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小学校のさくらんぼ(ソメイヨシノの実)を食べてみた話

ある日、祖母と歩いて小学校の前を通った時に、
桜の木を見上げると、さくらんぼがなっていました。

「小学校の桜の木にも、さくらんぼがなるんやね」
「ほんまじゃ」
「赤くてツヤっとしとって、おいしそう。」

祖母にそう言うと、祖母は少し考えてから私を見て、
いたずらっ子のようにニヤッと笑い、
「ゆみちゃん、とって帰ろっか」
と言いました。
どうしても食べてみたかったので、私も大きくうなずきます。

「内緒よ、」と祖母が言うので、
私は周りに人がいないことを確認して、
木によじ登り(その頃の私は特技が木登りでした。)、
特においしそうで、赤くてツヤっとした実をいくつかとって、祖母にわたしました。

祖母は、和柄のハンカチに、そっとさくらんぼを包むと、
「持って帰って食べよう」と、
ウキウキとした足取りの私を連れて、家に戻りました。

赤い実はキラキラして、まるで宝石のようで、
こっそりととってきたので、泥棒の気分ですし、
祖母が、あまりに大事に包んで持って帰るので、
とっても、おいしそうに見えてきます。

「見て!小学校に、さくらんぼなっとってん!」
持ち帰ったさくらんぼを早速父と母に自慢しました。
「学校になってたのを、勝手にとってきたの?」
母は、なんとも言えない表情。
「すごい綺麗な実だね。」
父は、興味津々といった様子で見ています。
「おばあちゃんととってきたんよ、食べていい?」
食べたくてうずうずしてるので、
早急に水で洗ってガラスのコップに入れました。
赤い実に水滴がついて、キラキラ反射して、
ますます綺麗でおいしそう。

「ほら、食べてみねぇ」
野草に詳しい祖母が、食べていいと言っているので、きっと毒はありません。

 私は安心しきって、
「じゃあ、、、食べるで!」
と、さくらんぼを口に含みました。

「…………?!」
……めちゃ不味い!渋い!!酸っぱい?!!!
口に入れた実をすぐ吐き出すと、
それを見ていた祖母と母は可笑しそうにケラケラ笑ってます。
父は、ビックリしています。

「そうじゃと思ったんよ、」
と、母。
祖母も笑いながら、
「あんなにおいしそうな実を、鳥が食べとらんなんて、おかしいじゃろ?」
……2人して、わかってて子供に食べさせたのか。
「こんなにおいしそうなのに、そんなに不味いんか。」
父はまじまじとさくらんぼを見つめてます。

どうやら観賞用なので(当たり前)、
ソメイヨシノの実は食用ではなく、おいしくはありませんが、
毒があるわけでもないようです。
(現に、私は生きてますから、
食べたい人は安心して食べてみてください。)

今でも小学校の前を通ると、
私の不味そうな顔を見て笑う、
祖母の少女のような笑顔を思い出して、
いつか自分の子供が出来たら、食べさせてやろう、と思うのです。

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