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2024年の桜

 3月末まで、気温が低い日が多く、雨が降る日も少なくなく、桜のことは話題になることもあまりないせいもあって、ほとんど忘れていたような気配だった。

 それが3月が終わる頃になり、暖かくなってきたのが大きい理由だけど、急に桜の話を聞くようになって、近所の高校の前にある桜並木の花が急速に増えて、色づいてきた。

 あんなに寒かったのに、今年もやっぱり桜が咲こうとしている。

 考えたら、これまでどんな気候でも、春になると桜が咲いてきた。当たり前かもしれないけど、なんだかすごいことだった。


土手

 春になると花だけ一気に満開になって、それから葉っぱが目立ってきて、花が完全に散っていく。

 その変化は、他の樹木と比べたらかなり変わっているのだけど、その華やかさがあったから、ソメイヨシノは人気があって、だから、毎年のように人が集まって「花見」をしているのだけど、会社組織にいた時間が短かかったり、友人が多いわけでもないこともあって、それほど縁がなく、外側から見ることが多かった。

 それでも、歩いて数分の場所に河川敷があって、そこに毎年春になると桜が満開になっているから、家の前の道路の人通りは急に多くなり、その姿は、なんだか楽しそうだった。今年も、3月の末に近づいた頃に、人は多くなった。

 少し遠くの桜並木は、毎日のように桜の花が増えていったし、それに伴って土手へ向かう人が増えていくのを見ていると、ただ遠くからながめているだけではなく、やっぱり桜の花をそばで見たくなった。

花見

 家の近くでも、河川敷はあまり行かない。

 たまに走ったり、意識して散歩に出かけることがないと、それほど行くことがない。

 だから、花見に行くとしても、前もって決めていかないと出かけられないまま、春が過ぎることもあったので、今年は、妻と相談して、雨が続いて、すき間のように晴れた週末に一緒に行こうと約束した。

 そうしないと出かけ損なうのは自分が出不精のせいもあるけれど、その日も天気がよくて、暖かくて、午前中から人がどんどん土手に向かって歩いていく。

 昼食を食べて、妻が昼寝をして、起きてから出かける。

 午後2時半頃に家を出る。

 花見といっても、土手にいって、そこの道を歩いて桜を見るだけという、純粋な「花見」だけど、カメラやメモや、ペットボトルの飲料と、もしかしたら寒いかもしれないのでマフラーまで持った。

コンビニ

 土手に行くのとは逆の方向で、でも、100歩圏内にあるコンビニに寄ることを妻に提案したのは、歩くだけでも、その途中で何か食べたりすると、それだけで「花見」の気分が高まると思ったせいだ。

 妻と二人で、特に買う目的もなく、ただコンビニに寄るのは、ちょっと楽しい。

 フライもののケースとか、スイーツの棚とか、パンとか、お菓子とか、いろいろなところを見て、ちょっと迷って、そうしたら、妻は和菓子のところに立ち止まり、草もちを選んだ。

 和菓子の棚は、気のせいかもしれないけれど、花見に行く人が多く寄ったせいか、いつもよりも商品が減っているように思えた。今も、その前には男性が二人立っている。私は、草もちの隣にあるホイップクリームが入ったどら焼きを買った。

 それからコンビニを出て、だけど、甘いものを購入したら暖かいコーヒーも欲しくなって、それで迷って、いろいろぶつぶつ言っていたら、妻に、コンビニのコーヒーを買おうよ、と少し強めに促され、またコンビニに戻った。

 それで妻と相談をして、二人で飲むからLサイズにした。カップをもらって、機械にセッティングして、RとLを押し間違えそうな瞬間もあったがLを押す。少し時間が経って、コーヒーが入っていき、カップの半分くらいでいったん止まる。機械のほうが、LとRを間違えたのか、などと一瞬焦ったけれど、またコーヒーを注ぎ始めて、無事にいっぱいになった。

 こんな細かいことで焦る自分がちょっと恥ずかしい。

 それから、歩き、土手の手前の高校の前の桜並木のところに、いつもは人がいないベンチのような場所も人がいっぱいで、だけど、そのすみっこのような場所に妻と二人で座り、桜を見ながら、和菓子を食べて、コーヒーを飲んで、少し時間を過ごした。

 楽しかった。コーヒーがあってよかったと思い、少し多いかもと思っていたLサイズも二人だったら、いつの間にかなくなっていた。

 もう、これで十分、花見ができたような気になった。

 それでも、それから、土手へ向かった。

 いつもひっそりとしている土手への道が、お祭りのときのように人が多い。週末はそれでもランナーが多かったり、河川敷で野球部が練習していて、その見学をする人たちもいたりはするけれど、そうした普段とは桁違いに人が多くて、土手の上の道路はちょっとした繁華街のようになっている。

 土手の桜は満開だった。

 それに土手にはハマダイコンが咲いて埋め尽くされているから、その一帯の空間が色づいている。

 年を経るごとに、桜の花の色はピンクから白に近づいているような気がするのだけど、これだけたくさんの桜が一斉に咲いて、空間を埋めて、そして、その下にもハマダイコンの同じような色合いの花が咲いていると、そのそばを歩いているだけで、ちょっと吸い込まれそうな、気持ちがフワーッとしてくる。

 あちこちでハマダイコンの花に埋もれるようにキャンプ用のような机とイスが出ていて、そこで花見をしていたり、桜の下で制服を着た子どもを立派なカメラで撮影する母親と思われる女性がいたり、さまざまなスペースやすきまや、小さいベンチが、人で埋め尽くされている。

 上は桜、下はハマダイコン。

 両方の花にまみれるように、花見ができるから、この場所は陶酔感が強いかも、などと思いながら歩く。

 これが桜の満開の力。

 いつもの河川敷が違う空間になっていた。

しだれ桜

 土手の上の道を歩く。

 混雑した街の中の道路のようにずっと人通りが多い。

 そして、土手にはあちこちに人がいて、花見をしている。

 カメラやスマホを構えて写真を撮っている人も多い。

 今年だけなのか、昨年もそうだったのかは覚えていないが、焼きそばやたこ焼きの屋台などは一切なかった。

 ソメイヨシノの寿命があって、そのうちに、この桜の姿も少し違うものになってしまうのかもしれない、などという話をしながら、さらに歩く。

 ちょっと桜の植え方が違う場所に来て、そこは両方から桜があって、花のトンネルのようになっているところがある。

 そこは、川沿いにいわゆる「億ション」が立ち並び始めて、その新しい方のマンション群のそばで、そのそばの桜並木も新しく、そういえば、木々も少し若そうに見える。

 人がたくさん歩いている。

 どこからこんなに人がきたのだろう、というくらいずっと普段とは違っていた。

 そこまでくると、隣町に近く、土手を離れて、ホームセンターのそばには、しだれ桜が並んでいる場所もある。

 しだれ方が少し足りないのでは、といった勝手なことを話しながら歩き、桜も見ているけれど、妻は時々、立ち止まり、カメラを下に向けて撮影している。

 ここ、アオキの花があるから、とちょっと嬉しそうだったし、他の場所でも、道端に生えている小さな草花や、花壇の花も含めて、桜だけに目を奪われずに、自分の好きな植物に関しては決して見逃さない姿を見て、なんだか感心する。

 そうやって、歩いて、桜を見て、気持ちが楽しいまま、気がついたら午後4時近くになっていた。

 こんなに近所なのに、随分とゆっくりもできて、妻も桜がちゃんと見られて満足だというので、花見ができてよかった。

 毎年、繰り返しているはずなのに、毎回、ちょっと新鮮な気持ちになる。



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