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卒業式のあの子の花束。

白「あどけなさ」
黄「無邪気」
紫「憧れ」

これはフリージアの花言葉である。
フリージアはスイートピーとならんで卒業式でもらう花と決まっている。
若々しく可憐な花びらは学生の身分にふさわしく、別れを惜しんでもらった花を花瓶にいけ、卒業アルバムをなんとなく見返すたびにいくつもの思い出が浮かび上がっては寂しさに胸が締め付けられた。

私は卒業式にスイートピーの花をもらった気がする。
スイートピーの花言葉は「門出・別れ」。
花びらが飛び立つ蝶の姿に似ているからという。
ちょっと心許ない花びらが透明なセロファンに包み込まれて、いまかいまかと飛び立つ瞬間をうかがっていたかのように感じたのを覚えている。



春風がふわっと頬を撫でる季節になった2021年3月3日。
我が家では制服を脱ぎ捨てて新たな道へと進む妹の卒業式があった。
コロナウイルスの影響により、会場に行くのはひと家族代表者一名とのことだったので、私は自宅からYouTubeで同時放送されている卒業式を見た。
画面に映った卒業式はなんとも不思議な光景で単調なものだった。
みんなマスク姿で声を出さずに静寂に包まれながら厳かに行われていた。
校歌も歌わずにあっという間に終了して味気ない感じが否めない。

だけどコロナ禍で卒業式を開くために動いてくださった先生方の気持ちに救われた生徒も多いのではないだろうか。
友人の顔を見て卒業の時を噛み締め、アルバムの寄せ書きをめいいっぱいに埋めたり、お世話になった先生方に感謝の気持ちを伝えることができたのは、いい思い出に残るのではないだろうか。
学校に通うことがままならず、不安をたくさん抱え、受験勉強にもがき苦しんでいた高校3年生たちに少しでも彩りを添えることができたのではないかと感じた。

何はともあれ、無事に高校を卒業できた彼らに心を込めて「おめでとう」の言葉を贈りたい。



卒業シーズンを迎え、花を抱える人を多く見かけるようになった。
すれ違うたびに名前も知らない彼らを応援したい気持ちが私の中に自然と湧いてくる。
彼らが歩むその先に多くの花が咲き誇りますように。

ちなみに、フリージアを抱えて帰宅した妹にいつまでもそのあどけなさを持っていてほしいと秘かに願ったのはここだけの内緒。
そして、四月からの新しい大学生活を心待ちにしている妹の初々しさをやっぱり羨ましいと感じてしまう私でしたとさ。


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