忖度鍋料理を作ることになった日曜日のこと
昨日の日曜日は娘と妻が昼から夜にかけて出かける日であった。
当初、娘と妻は出先で夕食を食べてくると話していた。
これはチャンスと思い、私はあんこう鍋を作る計画を立てた。私と息子(2歳)は非常に味覚が似ている。
あん肝をとかして、あんこうのさまざまな部位が楽しめるあんこう鍋を私と息子は好物にしている。
以前も記事にしたが変わった食べ物が苦手な娘と妻がいない隙に私と息子は好きなあんこう鍋を食べている。
私と息子は食への好奇心が強く、ちょっと変わった食べ物が大好きなのである。
二人とも苦手な食材もなくとにかく、鍋が美味しくなりそうなものを入れて楽しむことがでいる。
しかし今回は、出かける前に娘と妻を前に「じゃあ二人が出かけるんだったら自分と息子は鍋でも適当に作って食べとくね」と言ってしまったのである。
この一言が非常に余計であった。
その結果、娘と妻は「鍋を作るんだったら家に帰ってきて一緒に晩御飯を食べてあげなくもないよ」と謎の上から目線で申し立ててきたのである。
そう言われたら私は二人の好みを大いに忖度して鍋の味や具材を考えざるを得ない。
娘は一般的でない食材は一切口にしない。あんこうを食べるなんて想像もできない。
変わった具材が入っている料理に対しては警戒心が強く出て、「いらない」と好きな具材ですら拒否してしまう。
妻は匂いに敏感であるので、鶏肉が臭かったり癖のある野菜が入っていると、他の具材にも匂いがうつるので鍋料理そのものが食べられなくなる。
私と息子は癖のある食べ物が好きなのであるが、今回は娘と妻に忖度した鍋を作らざるを得ない状況に陥った。
息子と二人で秘密の鍋を食べてやろうという目論見は見事に崩れ落ちることとなってしまったのである。
私の家の近くのショッピングモールにはスーパーとは別に、ちょっと変わった食材を置く八百屋と魚屋と肉屋が入っている。
少し値段は高いのだが、スーパーより品質がいいものや変わった物が手に入るので私は好んでいる。
昨日もそこで買い物をしたのだが、忖度が働き無難な選択になってしまう。
変わった葉物、あまり聞いたことがないキノコ、そしてあんこうのいろいろな部位が入ったセットなど鍋に入れたいものがたくさん売っていた。
しかし昨日はそれを手に取ることができない。娘と妻は違和感がある食材が入っていると鍋料理全てを食べなくなってしまう。
「なんでこんなよく分からないものを入れたの?」と娘や妻に指摘されることは、我が家にとってちょっとした事件である。
家庭内では特に事件は起こらないことに越したことはない。私はあえて波風をたてないタイプである。
こうして無難な味の無難な具材が入った、日本の一般的な鍋料理が出来上がったのである。
この鍋を食べて娘は「パパが作ったとしては美味しい」妻は「普通だけどまあまあ美味しい」との評価であった。
とりあえず事件にならなかったことに安堵しつつ評価もやはり上から目線なのだなと思った。
ただ息子は「おいちいね、おいちいね!」と終始笑顔だったのでとても救われた。
今度こそは秘密裏に息子と私で癖のある鍋料理を食べたいと思っている。
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