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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2019年12月の記事一覧

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (9/9)【出立】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (9/9)【出立】

【目次】

【鉄馬】←

「ふむ……?」

 湖畔、次元転移ゲートのすぐ横に立つ『伯爵』が、眉根を動かす。シルクハットの伊達男は、自慢のカイゼル髭を指でなでる。

「進軍が止まった……かね?」

 多機能片眼鏡<スマートモノクル>を用いて、ツバタたちの戦況を観察していた『伯爵』が、つぶやく。

 距離が離れ、森を挟んでは拡大視機能は使えないが、ご丁寧に篝火を焚いてくれたとあれば、熱源の移動でサムラ

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【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (8/9)【鉄馬】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (8/9)【鉄馬】

【目次】

【再動】←

「いよう、ツバタ。リターンマッチだろ」

 蒸気バイクの主──ナオミは、エンジン音に呑みこまれるほどの小声でつぶやく。

 敵陣が、見慣れぬ乗騎に対する混乱から復帰するまえにしかけようと、車輪を高速回転させる。急発進した車体が、ナオミの重心移動によって飛蝗のように跳ねる。

「ぐえッブ!?」

 先陣の迅脚竜の上方から、鉄馬が落下する。タイヤの回転と車体の重量に巻きこまれ

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【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (7/9)【再動】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (7/9)【再動】

【目次】

【動乱】←

(ああ、でも、砦の連中には迷惑をかけちまった)

 湖の底で、ワンオフバイクの車体の曲線をなでながら、ナオミは胸中でつぶやく。安らぎを覚え、緊張が弛緩すると同時に、息苦しさを思い出す。

(あそこは、ツバタの野郎と相打ちを取っておくところだろ……ま、ウチにしては、よくやったほうか……)

 酸素が欠乏して、意識が揺らぎ、思考が覚束なくなってくる。そのとき、指先に、奇妙な振

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【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (6/9)【動乱】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (6/9)【動乱】

【目次】

【単騎】←

「……なにか、起こったのか?」

 砦のなかに響きわたる警鐘の音で、アサイラは目を覚ます。床をともにしたはずの女領主の姿は、すでにない。

 身なりを整えて、あてがわれた部屋の外に出れば、城内の兵士はおろか、女たちや子供たちも慌ただしく行き交っている。

「あ、土左衛門の旦那ッ!」

「土左衛門は、勘弁してくれないか……」

 廊下を走る女衆の一人が、アサイラに気がつき、

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【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (5/9)【単騎】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (5/9)【単騎】

【目次】

【篝火】←

「ナオミさま、『薙鳥<ちどり>』の鞍と手綱を持ってきたよ!」

「グッド」

「領主さま、太刀と大槍!」

「グッド」

「御前さま、具足を一式、持ってきやした!」

「バッド」

 砦の内側、正門を前にして、兵や女衆はおろか、子供たちまでも慌ただしく行き来している。ナオミは、竜舎から引きずり起こした騎竜の背をなでる。

「鎧はいらないだろ。着こんでいる時間が惜しいし、な

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【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (4/9)【篝火】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (4/9)【篝火】

【目次】

【朧月】←

──ゴゥン、ゴゥン、ゴゥン。

 ナオミは、夢を見ていた。自分の故郷の光景だ。赤毛の娘が産まれ育ったのは、蒸気機関で駆動する灰色の都市、その高級住宅街の一画に鎮座する屋敷だった。

 富裕層の暮らす区画と言えど、うなり声のように響く蒸気機関の音からは逃れられない。むしろ、イクサヶ原に来て、その音が聞こえないことに驚いたくらいだ。

 街の中心部からは、常に蒸気を焚く煙が登

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【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (3/9)【朧月】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (3/9)【朧月】

【目次】

【祝宴】←

「──……んっ」

 ナオミは、自らの居室、畳のうえに敷かれた布団のなかで身じろぎする。どうにも、目が冴えてしまって、眠れない。

 砦の女たちが昼間に干してくれたおかげで、お天道さまの匂いがする寝具のなか、何度も寝返りを打つ。長襦袢のうちで、肌にじんわりと寝汗が浮かぶ。

「バッド。珍しいにも、ほどがあるだろ……」

 寝付きの良さは、赤毛の女武者の数少ない自慢のひとつ

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【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (2/9)【祝宴】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (2/9)【祝宴】

【目次】

【合戦】←

「バッド。わずらわしいにも、ほどがあるだろ……」

 騒がしいばかりの武将たちの祝宴に義理で同席した翌日、ナオミは早々に自分の領地へ向けて出立する。

 昨晩の酒が残っているのか、軽く頭痛がする。朝餉も、箸が進まなかった。女武者は、鞍のうえで自分の額を抑える。

 首を傾げた『薙鳥<ちどり>』が、心配するようにのどを鳴らす。

「ああ、だいじょうぶだ。テメェが気にするよう

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【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (1/9)【合戦】

【第9章】サムライ・マイティ・ドライブ (1/9)【合戦】

【目次】

【第8章】←

──ブオオォォォ……

 乾いた平原に、法螺貝の音が響きわたる。少し遅れて、恐竜たちが吼えたぎる。人間の叫び声は、地を踏みにじる巨竜たちの足音にかき消される。

 荒野に対峙していた両軍の最前列が、接触する。陣笠をかぶった足軽たちの長槍がぶつかり合い、そのあとから続く恐竜が有象無象を踏み砕く。

「グルオォアアァァァ──ッ!!」

 血の臭いを嗅ぎとり、大型肉食竜たちが

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