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「サラリーマンにもなれる」と言われ、抵抗していた桑田佳祐の記憶。

 サザンオールスターズは、デビューしてから40年を超える。

大御所

 若い世代にとっては、自分が生まれる前から活動していたのだから、私の感覚と、かなり違うのかもしれないけれど、自分に置き換えて想像してみると、若かった私にとっての「大物演歌歌手」といった存在に近いのかもしれない。

 ずっと、その「ポジション」にいて、デビュー時の初々しさや、未完成さが思い浮かばない、という意味で。

 だから、本人たちは喜ばないかもしれないけれど、サザンオールスターズは、大御所や、大物といった言葉が似合う存在になっているのだと思う。

デビュー時のイメージ

 サザンオールスターズがデビューした頃の印象は覚えている。

 リアルタイムで知っている人は、おそらく似たような場面を、テレビの音楽番組で見たはずだけど、「勝手にシンドバッド」を歌うサザンオールスターズは、今から見たら、短すぎるショートパンツを全員ではいて、演奏して、歌っていた。

 楽しそうには見えたけれど、言ってみれば、「イロモノ」っぽくて、すぐ消えそうにも見えた。

 だが、3曲目の「いとしのエリー」がヒットした時は、それまでとは違うイメージの曲のためか、一気に本当のスターになったように思えた。

サザンオールスターズへの言葉

 その当時、ミュージシャンの声を知るには、テレビよりも、雑誌などのインタビュー記事などの方が主流だったと思う。また、ミュージシャンが、どう見られているのかも、活字媒体で知る方が、多かったように記憶している。

 その中で、覚えているのは、例えば、作家・村松友視が、「勝手にシンドバッド」に続く「気分しだいで責めないで」は本人たちがやりたい音楽なのだけど、「いとしのエリー」は、「免許とっておこう」といった曲でもあるのでは、と分析していたこと。

 俳優の勝新太郎が、「いとしのエリー」が10年早く出ていれば、アメリカの音楽ともいい勝負ができたのではないか、という言葉を、雑誌の対談で、桑田佳祐に向けていたこと。

 ただ、これらのことは、本当に記憶に頼って書いているし、確認するのも難しいので、もしかしたら細部は違っている可能性もあるけれど、それでも、自分の中では、サザンオールスターズに関する言葉として、分かち難く覚えてしまっている。

「サラリーマンもできる」という言葉

 今の時代だと「サラリーマン」という言葉にいろいろな問題があり、(「ビジネスパーソン」が一般的なのだろうから)使われていないのだけど、サザンオールスターズがデビューした頃は、ごく普通に使われていた。そして、今で言えば、「正社員」と、ほぼイコールの意味だと思うのだけど、そのイメージも、かなり違っていた。

 「サラリーマン」といえば、ごく一般的な職業であり、悪く言えば「平凡」と言っていい印象だった。

 今では、どの雑誌か、また相手が誰かもはっきりとは覚えていないが、いわゆる芸能人的な人と、サザンオールスターズ・桑田佳祐が対談をした。

 その中で、桑田佳祐は、「あなたなら、今からでもサラリーマンにもなれる」という言葉をかけられて、それに対して、かなり抵抗しているように読めた。もちろん、雑誌で読んでいただけだから、本当に分かるわけもないけれど、こうした対談の予定調和から、少し外れるくらいに嫌がっているように感じた。

 それは、その当時(1970年代から80年代)の時代の空気とも関係あるかもしれない。

 今よりも、はるかに、特に若い世代にとっては「個性的」。つまりは、「人と違うこと」への価値がとても高かった。だから、「サラリーマン」は「平凡」で、普通の若者でさえ、できたら、もっと個性的な仕事をしたい、というような時代だった、と思う。

 だから、ミュージシャンという「個性的」な仕事で成功をつかんだ人間にとって、改めて「サラリーマンもできる」と言われるのは、もしかしたら「あなたは平凡でもある」という言葉にも聞こえ、だから、当時の若者でもある桑田佳祐は、抵抗していたのかもしれない。

40年という時間

 それから、40年以上という時間が流れ、詳細にみれば、活動休止の時期もあるので、かなりの波や変化はあっても、今から振り返れば、サザンオールスターズは、ずっと第一線で活躍している、という印象になっている。

 その中心にいるのは、ボーカルでもあり、サザンオールスターズの音楽の大部分を作り続けてきたとも言える、桑田佳祐であるのは、間違いないと思う。

 そんなに熱心なファンでもないので、僭越だとは思うし、間違った見立ての可能性もあるけれど、この長い時間、そうやって活動してこられたのは、桑田佳祐の音楽的な才能と、そのバランスが取れた性格のためのように思える。

 実は、その2つの要素は、両立し難いことだと思う。

 そして、こじつけかもしれないが、デビューしてまもなくかけられた「サラリーマンもできる」という言葉と結びつけるのならば、才能のあるミュージシャンであり、サラリーマンもできる性格、の両方の要素を持っている人として、その対談相手が感じていた可能性もある。

 そうであれば、それは、サザンオールスターズが長く活動するということを予言したような、かなり正確な見極めだったかもしれない、と今になって思う。




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