主要な食品・日用品の値上がり品目のランキングを示しています。トップは卵です。これは大豆やトウモロコシなどの飼料価格が上昇していることも一因ですが、最大要因は鳥インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザ)です。20年から拡大した鳥インフルエンザは米国史上最悪と言われており、昨年だけでも約5,780万羽の産卵鶏が影響を受けました。その前の鳥インフルエンザは15年に発生したもので約5,050万羽への影響だったので、今回は前回よりも15%も被害が広がったことになります。

卵は原料としても様々な食品に使用されており、おのずとベーカリーの価格も上昇しています。パン、ケーキ、菓子類に卵は欠かせない原料であるため、小売りだけでなく飲食店舗や食品市場全体に影響が出ています。卵黄はプリンに、卵白はメレンゲに使われ、それぞれ広く一般に普及しています。普及しているだけに影響は大きいため、生産者はもとより消費者も値上げを受け入れるか、あるいは代替品を探すかの選択を迫られています。

■動物は行動制限できない

興味深いのは卵は49%も値上げになったものの、鶏肉の価格は13%程度で落ち着いていることです。もっとも13%でも大きな値上げと言えますが、これは産卵鶏が100週間飼育されるのに対し、鶏肉となるブロイラーは約10週間で屠殺されるためです。飼育される期間が長い分、産卵鶏は鳥インフルエンザに感染しやすいのです。

とはいえ、これからはウイルスとの共生は避けられないことを我々はコロナから学びました。そしてそのウイルスは人間だけではく、鳥をはじめとする動物を媒介したり、動物に伝染していくことも学びました。人間はロックダウンできても動物の行動は制限できません。ましてや鳥は国境を越えて移動しますので、空からウイルスを撒き散らしていると言っても過言ではありません。

そうしたコントロールできない動物をアテにしていて、果たして私たちは食を安全に確保し続けることができるのでしょうか。

■何度目かの代替食品普及の機会

過去10年で代替食品と呼ばれる市場は拡大を続けています。日本でも代替肉や代替乳といった植物性食品を見る機会が増えたと感じる方も多いでしょう。“本物の”肉や牛乳とどれだけ似ているのかといった話題が先行していた感もありますが、少しずつ一般化してきていると感じます。

コロナ禍前の代替食品はそうした物珍しさばかりが注目されていました。それが長引くステイホームでヘルシーな食が求められるようになり、動物性タンパク質の代替として植物性食品が選ばれるようになりました。味や食感は向上し価格も値ごろ感が出てきています。

そこに今回のインフレ、値上げラッシュです。そして考えてみれば日本は食品輸入国。非常時に備えてバックアッププランや代替プランを持っておかなくてはと、考えるようになっています。市場は食品も代替させる何かを常備しておく必要があるのではないでしょうか。肉、乳、卵、魚といった日常の食原料の代替食品はすでに市場へ投入されています。こうした状況を見るにつけ、このインフレが代替食品の何度目かの普及の契機になるのではないかと、私は注目しています。


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