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計画的に日本が「侵略」「略奪」されているのがよく分かる本、あります。

これは、2013年に発行された「食の戦争」という本です。

この本には、

アメリカは日本に対して従来から求めてきた様々な規制緩和要求を加速して完結させるためにTPPをやるのだから、医療や食の安全が影響を受けないわけはない。

食の戦争 鈴木宣弘著 文春新書 p122

とあります。



2018年、TPP11協定が発効しました。

そして今は、2022年。

鈴木宣弘さんの予言がどうなったのか、ちょっと調べてみました。





TPPで、日本はどうなった?

TPPの詳細を知っている方、いらっしゃいますか?

実は、「詳細が分からない」のがTPPなんです。

現在、米国など9カ国が行っている環太平洋連携協定(TPP)交渉で、交渉内容を公表しない合意があり、交渉文書は協定発効後4年間秘匿されることが、ニュージーランドのTPP首席交渉官の発表で分かりました。

新聞赤旗 TPP交渉に「守秘合意」発効後4年間、内容公開せずより 2022/8/8引用

それでも、「これって、TPPがらみだよな」という変化と、変化した内容を、いくつかご紹介します。



残留農薬基準の緩和

日本では2017年に残留農薬基準が色々と緩和されています。

生食発1225第4号平成29年12月25日 食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件について  2022/8/8引用

特に話題になったのが、「グリホサート」の緩和。

  • 小麦

  • トウモロコシ

日本は、輸入に頼っています。

  • そば

  • 小豆類

日本人が好んで食べて、アメリカ人はあんまり……ですよね。こういうものの残留農薬基準が、ずいぶん緩和されました。

グリホサートが有効成分なのは、「ラウンドアップ」。アメリカでは訴訟が相次ぎ、「2023年に一般家庭市場から撤退」が決まっています。

それなのに、緩和って……。これも「TPPがらみでは?」と言われています。



「緩和されたのは2019年、TPPは2018年だから、ずれているのでは?」という方。その通りですね。ただ、残留農薬基準緩和は、徐々に進むのです。

ちなみに、日本は「アメリカ農産物の最終処分地」。この計画も、戦後から徐々に進んだんですよ。

詳しく知りたい方は、コチラをご一読ください。



「遺伝子組み換え不使用」と表示できない

2022年3月、「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」というのが決まりました。

これは、ザックリ言うと「〈化学調味料不使用〉と書いてはいけません」という決まり。


そして、こんな決まりもできました。

これは、ザックリ言うと「〈遺伝子組み換えは使用していません〉と書いてはいけません」という決まり。


国産原料にこだわる生産者と、直接話をしたんですよ。「この二つの表示、訳が分からないから、〈国産〉〈無添加〉表示をやめました」とのことでした。

TPPに参加すれば、アメリカの基準に習って、表示義務はすべて廃止されるよう求められる可能性がきわめて高い。

食の戦争 鈴木宣弘著 文春新書 p60

だんだん、そうなっています。




医療が切り売りされ始めた

オバマ大統領も真似した、日本の「国民皆保険制度」

アメリカの大企業には、これが邪魔なんですよ。

アメリカの民間保険会社が日本でシェアを拡大するには国民保険制度がじゃま、相互扶助の共催の税制優遇がじゃま、アメリカの製薬会社の利益拡大には薬価を低く抑える公定制度がじゃま

食の戦争 鈴木宣弘著 文春新書 p128

そして、こんなことが話し合われているって、ご存知ですか?

入院、手術したら、結構お金がかかります。それを「一定額以上になったら、国で支払いますよ」という制度を、財務省が「無駄」「廃止しては?」と言っているのです。

そうしたら、みんな民間の保険に加入しますよね。これも、「TPPがらみ」かもしれませんよ……。



つまり、鈴木さんの予言通りに「規制緩和」「市場開放」が進んでいるのです。



2008年の食糧危機の教訓は、生かされている?

2008年、世界的な食料危機が起きました。

たしかに世界的な不作の年でもあったのですが、「バイオエタノール」が流行し、トウモロコシが原料に使われたのですよ。

この危機は、干ばつによる不作の影響というよりも、アメリカの食糧戦略による「人災」の側面が強かったのである。

食の戦争 鈴木宣弘著 文春新書 p16

この食糧危機、「先物市場に投機マネーが大量にやってきた結果、コメやトウモロコシが値上がりして、庶民が飢えた」というのが、本当の原因です。




2022年、次々に食物が値上がりしていますけど

これの原因は何でしょうか?

輸入小麦は、政府が全量買い取って、それを国内企業に販売する仕組み。その「政府売渡価格」が値上がりしているから、小売価格が値上がりしているのです。

今回の「政府売渡価格」の値上げ。理由を見ればわかりますが、「円安」「石油価格上昇」は一切考慮されていません。



小麦の先物チャートを見てみると……

出典:TRADING ECONOMICS 小麦 - 先物契約 - 価格 2022/8/8引用

2008年と、同じような動きですよね。ちなみに2008年には、

「高くて買えないどころか、お金を出しても変えない」事態が起こっていた。本来はコメの有数の生産国でありながら関税削減を進めて輸入を促進したためにコメ生産が縮小してしまっていた途上国(ハイチ、フィリピンなど)では、主食が手に入らなくなり、死者を出すような暴動が起きたのである。

食の戦争 鈴木宣弘著 文春新書 p22

こんなことが起きました。


農家が激減している日本。

出典:クボタのたんぼ 総農家数の推移 より  2022/8/8引用

日本は「高くて買えないどころか、お金を出しても変えない」事態にはならない、と言えますか?

2008年の教訓が生かされているとは、まったく思えません。



解決策も、ありますよ!

そんな「国民には、何が起きているのか分からない」TPPと、「大企業の言いなり」な日本政府。

ちょっと、気分が落ち込んじゃいます。ただ、鈴木さんは解決策も考えてくれていますよ。

基本的に日本の農業はオーストラリアなどよりも圧倒的に小規模なのだから、少々根代が高いのは当たり前で、高いけれどもモノが違う、品質が良いということが、本当に強い農業の源になる。このことを生産者と消費者が双方に納得する「つながり」が重要である。

食の戦争 鈴木宣弘著 文春新書 p180

信じられないぐらい、安いお弁当。「安い!ラッキー」と思いますけど、その背景を想像してみませんか?

どこの国も買わないような「農薬まみれの農作物」が使われて、「日本の米農家」が買い叩かれて、「加工品工場の従業員」が低賃金で働かされて、「トラックの運転手」が寝ないで食材を運んでいるかもしれません。

そして、その労働者。自分じゃないですか?



儲けているのは「工場」「配送業者」の経営者です。ココにみつがなければ、お金や食料が正しく循環するはずです。



だから、農作物は、農家から直接購入。

頑張っている生産者を、直接応援。

「ホンモノを発見するための手段」と割り切れば、「ふるさと納税」も使い勝手抜群です。


 ビジネスの基本は「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」でなくては持続できないことが忘れられている。「今だけ、金だけ、自分だけ」はその対極だ。

食の戦争 鈴木宣弘著 文春新書 p203


この本には、日本で生き抜くためのヒントが満載です。

TPPの影響は、これからも続きます。「政府の言うことって、本当かな?」自分で考えるためにも、ぜひ読んでみてください!

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