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christmas tree

ぼくはずっとそこにいる。 もう何年も。はるか遠いむかしから。 たくさんの景色をぼくは見てきた。 だれかが泣いているのを。だれかが幸せそうにしている景色を。ただ、ぼくはいつも見ているだけだ。ぼくにできることはない。 だけど、鳥の声や太陽が昇る音、夕陽が沈む音、星が流れる音、きみの話しを聞くことはできるよ。いつでも。 そんなぼくが、たった1日だけ、動いてもいい日があるんだ、それはきみたち人間には誰も気づくことのない、わずかな動きなんだけれどね。 トナカイの鈴の音が空から降りてくる

    • 不確かな壁

      学問は驕り高ぶらせるものではなく、自分の小ささを知るためのもの。 アラスカという巨大な自然は人間の小ささを知るためのもの。 身近にある自然と行くことは出来ないけれど遠くにある自然はつながっている。 「今ここにある世界と別の世界がつながっている気がしてしょうがない」村上春樹 本を読んでいて思うのは、結局ぜんぶ繋がっているなぁと思います。本自体が、ぜんぶ繋がっていると。例えば図書館で、分野別に適当な自分の気になる本を中を見ずに5冊くらい借りてくると、面白い現象が起こります。一

      • 「荒地の家族」感想

        小説に出てくる街並みや東北の訛りが、リアルで物語というより、坂井祐二という人の記録、記憶を読んでいるようで、風景が、とても浮かびやすかった。その街を歩いては、小説の一行がのぼってくる。 全体を通して読みすすめるにあたって、人が生きるということが、ひしひしと伝わってきた。 「災厄」は、人生のうちのひとつなんだけれど3月を迎えるたびに、それはけして、通り過ぎることのできない記憶が残ってしまった。 「元の生活に戻りたい」という「元」とはいつの時点か。これは、私も思っていたこと。 「

        • 悠久~星野道夫さんのこと。

          動物園で、シロクマを見ていた。 目を見開いていたまま、彼はしばらく、じっとしていた。 ここに来る前のことを思い出しているのだろうか。あるいは、やっぱり、帰りたいと思っているのだろうか。 星野道夫さんなら、わかるかもしれない。 アラスカの地図を見ると、カナダの西側にあって、ブルックス山脈があり、その先にバロー岬がある。ブルックス山脈とアラスカ山脈を切るようにユーコン川が流れている。 ここに星野さんはいた。 いるのである。 ひと月以上も人間に会わず、話さず、ただ野生と自然と向き合

        christmas tree

          ナンバー7

          マーク・ロスコのナンバー7 ドアの向こうには、それぞれの世界が広がっていて、好きな扉を開ければいい。 私が、今日開けたナンバー7の扉は鉄のように重く、体当たりして、やっと開きました。扉の向こうには、丘陵のような庭園が広がっていて、雨の山と雲の山があり、風の音もありました。 歩いていると、首を左右にふりながら、セキレイが隣りを歩きました。コンニチハ、というと、頷いたので、とりあえず日本語は通じたようでした。 あなたは今日、何番の扉を開けますか?

          ナンバー7

          豊島美術館

          私が世界中で、いちばん好きな美術館は、瀬戸内にある豊島美術館です。 豊島美術館は今年で開館13年目を迎えます。私が行ったのは、ちょうど10年前、2013年の3月の瀬戸内芸術祭の春でした。 豊島美術館は、内藤礼さんという彫刻家と、建築家の西沢立衛さんが、ともに作ったものです。 豊島を自転車で漕いでまわり、山の上から、白い塊を発見、あ、あれだ!それは、まるで宇宙船のようでした。見つけた瞬間から、自転車を漕ぐペダルが速くなり、今でも、あの感動は忘れません。 やっとの思いで、美術館の

          豊島美術館

          村上春樹さんの新作が楽しみ

          ついに!ついに!!村上春樹さんの新作が4月13日に発売される!! 去年からずーーーーーーーーーっと、そろそろ新刊が読みたい!と思っていた。 今年はじめの、ムラカミラジオでは、大好きなマイケル・ジャクソンのビリージーンを、かけてくれて、ほんとうに嬉しかった!いい1年になるなぁと思っていた矢先に新刊の発表! 嬉しい!しかないのだ。この6年、春樹さん自身がどう過ごしてきたのか、なにを思ってきたのか、毎回私の勝手な思い込みなのだけど、そこを考えるのが、好きなのだ。コロナが広まり未だに

          村上春樹さんの新作が楽しみ

          「デルフトの眺望」

          フェルメールの絵を見に行った。 1度目は、思う存分、鑑賞するために。 2度目は、プルーストの気持ちを味わいたかったので、体調が悪い時に、わざと、フェルメールを見に行ってみた。 プルーストは、病床から起き上がり、見に行ったのは、パリの展覧会で、フェルメールが描いた「デルフトの眺望」だった。雲が泳いでいるように見えて、川が海みたいに広く描いてあって、そこに、癒されたのかなぁと思う。ノルマンディーでの景色をきっと思い出していたのではないだろうか。 「世界でいちばん美しい絵」とプルー

          「デルフトの眺望」

          「使いみちのない風景」

          私は地図を眺めるのが、大好きです。行ってみたい国は、たくさんあります。だいたいは、本を読んでいる中で、そこにある景色を想像しながら、行ってみたいなぁと思うのです。世界地図を眺めていると、可愛らしい名前な国や素敵だなぁと思うネームにひかれます。例えばクリスマス島、村上春樹さんの小説からは、クレタ島、イッカクがいると思われるバフィン湾、火星と同じ環境だろうと言われる北極。それぞれに物語があるのだなぁ、と思うと、わくわくします。どこに、行きたいかというより、行ったことのない、自分の

          「使いみちのない風景」