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今世界のどこかで青に変わった信号

コロナが世界中に蔓延し、一時、どのお手洗いに行ってもアレが使用禁止になっていた。
手を洗った後に、風で乾かすアレである。

よく考えたらアレは、一体何という名前なのだろう。私が知らないのも無理はない、私はアレが相当苦手なのである。

そもそも、コロナウイルスの感染とアレには、ほとんど関係がないのではないだろうか。洗った後の清潔な手についた水を飛ばしても感染には繋がらないし、ウイルスは自己増殖しない。(血まみれの手や、体液まみれの手でないことを前提とする)

問題は、菌である。菌は自己増殖する。私にはどうしても、全てのアレが正しく管理され、清潔な状態を保っているとは思えないのだ。せっかく清潔にした手が汚染されるだけでなく、風によって菌を付近に撒き散らしていそうである。
まだ、ボックスの下に手をかざして、上から風がくるだけの、受け皿のないタイプのものはいい気がするが、U字のアレは、新設の百貨店に設置されていたとしても信頼に値しない。

しかしこのU字のアレを、素知らぬ顔で使用している人もいるのだ。むしろ、トイレにおけるU字のアレの設置頻度からすれば、それがマジョリティなのかもしれない。私だって、友人が目の前で使うのを見て、なんとなく続いて少しだけ使用することもある。「私はU字のアレを使用する人に偏見はありません」というアピールのためだ。ファッションU字のアレである。

まったく、自宅のフローリングに落ちたチョコベビーは平気で口に入れるのに、一体私はU字のアレのなにをそんなに気にする必要があるのだろうか、と自分でも思う。(だってチョコベビーって、なんかツヤっとしてるじゃないですか)しかし、気になるものは気になるのだ。


正直、潔癖症とは言えない私がこんなにも気になるのに、清潔な日々を送っていそうな人々が、平気でU字のアレを使っていることが不思議でならない。まさか、U字のアレに手を入れているとき彼らは、イライラ棒的な感覚を楽しんでいるのだろうか。それにしてはアウトが陰湿である。

もしかして、私だけが菌を恐れすぎなのだろうか。
仮に完全に無菌状態で育てられたゴキブリと、さまざまな菌で汚染された花のどちらかに触れなければならないとしたら、私はゴキブリに触れるだろう。


そう考えると、ゴキブリの嫌な要素は以下にまとめられる。

  1. 不潔

  2. すぐに増殖する

  3. 素早く移動する(飛ぶ)

  4. 我々のパーソナルな生活圏に現れる

特に、4つめの、我々の生活圏に現れるというのが、彼らが毛嫌いされる1番の要因であるような気がする。仮にこれが、キリンなどの人気のある動物であったとしても、キッチンにおもむろに発生し始めたら、出来るだけ排除したいと思うものである。それがもし、不潔ですぐに増殖し、素早く移動するキリンだった場合、それはもうゴキブリである。

そう思えば、U字のアレは、定められた場所から移動することはなく、私の家の中におもむろに現れたりもしない。必要な人だけが使用できるよう、設置された公共の手洗い場のすみのほうに、いつでもスタンバイしてるのである。なんと慎ましいのだろうか。


本日、営業の途中で寄ったサービスエリアで、U字のアレが、解禁されていた。
私たちは少しずつ、世界と折り合いをつけて、生きようとしているようだ。

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