5号館6階

人文系研究者。 パリを中心とするフランスの食についての不定期エッセイ。 たまには日本の…

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人文系研究者。 パリを中心とするフランスの食についての不定期エッセイ。 たまには日本のことも出てくる。 そのうち器についても書いていく予定。

最近の記事

ヴェネツィアを歩くということ

ヴェネツィアに何をしにきたのかと言われたら、口ごもってしまう。 観光に来たといえば観光に来たのだけれど、ガイドブックに載っている観光スポットにはもう何度か来たことがあるし、わざわざそのために来たのではない。 強いて言えば、歩くためにきたのだと思う。 ヴェネツィアでは、歩くことが楽しい。 歩くこと自体が喜びに満ちている。 ①ヴェネツィアには歩行者しかいない。 一日のうちに、自動車を一度も見ない、ということは、普通ならありえない。 ヴェネツィアでは車をみかけることがない。

    • ヴェネツィア到着

      ヘルシンキからの乗継便が高度を下げていく。 海が視界に入り、細長いリド島が見える。 メストレ地区からの長い鉄道橋の先にヴェネツィア本島が見えてきた。 キャサリーン・ヘップバーン主演の映画「旅情」は、この鉄道の車内のシーンから始まる。 橋に差し掛かると、列車はたちまち海に囲まれる。 乗客は思わず立ち上がって、左右の車窓に目をくべる。 車両が多幸感に包まれる。 もうすぐ、あのヴェネツィアが待っている! ヴェネツィアに来るのは今回が6度目。 これまでは鉄道でのアプローチだったの

      • 【Daniel & Denise】リヨンを代表するブション

        南仏行きの鉄道を予約し損ねて、予定を急きょ変更して立ち寄ったリヨン。 事の顛末はコチラ。 ホテルにチェックインして、動き始めたのは18:00。 今日は移動しただけで何もしていないのだけれど、お腹はもちろん空いている。 ここはなにせフランス屈指の美食の街だ。 何かおいしいものを食べたい。 レストランを目指して、あてもなく街の中心を目指す。 いや、あてもなく、と言うと嘘になる。 前回、2019年に来たときに訪れたブション(レストラン)をいくつか覚えている。 そのブションがあっ

        • まさかのリヨン

          7月には南仏で滞在することにしていた。 カンヌとニースにそれぞれ一週間ほど、宿も確保した。 準備も整い、さあ、あとは行くだけ。 事情があって鉄道の予約をしておらず、出発の数日前にようやく重たい腰をあげて予約サイトを見てみて愕然とする。 パリからカンヌに行く列車がすべて満席になっている。 バカンスシーズンの真っ只中であることを甘く見ていた。 それにしても満席って・・・。 日本の新幹線と違って、座席を確保していない場合は乗車そのものができない。 時間を置いて何度もトライしてみ

        ヴェネツィアを歩くということ

          アペロ・アペロ・アペロ

          フランスの夜は遅い。 夕食をとるにも店は20:00か早くても19:30にならないと開かない。 19:30に入店しても店はがっらがらだ。 21:00くらいになると客がどんどん入ってきて、たいていの店は満席になる。 とはいえ、レストランの席は多くの場合、早く来た人から優先的に良い場所があてがわれるし、人気店でも空席があれば入れてくれるので、開店と同時に行くのが賢いとは思う。 ちなみに夏は21:00でもまだ明るくて、19:30から食べて21:30に終わったとしても外はまだ明るい

          アペロ・アペロ・アペロ

          【Divellec】ババオラムは裏切らない。

          好きな店には通う。 何度も通う。 通うというよりも、行ってしまう。 おいしいものを食べたい、そう思ったときに頭に浮かぶ店がいくつかある。 自分にとってDivellecはそんな店の一つだ。 パリの魚料理の最高峰だろう。 思えば2022年の食事はこの店から始まった。 あれから半年以上の時間が流れた。 季節を変えて、5度目の訪問。 賑やかなテーブルの隣に座らされる。 しかも日本語が聞こえてくる。 ああ、嫌だ。 聞きたくもない話が聞こえてきてしまう。 向こうも嫌なはずだ。

          【Divellec】ババオラムは裏切らない。

          【Semoule】パリのクスクス

          パリに詳しい知人からパリ情報を収集したときに、クスクスのおいしいお店を教えられた。 Chez Leonという店だ。 ブリュッセルのムール貝屋と全く同じ名前なので間違いかと思いもう一度確認したけれど、間違いではないとのこと。 羊のクスクスの写真も送られきて、確かにおいしそうだったので訪ねてみることにした。 Googlemapに住所を入力して行ってみるのだけれど、それらしき店が見当たらない。 何度も何度も行ったり来たりするけれど、なかなか辿り着くことができない。 あるべきは

          【Semoule】パリのクスクス

          プロヴァンの中世祭

          プロヴァンは中世の町並みが良い状態で保存され、世界遺産にも登録されている街。 毎年6月下旬にはフランス最大と言われる中世祭がおこなわれる。 ちょうどパリ滞在のタイミングと重なったので、行ってみることにした。 パリからは東駅発の列車に乗って1時間と少し。 小川が流れる、静かでこじんまりとした街。 イギリスの田舎町を思い出させる。 旧市街全体が会場になっていて、12ユーロの入場料を払う仕組み。 年に一度の祭とあって、すごい人出だ。 そしてマスクなんて誰もしていない。 中

          プロヴァンの中世祭

          【Fleur de Pavé】道端に花は咲いていなかった。

          今宵はFleur de Pavéへ。 ミシュラン1つ星店。 http://www.fleurdepave.com/ 借りているアパートの近所にあり、気になっていたので予約してみた。 Fleur de Pavé。 道端に咲く花か。 日本人のような謙遜の仕方だ。 店に入ると、若い調理人たちが挨拶をしてくれる。 気持ちの良い店だ。 1階はカウンターが基本で、他に小さなテーブルがいくつか。 2階はおそらくテーブル席がメインのようで、4名以上のグループが次々と2階に通されていた

          【Fleur de Pavé】道端に花は咲いていなかった。

          シャンパーニュへの旅② モエ・エ・シャンドンのワイナリー見学

          シャンパーニュへの旅、続編。 つい最近まで名前すら知らなかった街エペルネーを訪れたのはもちろん、シャンパンのワイナリーを訪問するため。 事前にモエ・エ・シャンドンの見学ツアーを申し込んでおいた。 要塞のように巨大なこの建物がモエ・エ・シャンドンの本社。 イタリア湖畔の高級リゾートホテル(を模したラスヴェガスのホテル・ベラージオ)を思わせる開放的なデザイン。 正門を入ってすぐ左には、シャンパンのゴッドファーザーと呼ばれる修道士ドン・ペリニヨンの像が屹立する。 彼の名を

          シャンパーニュへの旅② モエ・エ・シャンドンのワイナリー見学

          【Solstice】創作料理嫌いの私としたことが。

          今宵はSolsticeへ。 https://www.solticeparis.com/ 久しぶりに奮発してミシュラン1つ星店へ。 入店すると日本人のような顔つきの女性が迎えてくれる。 ひと昔前と違って、日本人と韓国人と中国人の区別がつきにくくなっている。 化粧や服装や髪型が似てきているのだろう。 予約名を告げても特に反応するでもなく日本語に切り替わるわけでもない。 フランス語は話せますかと聞かれたので、いいえと答えると、日本語ではなく英語に切り替わるだけ。 あとからわか

          【Solstice】創作料理嫌いの私としたことが。

          【Rotisserie D'Argent】ぺっ。不味い。

          今宵はRotisserie D'Argentへ。 https://tourdargent.com/la-rotisserie-dargent/ トゥール・ダルジャンと言えばパリを代表する歴史的なレストラン。 日本でも良く知られており、テレビなどでも度々紹介される。 唯一の支店は東京のホテルニューオータニにある。 存在自体が文化財と言って良いほど、フランス料理のなかで特別な位置を占めてきた。 ミシュランガイドの3つ星を長らく維持したが、1996年に2つ星に降格し、今では凋落

          【Rotisserie D'Argent】ぺっ。不味い。

          【美麗華酒家】パリの日本人が愛する中華料理ということで行ってみたのだけれど・・・

          今宵はMiramaへ。 https://mirama.fr/ カルチェ・ラタンにある中華料理店。 漢字では美麗華と書く。 つい先日、アジア的な味をたまに食べたくなってきて、ベトナム料理店と中華料理店に立て続けに行ってみたけど、どちらも外れだった。 こちらはパリに住む日本人に愛される名店との評判を聞いて、それは行かなくちゃということで、勇んで訪問。 中華にしてはといっては失礼だけれど、モダンで清潔な店内。 広くないスペースに、テーブルが敷き詰められている。 早い時間だった

          【美麗華酒家】パリの日本人が愛する中華料理ということで行ってみたのだけれど・・・

          【Pottoka】昨日を取り戻す

          今宵はPottokaへ。 4回目の訪問ともなれば、もはや顔なじみだと言わせてほしい。 予約した19:00ちょうどに行く。 いつもの兄ちゃんが笑顔で迎えてくれるだろう。 いつもの端っこのカウンター席が準備されているはずだ。 余裕しゃくしゃくで入店し、名前を告げる。 あれ? いつもの兄ちゃんがいない。 今日はお休みのような。 まあいいや、それはそれだ。 あの~、19:00に1名で予約した者ですが~ コンピューターをチェックしながら困惑顔の女性スタッフ。 お名前は? 予約確

          【Pottoka】昨日を取り戻す

          シャンパーニュへの旅① ポール・ロジェに愛を込めて

          今日は長年の夢の1つだったシャンパーニュへ小旅行。 数あるスパークリングワインの中でもシャンパーニュ地方で生産されるものだけがシャンパンの呼称を使用することができる。 シャンパーニュの中心都市ランスで大聖堂を眺めながらシャンパンをちびちびと飲むのが積年の夢だったのだけれど、調べてみると生産の中心地は実はランスではなくエペルネーという街らしい。 どこそれ?状態だったのだけれど、かちゃかちゃと調べて、行ってみることに。 パリから列車に乗って1時間ほど。 エペルネーに近づくに

          シャンパーニュへの旅① ポール・ロジェに愛を込めて

          【Semilla】引き分けの夜

          今宵はSemillaへ。 https://www.semillaparis.com/fr 地下鉄のオデオン駅から歩いて3分ほどのミシュラン掲載店。 近くには一風堂やこだわりラーメンなどラーメン店も多い。 Fish a boisonaireという魚専門店のオーナーが始めた店とのことで、魚料理に期待が高まる。 前菜は鯛のセビーチェと迷って、鯖のマリネにしてみる。 ヨーロッパで鯖か。しかも生。 大丈夫だろうか。 臭いのだろうな。 でも魚料理専門店なのだし信頼してみようか。 もじ

          【Semilla】引き分けの夜