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20220515

 遺棄されたトラックの上に、鉄屑、廃材、折れたパイプ、トタン屋根の一部、が折り重なって壁になっている。工事現場のような祭りの後。壁の向こうに用があって、トラックのひしゃげた前輪に足をかける。連れていた女が嫌な顔で見ている。おれは口角を上げて視線で返事をする。大事な物をカバンに詰めて、誰にも見付からないように壁の向こうに投げ込んだのだ。  鏡面の無いサイドミラーを掴んで車輪の上に上がった途端、人骨が目に入る。割れたドアガラスの向こうの運転席に、蜘蛛の糸で縛られ吊るされたようにな

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    • 20220407

      がらくた、鉄屑、砂ぼこり。夢の中で曲を作っていた。錆びた階段と手摺。制服の少女がギターを弾いて、友達の娘がラジカセのスイッチを入れる。フレットを探る感覚と思い付いていたリフ。どれだけ心を砕いて記録しても目覚めれば忘れてしまう。 分かっていたが、何度もスイッチを押す。欠けたプラスチックのRECボタン

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      • 砂漠に座っているが部屋の中にいるような感じがする。砂面や、空もオレンジで風はない。柔らかい空気がする。角の生えた女がおれの膝に頭を乗せて、蜜蜂の話をしている。ふさふさの体毛、大きな複眼、刺した相手と、自身を殺す針。おれは相槌もまばらに、空いた方の膝にギターを乗せて、ブルーズのフィンガリングを練習している。人差し指と中指でフレーズを反復して、親指でEからAのルートを行き来する。頭に巻いていた布が落ちて、女の顔にかかる。そっとそれを拾うと、見開かれた女の瞳が現れ、黄色い光彩が濡れ

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        • ギター

           ピンクと緑のグラデーション、ラメのような光沢を伴う。死んだ友人から譲られたショート・スケールのビザール・ギターはそんな色をしていた。置き引きに遭い、見付かったとの報せが入り、見付けてくれた人に会いに行く。  夜の風俗街。路地裏、コインランドリーの隣の空き家。雨露まばらなトタンの軒下、乾いたコンクリートの段差に少女が膝を立てて座っている。学生服にビニールのパーカー、お団子2つのミッキー・ヘア。  ネオン管の光が前髪から滴るしずくに混じり、その向こうの瞳がこちらを見る。チュッパ

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          • 黄衣の王

             クリスマスの午睡がおれの認識を薄れさせる。サンタクロースはずいぶん前に死んだが(ダダリオ・カマロのくれた15年には概ね満足している)あの頃のような夢を見た。おれの幻視がおれの現実を飲み込む。  教室、古びた校舎。進まない時間と出られない切り取られた次元。義足のHさんが前より歩くのしんどなったかもと呟いて、やっぱプロに見てもうたほうがええすよ、と答える。  鉄パイプや金属の廃材でできた右脚。踵のサスペンションのアイデアを出したのはおれだったが、うやむやにして謝らなかった。

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            • 20211203

               飼っている瞳がガラスのネズミを、部屋で逃がしてしまった。襖の溝、すのこの隙間、絨毯の裏。懸命に探したが見つからない。よく金を借りにくる親戚のおばはん方が部屋に居て、居座り、役に立たない案を喚く。無視して、気付かずにネズミを踏んでしまわないよう細心の注意を払っていると、見つけて、手のひらの中でふくふくと暖かい。  腹の裂けた虫ほどの大きさの猫が足元で両の前足を広げて横たわり、内蔵が床に引きずられている。  戸棚の中では胴が鰻の獣がのたくっている。

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              • 20211202

                廃墟に見える団地、一階のベランダに立つ人影がおれを見る。白髪の中肉の老人。自転車で通りすぎる一瞬目が合って、本当に人かどうか慌てて振り返る。黒い影が立って見え、実存を感じた気がしたが、どの窓にも明かりはなかった。

                • 20211128

                  おいしいごはん/7時間ほぼ休み無くチャリを漕いだ、昨日は5時間。チャリを漕ぐことは思っているより楽なことなのかもしれない/夕陽に綺麗やなあと呟いた橋の上。水面の揺れ反射、煙を吐く工場(こうば)の煙突はシルエットになっていた。写真を撮ろうとした瞬間スマホの電池が切れた/スーサイドの1stをとてもポップに感じた/10年やって徒労だと思っていたが、作曲への意義は多分にある。音楽を聴いて参考になるものを探し、それを楽しんだ7時間/疲れていたが怒った独り言はかなり減っていたような気がす

                  • 20211014

                     夕陽を強く反射させたビルが、自身も夕陽のような顔をして、川面に光を投げる。  橋を挟んで太陽が二つある、と思ったが、橋を渡りながら変わる視点で刻一刻と隣のビル隣のビルに太陽が移る。その鏡像が川面へ投げる光の筋も移る━━その移り変わりを見ていると、不思議な感じがした。  川面にはその光の筋は無数にあって、観測する位置によって浮かび上がる。橋を渡る前・最中・渡り終えた人、の見える筋の角度はそれぞれ違う。しかし、それらは観測するまでは同じ一つの無数として表層の下にいる。  逆側

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                    • 20210906

                      夢の中で絵を描いていた。画材としての夢。 書き味は記憶の上の紙とペンだったが、引こうとしている線と引いた線が曖昧に混ざる

                      • 20210818“Babe, I'm On Fire”

                        腹を裂いて鳥が燃え出で 青空を砕いて 次元を越え 真っ暗な虚ろへ 白く伸びてゆく尾 フィルムの逆回しのように 空の破片が塞がり 見えなくなると 火に呑まれた私だけが残る

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                        • 20210815

                           初恋の女に絵を描く夢を見た。ガラス張りの植物園に猿や虎や孔雀がいて、それらからモチーフを選んでプレゼントの絵を描く。深い緑と亜熱帯の花が、動物や来場した人間が通ると揺れる。花弁も葉も一つ一つがとても大きく、顔を食われそうな気がする。女はクラスの知的障害の男子をなだめ、そばで女の妹が煙草を吸っている。ガキのころの面影がねえな、まあ三十まわりゃあな、と学ラン姿のおれは思って檻に目を移す。  二段ずつの檻が左右で列になって続いている。カメレオン、ヘビ、蜘蛛、昆虫、コウモリ、ネズミ

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                          • 20210808

                             厚手のコートボサボサの長髪赤黒く焼けた肌にズタ袋を提げた狂人が電車に乗ってきて、ドアから外を眺めながら歌い始めた。うまい。ビブラートのしっかりしたハリのある、体ごと鳴らした声量。  ケルアック展の帰りに出来たシチュエーションだと思った。彼ならどのように描写するだろう。会場の幅いっぱいに伸びた文字のびっしりと打ち込まれたタイプライターのスクロール。  冷えきる車内で、展示されていた一つの写真を思い出していた。キリストの帰還、と英語で落書きされた、シティ・ライツそばの壁の前に座

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                            • 20210804

                              部屋から虫を逃がす日々 蜘蛛、蜘蛛、ぼんやりとしていた蝉

                              • 20210806

                                 皮脂を食う魚を買ってきた、と父が言って、紐を引くと口が閉じるビニール製の、縁日で見るような袋を開くと、中に居たその魚数匹が宙を泳ぎ始めた。  蛍光灯の紐や食器棚の取っ手や神棚、線香立てなどの側を漂った後、私の手の小指球に吸い付いて離れなくなった。しばらく、そう言うものか、と無頓着で居たが、吸い付く魚の数が増え、むず痒さが徐々に痛みに至って、痛みを訴えながら手を振る。いくら振っても離れない。痛みが増して手首に血が伝う。手を振る、血が顔に飛ぶ。魚は離れない。脂汗が出る、目が覚め

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                                • 20210801

                                   疲れた神経が女の声を聞きたがる。  窓辺にナギの植わった鉢、朝焼けが古いガラスを通ってハイボールを照らしている。  ずいぶん前に居なくなった女がちらつくことがある。沢山与えられ何も渡せなかった。スーサイドだったおれと共に消えて、眠れない体と、増えていく手の甲のシミだけが残った。ハイボールを飲む。美化された女は詩のテクスチャになって、毎晩の夢のように流れて消えてゆくばかり。  ラジオを点ける、女の声を探す。偶像化された願望は似たもので満たされる。ベッドの中で歌うようなディーヴ

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