前回のあらすじ クソでかい虫が家の前で死んでる。 きっとあなたのご先祖さまが帰ってきたのね。 一度よく体に塩を揉みこんでセルフ注文の多い料理店。 てね〜〜〜〜〜〜ッ! とういうわけで私、爆市太郎は毒島ブス子のロックにギターボーカルとして加入したわけだ。 今日は初の音合わせということで、ギターとか機材を学校に持ってきた。 学校に着くやいなや、友達が一斉に私の所へ駆け寄ってきた。 「毒島に見初められたらしいな」 「お前とうとう別世界の人間になっちまったんだな」 「死ぬ
鳥取県に住む、すべて男の金玉を奪い取った、悪しき破壊神、毒島ブス子。 彼女は人の形をした悪魔だ。 「お前、名前は?」 「爆市。爆市太郎です」 今の私は女だ。 しかしこれは生まれつきでは無い。 生まれた時、俺は確かに男だった。 しかし、今こうして私を抱き寄せているこの毒島という女が、去年の四月のいざこざから、鳥取に住む全ての男の金玉を引きちぎってしまった。結果私も巻き込まれてしまい、女になってしまったのだ。 お陰で今年のバレンタインは家が埋まるほど貰った。 「お前か
「ロックをしないか」 軽音楽部部長、毒島ブス子は、国家転覆罪の常習犯であり、網走監獄に何度もぶち込まれた経験のある、鮮やかな帰国子女(赤道ギニア帰り)である。 「その提案に、私は乗りましょう」 イタリア人の父と、アニサキスの母と、ウルトラの祖父を持つ、オドアケル佳代子は毒島の一番(中堅)の親友である。親友を極めた結果、毒島の自己紹介の代行が可能である。 「待ってました。今、私の血肉全てが、ロックに青春を捧げたく、脈動しています!」 ぼっち・ざ・ろっく!の影響で般若心
私は愛されて産まれたのだろうか。 私の名前は山田。 山田椎名林檎擬(やまだ・しいなりんごもどき)だ。 母親が大の椎名林檎好きで、私が男であろうがその名前を付ける気だったらしい。林檎でいいじゃんと言えば、産まれたばかりのお前の顔はとてもじゃないが林檎じゃない、と言われ、ならもどきは余計じゃんと言えば、お前が椎名林檎を丸々名乗るのは嫌だ。と言う。 父親に何故止めなかったのか聞いても、いや、俺も椎名林檎好きだから、と言う。酷い両親だが、私にその名前を付けるために、両親は日本から
勉学を捗る。 勉学とは捗れるか。これは勝負。 いつまでも私の脳裏に焼き付いて離れない学ばれる寺の数々。全部貴重。 とにかく、お坊さんを叱らないこと。 いつもお坊さんは捗る学びの根幹にいる、最後の貴重。 オーイなんて呼ぶなよ。 お坊さんらには覚えなくてはならない名前があるよ。多分。 あれは信極全裸大坊。いつも全裸。 これは天国全裸大坊。いつも全裸。 あちらは念若全裸中坊。いつも全裸。 こちらは運猪全裸中坊。いつも全裸。 あっちのは弁大全裸小坊。いつも全裸。 こっちのは辛口
お母さん、元気でいておくれ。 大好きだったお母さん、生まれたばかりの私を一番に抱き上げてくれたお母さん。 私のことを一番愛してくれたお母さん。 昨日、庭の花が全て枯れたよ。 お母さん、元気でいておくれ。 お父さん、元気でいておくれ。 大好きだったお父さん、悪戯ばかりする私を一番に叱ってくれたお父さん。 私のことを一番思ってくれたお父さん。 昨日、水が止まったよ。 お父さん、元気でいておくれ。 お兄さん、元気でいておくれ。 大好きだったお兄さん、喧嘩ばかりしていたけれど
薫さんはいつも笑っている。24時間笑っている。逆に24時間、笑わなかったことは無い。いつでも、ニコニコ笑っている。 薫さんは私の屋敷の茶の間でいつも笑っている。振袖姿の彼女は、目を細めて笑っている。畳の上で、笑っている。 きっと、笑っている理由は忘れている。薫さんは昔、小学校の先生をしていた。教え子のひとりが、理科の実験で爆発に巻き込まれて死んでしまった。薫さんの関係の無い授業だったが、爆死した子どもの親が、薫さんを酷く責めた。しまいには、薫さんの自宅にまで親がやって
5年前配布されたユダの行方を探してます。 心当たりのある方は警察に通報してくれると助かります。ユダは私の友達でした。でも多分、ユダは多分、私を、多分覚えてない。多分ですが、覚えてないのです。 配布されたユダは以下の通りです。 1.踊る途中に音楽を止められ、少し戸惑うユダ 2.人形のほつれを見つけたユダ 3.インターネット回線に詳しいユダ 4.リレーのバトンを落とした人を庇うユダ お気に入りは4番のリレーのバトンを落とした人を庇うユダです。とても可
死ぬかもしれない。 死ぬかもしれない。 危うくなのか、それとも突然なのかは分からない。死ぬかもしれないとただ強迫的に感じる。 医者に行ったり、先生に聞いたり、教会に行ったりしたがどこでも首を傾げられた。君にそんな死の予兆は無いと。 でも死にそうなんだ。本当に。心が死にそうと、脳が死にそうと、頭が死にそうと、感覚が死にそうと伝えてくる。 病気にかかってる訳でもなく、心が病んでる訳でもない。でも死ぬということだけ分かっている。絶対死ぬ。もう数日持たない。 遺書
彼女の鼻毛全部繋げて、導火線にしてやった。 アイツは死んだけど家族はまだ捜索願出してやんの。ウケる。仕方がないから俺が犯人ってことにしておくけど、それで良き?LINEの既読つけろよ。 煙草についた火を飲み込んで、一回深呼吸。 うわばみがこっちを見てる。スマホで撮影し返したら逃げた。追いかけたら転んだので、追跡は諦めた。どうして? トイレ行きたい? トイレ行きたい! トイレ行きたい? トイレ行きたい! アンサー、スタバに連れてかれたオムツ少年。 自爆を敢行
田んぼに棲むカエルが騒音と感じて生活に支障が出ているという苦情が、ある自治体に寄せられたという。 このことについて、カエルはどう思っているのだろう、と思い、私はカエルが出版している本をいくつか読み漁ってみた。 「人の鳴き声は年々進化、もしくは変化している。最近増発しているのは、小さい声にもかかわらず大きな意味合いを含んだ鳴き声をする種たちだ。これらの誕生は節制を欠ける場が、現実的な空間だけでなく、より遠くに広げられるようになったのが主な要因と考えられる。我々のアタマ
私は、小さな頃からずっと考えていました。 レターパックで現金送れは全て「詐欺」なのでしょうか。 私は、先日友人からレターパックで現金を送れと指示しました。しかしこれは詐欺ではありません。単純な友情です。間違いありません。悪意もなく、騙す気もありません。 相手との合意も取れています。相手も、私がレターパックで現金を送れと支持をすれば、その通り、レターパックに現金を入れ、それをポストに投函するでしょう。 相手はとても信用できます。レターパックで現金送れは全て詐欺で
私の頭上で一羽の赤い鳥が飛んでいる。 名前は「グラスゴー」と言う。 ――――毎朝、私の家の前を穏やかに飛ぶ赤い鳥がいる。これは野良の鳥ではない。非常に優秀で、私が世界で最も賢いと思う鳥だ。 鳥の名前はグラスゴー。図鑑で調べたところ、ショウジョウコウカンチョウという種類の鳥らしいが、中型犬と同じぐらいの大きさをしている、少し太った鳥だ。 この鳥を飼っているのは、私の住む家の前で、電信柱を毎朝かじっているローレンスおばさんだ。ローレンスおばさんは三年前に認知症
人生の事象は糸状にして表現が出来ると思いついたとき、既にその人の手は強く震えていて、もはや収集の取れない所まで混乱しきっていた。 手を強くこすっても、長さ、太さ、色合いも不均等な糸くずが、何本も、何十本もまとわりついてくる。 糸くずを一本、指でつまめばその指先にそれが付く。また剝がそうと反対の手の指でつまむも今度はそっちに糸くずが付く。永遠にそれを繰り返していくうちにまた新しい糸が指に絡まる。 水に浸しても、糸の色はにじみ出てくるのに肝心の糸そのものは流れてい
犬の喧嘩は、すこぶる面白いのは有名だが、カラスの喧嘩というのは更に面白い。犬は忠義に五月蝿い動物だが、カラスはこれに賢さが加わる。しかも、狡猾な側面が強く、一度喧嘩が始まれば、丸一日決着がつかない。犬は勝負の命運が言葉でわからなければ噛みついて判断するが、カラスはそんな野蛮な真似はしない。言葉に大きな強みを感じていて、これに責任を与えている。 私は、ある夏の午後、多摩川河川敷野球場のバックネット裏に隠れながら夕暮れを楽しんでいた。少年たちは帰り、学校は身支度を済ませ、
カロンという、パリで花屋を営んでいる若い女性から、私は一枚の手紙をもらった。内容は、最近買ったスケッチブックが、無くなってしまったから探してほしい、というものだった。しかしスケッチブック程度、君が探せばいいだろうと、私は返事をした。 すると、手紙はすぐに返ってきた。どうやら、そのスケッチブックは、とても特別で、持ち主の言うことをすこぶる聞かないというのだ。どこがどう、持ち主に対して不忠実なのかというと、例えば、赤を塗ったのに、白のキャンバスに青を写したり、線を真っすぐ引