見出し画像

銀河フェニックス物語 <ハイスクール編> 第一話(2) 転校生は将軍家?!

銀河フェニックス物語【出会い編】スタート版
・<ハイスクール編> 第一話(1

 結局、レイターは裏山へ行かなかったようだ。

 翌朝、登校したらすぐにわかった。
 キーレンの手下が門のところで待ちかまえていた。

 裏山だったら誰にも知られないけれど、あいつ、みんなの見てる目の前でボコボコにされちゃうぞ。始業時間前の中庭ってのは、教師は職員会議で誰も見ていない格好のリングなんだ。

 オレは二階の教室の窓から中庭を見た。

 キーレンたちに囲まれてレイターが入ってきた。
 大人の中に子供が一人だけ混ざっているみたいだ。
 オレだったら、それだけでびびっちまうのに、あいつは緊張感無くオレに手を振った。
「おはよぉ、ロッキー。おはよぉ、女子のみなさん。俺、レイター・フェニックス。よろしく」

15ハイスクール横顔笑顔見上げる逆

 あいつは自分の置かれてる立場、ってもんわかってるんだろか。
 教室という教室の窓から生徒が群がって、中庭を見てる。

「こんな立派な歓迎会、ありがとう」
 歓迎会と間違えてるのかよ。
「とくと歓迎してやる!」
 あ~あ、キーレンの怒りのツボを刺激してるよ。

 女共は心配そうな顔をして固まってる。
 でも、誰も教師に連絡したりしない。そんなことしたら後で大変だってわかってるから。

 向かい合ったレイターとキーレンは、身長が三十センチは違う。
 一発殴られて倒れちまうのが一番いい。下手に抵抗するとキーレンの奴、歯止めがきかなくなっちまう。

 中庭も教室内も、緊張で静まり返る。

 もし、ほんとに危険な状態になったら、みんなオレに止めに行けって言うんだろうな。オレとキーレンは家が近くて、ガキの頃はよく遊んだ。

 だから、今もタメ口で話す。
 ああ、めんどくさい。オレが言ったってキーレンは止めないってわかってるのに。 

n210少年ロッキー前目困った2

 とにかく一発でやられてくれ、とオレは祈った。


「お前の、歓迎会だ!」
 笑ってるんだか怒ってるんだかわからない怖い顔で、キーレンがレイターに襲いかかった。
 女共は目を手で覆いながら、指の隙間から見てやがる。

 と、何が起こったのか、よくわからなかった。

 レイターに触れるかどうか、ってところでキーレンの体が空中に吹っ飛び、ひっくり返った。転んだのか?
 あわててほかの連中がレイターに向かっていく。

 何なんだあいつ。手品を見ているようだ。
 キーレンの手下たちが、バタバタと倒れていく。
 一撃で的確に急所を狙ってる、ってことか。

 十秒でけりが付いた。
「余興はこれで終わりかな?」

15ハイスクール1制服肩かけにっこり

 キーレンは嫌われ者だったから、みんなキーレンに見えないようにしてレイターに拍手を送った。
 やっぱり将軍家の息子は普通じゃない。

 レイターは、息一つ切らすことなく教室へ入ってきた。  

 そのまま何もなかったような顔で、オレの隣に座った。
「お前って、喧嘩強いんだな」
「っつうか、命かかってねぇ喧嘩って久しぶりだったから、あんなもんだろ」
 こいつの言ってる意味が、よくわかんない。     (3)へ続く

第一話からの連載をまとめたマガジン 
イラスト集のマガジン

ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」