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動物嫌いの同居人

👆こちらから続く。

気になっていった2頭の子猫のうち、下半身麻痺の子が無事もらわれて行き、安心して全盲の子を我が家に迎えることができるようになった。しかし、そのためには一つ、解決しなければならない大きな問題があった。

実は私は一人暮らしではない。うちにはもう一人、同居人がいる。そして、同居人は大の「動物嫌い」だ。子供のころ、親戚が犬に噛まれるのを見て(同居人自身が噛まれたわけではない)、犬に対する恐怖心を抱いたまま大人になったらしい。

それは理解できる。私も小学生のとき野犬に襲われそうになり、近所の人に助けられたことがある。幸い、咬まれずにすんだが、犬が牙をむいて向かってくる姿は、50年以上たった今でも鮮明に思い出す。

しかし、今、飼おうとしているのは「猫」だ。犬ではない。猫なら良いのではないかと水を向けるが、猫もイヤだという。ともかく「動物は嫌い。」の一点張りだ。何度も、「猫を飼いたい」「絶対イヤ」という不毛な応酬が続いた。

しかし、私(我々)はすでに60歳を過ぎている。最近は猫も長生きだ。平均寿命は12〜18年程度といわれているが、室内飼いなら20年生きる猫も珍しくない。最後まで責任をもって飼うためには、そろそろタイムリミットだろう。そう悠長にもしてられない。

そこである日、尋ねてみた。具体的に、猫を飼うことの何がイヤなのかと。すると、

『猫はおしっこやウンコが臭いからイヤ。』
『猫がその辺りを歩き回るのもイヤ』

とのこと。

動物なら人間も含め、排せつをするのは当然だし、排泄物が臭うのも仕方がないことだ。また、猫を迎えても、家の中を歩き回ることすらできないなら、シェルターにいるほうがまだマシだ。(シェルターには猫の運動の時間とスペースがある。)

これでは交渉の余地などまったくない。もしも、どうしても猫を飼いたいなら、同居を解消するしかないのか・・・?

ヘビのための家

ところがある日、NETFLIXで家のリフォームを題材にした番組が、偶然、目に留まった。それは、ボールパイソンという大型のヘビを飼っている夫婦が、ヘビを中心にした家造りを依頼する内容だった。

その家には、ヘビを入れるケージが夫婦の仕事部屋の真ん中にあり、大きな観音開きのドアを開けるとヘビが真っ先に目に飛び込んでくる。さらに、そのケージは前に引き出せるようになっており、『これなら上から餌のネズミを入れやすいわ!』(生きたネズミを餌として与えるという意味か?)という驚きの発言もあって、考え込んでしまった。

もしも同居人が「ヘビ」を飼いたいと言い出したらどうだろう? ヘビも飼い主にとっては可愛いペットかもしれないが、私にとっては恐怖の対象でしかない。

ひょっとすると、同居人にとっての猫は、私にとってのヘビと同じなのではないか? 私とてヘビが部屋の中を這い回っていたら絶対にイヤだし、ヘビがネズミを食べるところなど絶対に見たくない。

その日から、同居人の主張に対する感じ方が変わった。『猫はおしっこやウンコが臭いからイヤ』なら、どうすれば臭いを消すことができるか、また『猫がその辺りを歩き回るのもイヤ』なら、どうすれば歩き回らせずにすむか、を考えるようになった。

まず、臭いについては、空気清浄機や脱臭機を使えば何とかなるはずだと思った。ネットで探したところ、ペットの毛や臭いを集塵する脱臭機がみつかった。大きさも、この程度なら部屋の隅に置けそうだ。

問題は2点目である。猫には運動が必須だ。歩き回らせず、ずっとケージの中に閉じ込めておくことなどできない。ただ、シェルターでも夜間、猫はそれぞれのケージの中で過ごす。主に猫どうしのケンカや万が一のケガなどを防ぐためだが、家猫の場合も、夜間ケージに入れておけばいたずらや誤食を防げる。また、万が一、災害などのとき、普段からケージに慣らしておけば、避難所などに連れて行きやすいというメリットもある。

幸い同居人は会社勤めをしている。平日は朝8時半頃出かけて、夜7時頃まで帰ってこない。ならば、同居人が不在となる出勤から帰宅までの間は猫を自由に歩き回らせ、同居人が帰宅し、朝、出勤するまでの間だけ、目に触れない場所においたケージの中で過ごさせてはどうだろう?

しかし、我が家はマンション暮らしだ。部屋は「寝室」と「食堂兼仕事部屋」の二部屋しかない。洗面所や台所に余分なスペースなどあるはずもなく、ケージのように大きな物を、目に触れないよう隠しておける場所など現時点では存在しない。しかし、そのスペースが確保できなければ猫を飼うことは出来ないのだ。何とかしてスペースを作り出すしかない。

では、どうやって?

狭いマンションなので、答えはすぐに見つかった。物を隠せるような場所は2ヵ所しかない。服をしまうウォークインクローゼットと、靴をしまうシューズインクローゼットだ。そのうちウォークインクローゼットは、「ウォークイン」と言ってもようやく通れる隙間があるだけで、とてもケージなど入らない。他方、シューズインクローゼットは物置兼用なので、まだ余裕があった。

ただ、物置部分は大きく4等分されており、最大区画のサイズは78x78x59センチである。しかも、前に柱があるので、奥行き51cmまでのケージでなければ中に押し込むことができない。果たしてこの大きさで、中にトイレまで入れられるケージがあるだろうか?

Amazonや楽天をしらみつぶしに探したところ、なんとか「ボンビアルコン (Bonbi) サークルーム コンフォートミニHi」というケージを見つけることができた。幅67×奥行50.6×高さ74.4cm で、中に同社製品「しつけるトイレ」もしくは「ウィークリートイレ」を設置できるというものだ。これならトイレも置ける。

しかし、奥行50.6cm と余裕はわずか 4mm しかない。実際に入るのか? 少し心配だが、これはもう買って試してみるほかあるまい。また、ケージを買う前に、このスペースに現在入っている物たちを断捨離しなければならない。物を捨てるなら、同居人の同意が必要だ。

その晩、私は同居人に私のプランを説明した。

  1. シューズインクローゼットの荷物を整理して、ケージを設置する。

  2. 猫は、同居人の外出中のみリビングに出し、在宅時はケージに入れる。

  3. 同居人が帰宅する数十分前に猫をリビングから出し、脱臭しておく。

  4. シューズインクローゼットにも脱臭機を設置し、適宜、脱臭する。

そして、絶対に猫を同居人の目に触れさせないと確約し、なんとか同居人の同意を取り付けた。これでようやくあの子猫を迎えることができる!

生まれつき両目の眼球がなく盲目だった黒猫ルナ。気管支拡張症という病に苦しみながらも、いつも明るく喜びを与え続けてくれた。 保護猫施設から我が家に来て2年1カ月。
これはその記録です。


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