銀河フェニックス物語<出会い編> 第十二話(3) 恋バナが咲き乱れる頃に
その週末、S1レースを観戦するため研究所のジョン先輩とフェニックス号を訪ねた。
ここへ来るのもS1プライムの出張以来だ。
レイターに顔を合わせるなり聞いた。
「ねぇ、アーサーさんとチャムールの話知ってた?」
「このところアーサーの様子が変だったから、そんなとこだろう、って思ってたんだ。あいつ女に免疫ねぇから」
アーサーさんと仲がいいのかよくわからないけれど、レイターは知っていたということだ。
「アーサーの相手ができる女性って設計の女神さましか思いつかねぇから、おかげで儲かった」
「どういうこと?」
「ご祝儀相場さ。あんたんとこの株が急騰したろ」
レイターはいつも金儲けのことを考えている。
アーサーさんとチャムールが付き合うことを見越してクロノスの株を買って売り抜けたんだ。
「それってインサイダーじゃないの?」
「それより、俺はあの二人が心配なんだ」
レイターが柄にもなく心配している。
「どうして? お似合いじゃない」
「だって、あの二人の子どもって、考えただけでも怖いぞ、どんな天才だよ」
気の早い心配だ。
でも、ちょっとわかる。天才児なのか、はたまたそうでないのか。
何と言ってもお世継ぎだ。
「その点、俺とティリーさんの子どもは心配いらねぇし」
レイターとわたしの子ども?
パシッ。
気付くとわたしはレイターの頬をはたいていた。
厄病神は一体何を言い出すのか。
ジョン先輩もいる前で。
「バカなことは言わないでちょうだい。大体、あなたには『愛しの君』がいるんでしょ」
レイターには片思いの人がいる。
「それはそれ、これはこれさ」
無性に腹が立つ。問い詰めないと気が済まない。
「『愛しの君』って一体誰なの?」
「銀河最高の女さ」
レイターの声に愛があふれていた。苛立ちが募る。
嫌味をこめて言う。
「ふ~ん。そんな最高の女性とわたしは似てるんだ」
時々わたしは『愛しの君』と似ていると言われる。
「似ても似つかねぇよ、なあ、ジョン・プー」
話をジョン先輩に振った、ということは。
「ジョン先輩も『愛しの君』に会ったことがあるんですか?」
ジョン先輩がうなづいた。
「う、うん」
そして、ジョン先輩はレイターの方へ向き直って言った。
「レイターはもう彼女を追いかけるのを止めた方がいいよ」
「うるさい!」
レイターの真剣な声に驚いた。
空気が一気に凍り付く。この人本気で好きなんだ。
一途な愛、と言う言葉が頭に浮かんだ。 最終回へ続く
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」