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とても面白い短編

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#ショートストーリー

骨朽ちるまで 前

骨朽ちるまで 前

春人君が死んだ。
彼にぴったりな名前だったなと、死んでから思った。
毎年必ず訪れるけれど、それは本当に瞬きの様な一瞬で。例えば桜を観なければ感じ取れない程で、しかし確かに在るのだというその不安定さは、まさに彼の様だった。
私たちは付き合っていたのだと思う。
まだ学生の私達は、大人の様に自分の感情を恋だとか、愛だとかを確かめたり迷ったりする事なんてなく、只毎日登下校を繰り返し、帰り道にプリクラを取っ

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とあるマンション

とあるマンション

「目を覚ましました?」
「…」
「あなた、名前は?」
「…」
「そう、あなたはまだ声帯機能を取り付けられていないのね。なら今のあなたには『目を覚ましたか』という質問より『起動は正常に完了したのか』という方が正しかったみたいね」
「…」
「あなたはHPP‐482番。特に意味はないから覚えなくていいわ、只の記号よ」
「…」
「ここがどこか気になる?あなた達は本当に、同じ反応しかしないわね。説明義務が私

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