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【Divellec】ババオラムは裏切らない。

好きな店には通う。
何度も通う。

通うというよりも、行ってしまう。

おいしいものを食べたい、そう思ったときに頭に浮かぶ店がいくつかある。
自分にとってDivellecはそんな店の一つだ。
パリの魚料理の最高峰だろう。

思えば2022年の食事はこの店から始まった。

あれから半年以上の時間が流れた。
季節を変えて、5度目の訪問。

賑やかなテーブルの隣に座らされる。
しかも日本語が聞こえてくる。
ああ、嫌だ。
聞きたくもない話が聞こえてきてしまう。
向こうも嫌なはずだ。
聞かれたくない話が聞かれてしまう。

4人のグループ。
1人はおそらくフランス人と思われる男性。
もう1人は日本人の男性。
この2人はドイツで共に暮らしているようだ。
どうやらゲイのカップルなのだろう。
2人は英語でやりとりをしている。
あとの2人は日本人の女性。
1人は英語が堪能で、もう1人はそうではないらしい。
ドイツから来た2人と、日本から来た2人がパリで落ち合っているようだ。
そんな様子が会話から伝わって来て、なんとなく食事を邪魔される。
もちろん、誰が悪いわけでもないけれど。

集中力の3割くらいを隣のテーブルの会話に持っていかれながらも、食事をスタートさせる。

前菜はおなじみの白身魚のカルパッチョ。

相変わらずおいしい。

食欲をそそる絶妙な酸味。
スパイスの香しさ。
白身魚そのもののおいしさ。
それぞれの要素が喧嘩せず、互いに互いを高め合っている。
間違いなく店を代表する皿だろう。

さて、メインはどうしようか。
あ、オマール海老がある。

今回の旅ではブルターニュまで足を延ばそうと思っていたのだけれど、日程の調整がつかずに断念した。
ブルータニュに行けない代わりに、ブルターニュの名産であるオマール海老を食べることにしよう。

迷うことなくオマール海老をお願いする。

しかし、
注文した直後になんとなく思い出す。
あ、そういえばこの店でオマール食べたことあったのだった。

https://note.com/5_6f/n/na0ea6773d42e

自分のブログを見返して、その厳然たる事実を改めて確認する。
記憶のあやふやさに、自分でもあきれてしまう。

そして、運ばれてきました、オマール海老。

うーむ、おいしいのだけれど、前回ほどの感動はなかった。
これを言ってはどうしようもないのだけれど、オマール海老という素材のポテンシャルがそもそもそれほど高くないような気もしてくる。
日本の海老のような、にじみでる旨味を期待してはいけない。

せっかく奮発したメイン料理だったけれど、期待したほどの満足感もないままに、パクパクと食べ終えてしまう。

相変わらず楽し気におしゃべりを続ける隣席のせいにしておく。

さて、デザートはもちろん、ババオラム。
この店に来たら、頼まないのが不誠実。
こんなおいしいデザートは、パリ広しといえどもなかなか出会えるものではない。

若者の給仕が、さらに若い給仕にババオラムのサービスを指導している。

はい、よくできました。

ババオラムは裏切らない。

熟成されたスパイスの豊かな香り。
ラムの強いアルコール感。
妖しげな森に迷い込んだような気持ち。
酒の酔いもあいまって、陶然とした気分になってくる。

隣席のおしゃべりで夢から醒めることがないように、そそくさと退散した。

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