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社長SP Bread Ale / 伊勢角屋麦酒

廃棄予定だったパンの耳をトーストし、原料に使ったビール。ブルワリーは伊勢角屋麦酒

SDGs(持続可能な開発目標)が流行語となって久しい。同社はオンラインショップのサイト上に「持続可能な環境への取組」ページを設けて、ビール業界、そして地球環境の持続性を守る活動を紹介している。麦芽粕(Spent Grain)の飼料化、新工場でのエネルギー効率向上、ホップの地元栽培による輸送エネルギー削減等、着手されている内容は多岐にわたる。

フードロス削減の重要性が叫ばれるにつれ、廃棄予定のパンを使ったビール造りは数年前より広まっているようだ。前述の背景を持つ同社が今作 Bread Ale に着手したのはトレンドへの参画というよりも、活動理念から導かれる自然な流れのように思える。自然な流れではあるが、もちろん確たる技術と地域経済とのつながりがあるからこそできることだとも思う。

グラスに注ぐと、期待どおりトースト様の香ばしいアロマ。英国ホップっぽいハーバル、フラワー系な香りも混ざる。口に含むとパンというより淡色寄りの麦芽らしいふくよかな穀物感、ビスケット感と、軽度だが確とした甘み。苦味は草っぽい、重くないが少し沁みる方向性。一見まったりしたビールだが、後味は爽やかでスッキリ飲める

スタイルはイングリッシュサマーエール。英国系エールにはダイアセチルのバター様フレーバを許容するものもあるが、手元のスタイルガイドラインによるとサマーエールでは「あってはならない」とある。多くのパンにはバターが入っているように思うが、このビールではどのように扱われているのだろう。自分の主観では、少しバター様の印象も感じたが、トースト香からの連想かもしれない。

いずれにしろフレーバー、テイストの輪郭はボヤけていないのに飲み口はライトで快い。草と穀物を軽い気分で楽しめる、かなり自分好みのビールだと思いました。好みがどんどんローグラビティ系に寄っていく今日この頃。

Abv. 5.0%

アロマ :★★★☆☆
→ トースト、ハーブ
フレーバー :★★★☆☆
→ ビスケット、トースト、ハーブ
テイスト
→ 苦味 :★★☆☆☆
→ 甘味 :★★☆☆☆
→ 他 :-
炭酸 :★★☆☆☆
ボディ :★★☆☆☆

前述の通り、廃棄パンを使ったビールは SDGs の目標12にも含まれるフードロス削減の観点から広まりつつあり、日本国内でも複数のブルワリーが取り組んでいるようだ。パン以外にも廃棄対象のフルーツを副原料として使う等、廃棄食材に新たな価値を吹き込む Upcycle 的理念に基づく活動も広まった。ビールの製造過程で生まれる麦芽粕も飼料にされるだけでなく、グラノーラバーVoyager Brewing)やパンづくりDD4D Brewing)等、人間の食用に使っていく動きも見られる。香川県では廃棄されるビールそのものを使って生地をこねた「ビールうどん」(大庄屋製麺)が登場したようだ。

一方で、消費者としての自分は、そういった製品を購入するだけで「何かをやったつもりになり」満足していてはいけない。このことは複数の識者が指摘するところで、自戒としておきたい。目下の深刻な環境危機を乗り越えるには、受け身の消費行動だけでは足りないだろう。自身の生業での活動変容、そして投票行動や政策への意思表示といった社会へのアクションを総動員する必要があると思う。

ビールは製造過程において、環境負荷の大きい飲み物だ。Fat Tire の Torched Earth Ale よりもマシなビールを次世代(と自分の老後の楽しみ)に残すために、取り組むべきことは沢山ある。SDGs に配慮したエシカルなビール関連商品を購入することは、あくまでその第一歩にすぎないということを、肝に銘じておきたい。

また脱線してしまった。

以上

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