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「日常語」になってしまった「緊急事態宣言」。2021.5.15.

 毎週土曜日は、午前9時前に家を出る。

マスクの光景

 アイコスを吸いながら、何かつぶやいて歩いてくるアゴにマスクをした、短い髪の中年男性とすれ違った。
 その後に、年配の夫婦が、ゆっくりと通り過ぎる。

 うしろから、足音が聞こえてきて、メガネをかけてロングヘアーの若い女性が小走りで、追い越していく。駅まで、まだ少し距離があるのに、マスクをしていると、かなり息苦しくなりそうで、勝手に微妙に心配な気持ちになるのだけど、そんなことを思う自体が、コロナ禍以来の習慣だった。

 向こう側から、マスクをした男性がスポーツウエアで走ってくる。

 駅の前の1000円カットの店の前には、スマホを見ながら、男性がうつむき加減で1人立って、待っている。自転車に乗った中年男性が、マスクをアゴにかけて、こちらに向かってきて、通り過ぎていく。

 電車のホームには、30人くらいの人がいる。
 先週よりも、多くなっている。

「日常語」になった「緊急事態宣言」

 「緊急事態宣言」が、さらに広く適用された。というニュースが流れていたが、「まん防」もあるし、すでに「日常語」になってしまっているように思った。

 

 電車は座席はほぼ埋まり、立っている人は10人いるかいないか、くらいだった。
 窓は少し開いている。
 冷房も入っている。
 以前なら、締め切ってからのことが、窓を開けるのが基本になってから、1年が過ぎている。

 とても静かな車内だった。
 
 駅ごとに人は増えていく。
 いつの間にか「密」といっていいほどの人口密度になってきた。

 それでも、まだ人と人との体がくっつき合うほどでないのに、やや怖さが増してきたのだから、満員電車は、どれだけ怖いのだろうと想像するけれど、だけど、日常にならざるをえないときには、そんなことは言っていられないのだとも思う。

 終点の一つ前の駅で、初老の男性が乗ってくる。
 ドアから入ってきて、私がすぐそばにいるけれど、人がいないかのような近い距離感なので、思わず、後ろに下がってしまった。マスクは日常になったけれど、ソーシャルディスタンスは、消滅しかかっているのかもしれない。

 確か、感染リスクを下げるためには、優先順位でいえば、ソーシャルディスタンスが上だったはずなのに、などと思うが、その初老の男性の感覚は、人と距離が近くなっても気にしないような「満員電車のプロ」だった可能性もあると思う。

走って乗った電車

 終点に着くと、今日も人の流れが強いから、人が降りるのを、少し待ってから、降りる。

 改札を出て、また違う改札を入って、アルコール除菌を今日も1人だけ使ってから、階段を降り始めると、ちょうどホームに電車がきていて、発車の音楽が流れている。間に合うかどうか分からないのだけど、周囲の人たちがみんな走り始めているので自分も走る。

 すぐ前に、薄い素材で柔らかい色のロングスカートをはいた2人の女性が並んで、階段を走り降りていて、スカートのすそが階段をすってしまっている。でも、その2人も、私も、周りの緩やかな塊のようになっている人たちも、その電車の発車に間に合った。

 次の電車は、5分後に来るのに、やっぱり走ってしまった、と思う。

 窓が少し開いている。
 ドアのそばに、周囲の人から距離をとって、立つ。
 座席はほぼいっぱいで、立っている人も数人いる。

 少し遠いところのドアに、上着はウインドブレカーで、ジーンズとスニーカーで、完全に手ぶらの、10代半ばくらいの女性が立っている。

 やけに、視線が強くて、目を引く。

甘い匂い

 いくつか駅を通って、大きい駅に着いたら、急にすいて、座席も、距離をとれるほどの状態になったので、座ったら、やけに甘いキャラメルのような香りが漂ってくる。一つおいた親子連れから?と思ったが、何の匂いかよく分からない。何かしらの毒ガス的なものが、確か、甘い香りだった、というあいまいで不吉なことを思い出す。

 ドアの上の小さい画面でニュースが流れる。

 緊急事態宣言 拡大へ。
 東京五輪・パラ中止を。
 東芝サイバー攻撃。
 イスラエル地上配備。
 アルパカ衣替え。

 最後だけ、ほっこりニュースだけど、国内も、海外も、不安のふくらむ話題が多い。

 このところ、車内の広告は、美容整形外科のものが多くなってきたように感じる。
 
 必見。リバウンド経験者。

 そんな大見出しが目を引いて、つい内容まで読んでしまったら、リバウンドは細胞がふくらむこと。だから、細胞そのものを減らしてしまえば、リバウンドなし。と書いているのだけど、人間の体は、そんなに単純なのだろうか、と微妙な怖さがあった。

薄曇りの空

 目的の駅について、階段を降りて、道路を歩くと、ここ何週間では、同じところを歩いているのに、人通りが少なく感じる。
 
 薄曇りの空。

 歩いていると、通常よりもコンパクトなスケボーに乗った若い男性に追い抜かれる。
 信号のない横断歩道で、渡るタイミングを図って、少し待っていたら、向こう側にスマートで背の高いロングヘアーの女性がマスクをしたジョギング姿で、今にも走り出しそうに待っている。

 車の流れがなくなり、横断歩道を渡ったら、若い男性に追い抜かれ、姿を見たら、「DJ松永風」だった。テレビでクリーピーナッツの「DJ松永」自身が、「自分のような人間は、〇〇へ行くとたくさんいる」(この〇〇は忘れました)と、自虐も込みで語っていた姿を覚えているが、その言葉が本当だった、と思う。

晴れた夕方

 夕方4時過ぎ。
 用事が終わって、また朝降りた駅に来る。

 改札に入って、階段を降り始めた時に、もうホームに電車がきていた。
 走り降りて、ギリギリで間に合う。
 こんな日は珍しい。


 電車で流れていたニュースは、スポーツニュースだった。
 海外が中心で、後半は国内だった。

 静かな車内。
 
 立っている人が10人くらいの車両。
 見渡すと、マスクは白と黒が主流になっているようだ。

 黒は若い。白は若くない。
 とても大雑把だけど、そんな感じになっているように見えた。

 そこに2人、薄いピンク。
 1人が薄紫のマスク。
 それは少数派のようだった。

 窓は少し開いている。

 今日は一日曇りという予報だったのが、夕方になって、太陽が出て、晴れてきている。
 気がゆるむ。
 もう寒さが、とても遠い。
 暑さが近づいている。
 2度目のマスクの夏が確実にやってくる、と思うと、微妙に気が重い。

営業自粛

 目的の駅で降りる。

 乗り換えようと歩いていると、隣のホームの屋根にカラスがいるのが見える。
 結構大きく、何メートルか先だから、近いと言っていいのに、逃げる気配がない。
 線路を見下ろすような視線を保ちながら、やや低めで、濁った声を何度も出している。

 駅ビルは、開いている。
 生活必需品・サービスなどに限って開けています。
 そんな文字が見えるけれど、飲食店や小売業は、「緊急事態宣言」で、感染予防に関して客観的なデータがあった、という話も聞かないのに、やたらと営業自粛を要請されていて、それは、どこか痛めつけられているように見えることもある。その一方で、旅行業は、政策として、支援されていた。

 スーツケースの男性が歩いている。そういえば、今日は、スーツケースをよく見たと、思い出した。




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