記事一覧
500年後のぼくたちへ
写真。どれだけ再現技術が進歩しても、写真というメディア自体は、恒久的に残りつづけるだろう。でも、それはぼくにとっては不気味な話なんだ。
ぼくたちは、古ぼけた写真や、白黒のいかにも歴史を感じさせる写真を見れば、それがある程度昔に撮影されたものであることがわかる。あるいは服装や景色から、なんとなく過去であることを推察することができる。
しかし、今撮られている写真は、あまりにも鮮明すぎるし、「ホンモ
ゆっくり廻る、ゆっくり歩く
ぼくは、最近眠りから覚めたときに、自分を一瞬思い出せなくなる。自分を、忘れるのだ。
自分を忘れる、とはどういうことか。
ぼくは7年間、夜勤ではたらいていて、起きるのは決まって夜であるはず、それを現在まで繰りかえしてきたはずなのに、目が覚めた瞬間、「ん、、もう朝、、、?」などと、世間は夜なのに、いまは朝である、と錯覚してしまうんだ。
そのあとにぼんやり考えることはいつも異なっていて、「今日は部活
11月 パプリカのサンドイッチ
きょうは二ついいことがあった。
ひとつは、自分の数少ない友人が自分のレシピをおいしいと言ってくれたこと。
もうひとつは、実家に帰った際に母親に料理をふるまったのだけど、やっぱりおいしいと言ってくれたこと。
ぼくは、何をつくってもいつも不安だった、ぼくの世界には、ほとんど自分しかいない。自分だけが知っている「良さ」みたいなのがあって、はたして他人はどう感じるのか、独りよがりの人生でいいのか、など
10月 〈ダリアのパレット〉
ダリアの絵をかいたあとのパレットをみたら、色がとてもきれいだった、それで思い出したこと。
むかし、美大受験をめざして入った絵画予備校で、講師に「(絵より)パレットのほうがきれいだね」と、よく言われた。これは生徒の心をへし折るための常套句のようなもので、ぼくだけではなく、誰もがそんな言葉を浴びせられてこの世の終わりのような顔をしていた。「クサるだけクサれ」が講師の口癖だった。受験というのは競争で、バ
4月〈間違ったこと〉
長い三日間だった。 症状が起こったのは金曜の仕事から帰ったあとだった。すぐに体から一切の水分をなくしてしまったぼくは腹痛に苦しんで、水面に浮かべた蟻のようにベッドの上をのたうちまわっていた。
翌日の出勤の1時間前になるまでその状態は続き、まったく眠ることもできず、ああ、これはさすがに無理だ、休もう、と親方に電話をかけたつもりだった。が、ぼくの口から出てきた言葉は「こういう状態で動けないのでちょっと
2月 〈「何になる」という声〉
ここ2、3日のうちに書いておいた今月の総括としての日記があったのだけど、2月最終日にしてとてもとても良いことがあったので、良いほうに差し替えておく。
今日、現場での作業を終えたのち、事務所にあがるとすぐさま社長に呼ばれた。いよいよ親方に昇格かな? だとしたら嬉しいけど、ようやく好きなことに打ち込みはじめたところなのにな、せめてもうちょっとだけ猶予が欲しかったな、と気持ちの整理をつける間もなく応接