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唯一の自分の才能にちょっと気づき、調子にのって制作した図工の作品

早生まれのせいもあったのか、身体も小さく、デキもイマイチだった私が唯一、得意で高評価を得られていたのは「図画工作」のみだった…。


前回の章(急に章になった)をご参照下さい。

 次回の図工作品に向けて、小学生の家庭では親の協力のもと、予め必要な素材を用意、ストックしておくのが必須だった。

 私の唯一の得意科目とあって、母も気合が入っていた。
何やら私が好みそうな素材をたくさん買い込んでくれていた。

きれいな包装紙、箱、セロファンなど、意味もなく手にとっては眺めるのが無性に好きだった。

「ホイルカラー」
中でも異彩を放っていたのはこれだった。

 これは、金,銀、赤、青、緑、ピンク、紫、オレンジと確か8色ほどあり、すべてピカピカのメタルカラーだった。

それらはまばゆいばかりに光沢を放っており、幼い私の心をわしづかみにするのに十分だった。
 折り目などつけないよう、丁重に取り扱っていた。

翌日の図工をイメージすると胸は高まった。

そして翌日

 この手の授業はみんな楽しそうだった。
苦手な子は苦痛だったのかもしれないが、私には知る由もなかった。
 
 逆に、運動が不得意な私にとって体育の授業が毎回苦痛だったことを他の子が理解することもないだろう。

先述した通り、ほかに取り柄のない私は、とにかく人目をひく作品をつくり、ほかの子たちの作品との差別化を図ろうともくろんでいた。

”「ホイルカラー」”
「使っちゃおうかな…」「もったいないけど」

大事に取っておきたい気もあったのだが、今回はケーキ制作なので別だった。(*注釈:この当時は今と違い、ケーキなんていうシロモノは特別な日にしか食べることもなく、日常でお目にかかることもそうなかった)

今使わなくていつ使う⁉
しかも今回は潤沢にあるではないか‼

そして惜しげもなく使いまくった。

 やがてみんなは次々に完成させていった。

「素朴な作品」を。

一方、私の「ケーキ」は…。

だんだん雲行きがあやしくなってきたのだった。

そして…。

ケーキとは程遠い謎の物体が完成した。

三段重ねの鋼鈑製カラークロームメッキ仕上げのオブジェ。

「とんでもないモノをつくってしまった…。」

一気に気持ちがしぼみ、みんなに披露、提出するのがはばかれてきた。


「わぁ…」「わー」

どういう種類の「わぁ」かは人それぞれ。

しかし、明らかに高評価を得ているのではないことは幼いながらも肌で感じたのだった…。

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