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地味であることが、いつの間にか、それほど嫌でなくなっていたことに気がついた。

 集団の中での自分の位置のようなものは、なかなか動かせない。
 自分も、できたら、そうなりたいと思うこともあったけれど、10代から、どこにいても、「光を浴びているような人」がいるのを、見てきた。
 
 中学生の頃、自分と同じ誕生日の同級生がいて、彼が、そんな人間だった。
 頭もいいし、さわやかで柔らかいしゃべりで、合唱コンクールの時は指揮者をして、運動部でもないのにスポーツもなんでもできて、誕生日には、彼にプレゼントを渡そうとして、廊下に違うクラスの女性が待っていて、伝言を頼まれたような記憶がある。

 もしかしたら、とてもうらやましいあまり、記憶自体が変わってしまっている可能性はあるけれど、彼が「光を浴びる人間」であるのは間違いなかったと思う。同時に、誕生日占いは、あまり信じられなくなった。

 それから高校へ行き、大学にも通うことができ、社会人になり、会社で働いたこともあった。どの場所でも、「光を浴びているような人」はいた。それが、もっと強く浴びていれば、さらに広い場所で活躍するような人になるのだろうとは思うけれど、それでも、その「光の人」というのは、おそらく生まれつきのものだと思えてきたし、うらやましかったし、ある時期までは、そうなれない自分が、ちょっと嫌になるようなこともあった。

目立たないこと

 集団でいても、一瞬、どこにいるのか、分かられないことがある。

 それは、いわゆる影の薄さみたいなもので、それは、微妙に悲しいこともあったり、だから、印象を強くしようとジタバタするようなこともあったけれど、あまり効果が上がることもなかった、と思う。

 そのうちに、目立つことは無理だと思うようになった。
 それは素質だし、それぞれの役割があるから、と嫌でも感じるようにもなったからだ。

 それから、さらに年月がたち、地味だろうが、存在感が薄かろうが、生きていれば、当然のように地味だけでは済まされないような出来事もあって、そういう自分の存在感に関する悩みなどよりも、なんとか生き残っていくことばかりを考えるようになった。

 だから、自分の存在感について、その薄さについて、悩んだりできるのは、もしかしたら、少し余裕があったのかもしれない。そんなふうに思うこともあった。

地味でも悪くないこと

 今は、地味だったり、存在感が薄めだったりすることが、それほど気にならなくなった。

 こういう人間のほうが、スパイとか、探偵とかに向いているのかもしれない。その仕事の大変さを、知らない癖に、そんなことを思ったり、さらには、人と会う時に、昔は、「光を浴びているような人」が圧倒的に有利だと考えていたのだけど、その気持ちも少し変わってきた。

 さすがに何十年か生きてくると、明るさだけが有利だというような、そんなに単純なものでもないし、特に、悩んでいたり、困っていたり、自分が調子があまり良くない時は、「光を浴びている人」に会うのが、しんどいと思えたりすることもあるのを、改めて知った。それは「光を浴びている人」は、その人自身に罪はないけれど、元気がないときは、「圧」になってしまうことがあるからだと思う。

 ここまでの話自体が、地味な人間寄りの発想だから、光寄りの人に、まだひがみがあるかもしれないけれど、あまり存在感が強くない人の方が、会っていて、しんどさを感じさせない場合があることに気がついた。

 それは、考えたら、当たり前のことでもあるのだけど、光ばかりを見ていると気がつきにくいことでもある、と思う。

波があること

 あとは、ある程度の年数を生きていると、当然だけど、「誰にとっても、いい時ばかりではない」ということが肌に沁みるように分かってくる、せいもある。

 自分も若い頃は、若くして成功した人に対して、うらやましいと思ったり、その同じ人が、その後、失敗したりすると、自分とは遠い存在だったりすると、何か「ザマアミロ」といった黒い気持ちになったりもした。

 運のなさに対しては、今も、理不尽な思いはあるものの、それでも、誰かの成功や失敗に関しては、早く成功すると、その後が大変では、と思えたり、失敗すると、成功のあとは辛いはず、と思ったりするようになった。

 それは、自分にも、地味ながらも波はあり、知らない他人であっても、その上下の大変さに対して、年齢を重ねた方が、想像しやすくなるからだと思う。

 変な話だけれど、地味な方が、その波の上下は小さいような気もするし、その上下に誰かが注目することも少ないから、光を浴びているような人の上下は大変そうだと、より思うにもなったから、地味だったりすることも、そんなに気にならなくなってきたのかもしれない。(かなり功利的な発想も入っていて、お恥ずかしいけれど)。


 それでも、また何かがあると、違う気持ちになる可能性もあるので、一応、今のところ、という前提付きですが、地味であることが、それほど嫌でなくなった、は本当の気持ちです。



(他にもいろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。




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