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【経営者・マネージャーの意識改革:アート思考の逆効果】

最近はアート思考セミナーのおかげで企業の新規事業や組織改革の相談が多くなっいます。イノベーションや新規事業は企業にとってこれからとても重要な課題になってきます。ただし、ここには大きな落とし穴があります。

新規事業開発以前の問題として、「働き方改革」で既に落とし穴にはまっている企業も少なくないはずです。
問題は「働き方改革」を表面的に導入をしても、逆効果になりかねないという事です。そもそも、働き方が変われば生産性も上がり、離職率も下がるだろう、、とおもったら逆に離職率高くなりエンゲージメントも低下、さらには生産性も下がる場合があります。
失敗する理由は本質を理解しないで働き方=ルール(制度)ばかりを優先するからです。残業なくす、リモートワーク、one on one、やれと言われたから導入してるだけの企業は逆に生産性が落ちるどころか離職を招きます。「早く帰れ、成果はあげろ」これはストレス以外の何物でもない。
本質的な事に気がついていない企業は多いと思います。本質は、人を扱っているということです。人を中心に考えるか、組織の制度が優先するかです。
誰のための働き方改革か? 社員1人1人の働きがいの為です。
誰のための新規事業か? まだ見ぬお客様の笑顔の為です。

つまり、「働き方改革」が目的、「新規事業」が目的になった時点で本質を見失う可能性が高いと言う事です。

企業側都合による制度やルール、方針以上に社員1人1人の「自主性と自律性」から自ずと生み出される組織や新規事業である事が理想です。社員の内発的動機から生まれる自律性や新規事業と、給料のために会社都合の制度やルールとに従うのでは全く違った結果になるのは当然です。

この点に関して、『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク著)はこう書いています。

人は、本来責任を果たすことを”望んでいる”。つまり、課題や時間、方法、チームを確実に任せることが、目的に至る早道だ。

何度か大手企業さんからご相談を受けていますが、話をしていてここは無理だな、、、と感じたところはほとんど発注がきません。(たぶん私がやりたくなさそうな顔するのもある)
上司が部下に「やらせる」と言っているところは大抵ダメです。この「やらせる」は上記の「任せる」とは意味が違います。ここで言う「やらせる」はどこかに責任回避のニュアンスが含まれています。チームを信頼して、全ての責任を覚悟した上での委任でなければ意味がありません。上司こそ「自分ごと」として意識を変えてはじめて部下がその上司のマインドを含めて新規事業なり組織改革に取り組むことができるんです。
理解のある企業さんからは「柴田さんにセミナーやコンサルをお願いして離職者が出たら、それは私が部下を信頼していなかったからだ」
という心強いお言葉をいただいた事があります。まさにその通りです。

新規事業の前に優秀な人才(人材ではなく才能のある個人)確保が先決です。人口は確実に減少してます。人才市場はさらに激化します。
新規事業の前に、優秀な人才に選ばれる組織、流出しない組織運営が必要です。自社は大手だからという考えは捨てた方がいいですね。

私が学生の頃、銀行、公務員、医者、または大手企業に就職すれば安泰と言う概念は普通でした。今はどうでしょう?メガバンクは数万人のリストラを公言し、公務員が働く地方は消滅していきます。AIに臨床データを叩き込めば町医者以上の診断は簡単にできるでしょう。トヨタ自動車は終身雇用が難しいと公言しています。こんな現状ですからz世代(1990年代中盤以降生まれ)に就職=安泰の概念は既にないと思った方がいいでしょう。大学で教えていても、入社前から就職先を1、2年で退職するのを前提にしている学生はザラにいます。新規事業を実現する前に、組織の環境・風土・文化を見直す必要があります。Googleは組織の環境をこのように定義しています。

Google の「効果的なチーム」の定義
 1、心理的安全性
 2、相互信頼
 3、構造と明確さ
 4、仕事の意味
 5、インパクト  
   があります。詳しくは↓こちら。

アート思考は組織のカルチャー(土壌・風土・文化)の上に成り立つものだと考えてください。組織のカルチャーがない組織でアート思考を実行すると空中分解する可能性がとても高いと思います。何のための仕事か?何のための組織か?そして、私はここで何がしたいのか?これが組織を自分ゴト化(自分軸からの発想)する基礎であり、その共通認識が組織のカルチャーで、その基礎があった初めてその上に創造的で自立した個人の集まりとしての組織が成り立ちます。

アート思考は自分の内面に問いかけます。その直感を優先するため、直感的に「この会社終わってる!」と感じる事も当然あります。
逆に直感的に「この会社で仕事を続けたい!」と思うこともある。
経営者や上司の意識が本質的に変わってからでないと、やれ働き方改革だの新規事業だのは全て無駄に終わってしまいます。


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