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「ファイト! いっぱーつ!」が消える時代。

 どこか、危険な場所を二人の男性がチャレンジしている。

 一人が足を踏み外す。

「ファイトー!」
「いっぱーつ(一発)!」

 それぞれが大声を出しながら、二人で協力して、その窮地を脱する。

 そして、「わしのマーク 大正製薬 リポビタンD」といったアナウンスで締められる。

 そんなCMを、たくさん見てきたし、多くの俳優が、その役を演じてきたし、その演出に対して「あんな危険な時に、ファイトー、いっぱーつ、って言うわけがない」などと視聴者としてのツッコミを入れながら、すでに生活の一部のような自然さまであった。

CMの歴史

 改めて振り返ると、CMとしても、とても長い歴史がある。
 リポビタンDの広告としては「第三期」であり「ダブルタレント時代」と言われているらしい。

 初代の二人は、勝野洋と宮内淳。CMは1970代後半からだが、どちらも「太陽にほえろ!」という刑事ドラマに出ていた。その後、より年齢が高い方が去って、新しいタレントが加わるという体制で広告やCMは続く。

 そのパターンで2010年代まで継続したようだ。

「ファイトー!」
「いっぱーつ(一発)!」

 だから、この声をテレビで聞いていたのも30年以上になるし、人は変わっても、基本的なところは変わっていないから、知らないうちに記憶に刷り込まれて、忘れたくても忘れられない種類のCMになっているのだと思う。

CMの変化

 今年9月13日から始まった新CMでは従来のイメージを一掃。爽やか路線へかじを切った。テーマも「Have a Dream」と、くたびれた中高年にはこそばゆい設定だ。

 これは2016年の記事で、実は、従来の「ファイトー」「いっぱーつ」の絶叫パターンは、すでに2015年には終わっていたし、確かにイメージも変化していたはずなのだけど、視聴者としてそのことにあまり気づいていなかった。

 背景には、エナジードリンクに押されてリポビタンDの売り上げが低迷している現状がある。大正製薬の上原健副社長は、「汗と筋肉で表現していた高度成長時代の『頑張って頑張って頑張る』は今の時代に合わなくなってきた」と述べている。

 ただ、絶叫はしないものの「ファイト 一発」は、常に表現されていたし、CMに出演していたのが三浦和良と大谷翔平、ラグビー日本代表などアスリートが画面に登場していたから、個人的には、1970年代から続く「ファイト 一発」の印象から、それほど変わっていなった。

一歩を、一緒に

 決定的に印象が変化したのが、2021年に木村拓哉がCMに出演するようになってからだ。

 屋上の上で、つぶやくように語るセリフを、どうしてだか覚えようとして、妻に笑われたのだけど、リポビタンDのCMとして雰囲気が変わったのは、「ファイト 一発」が姿を消したからだと思う。

 そして、そのCMのテーマが、「一歩を、一緒に。みんな強くない」ということらしいので、それは、コロナ禍の今にもフィットしているのかもしれないと思った。

「がむしゃらに走り続けるだけでなく、時には立ち止まることがあっても良い。頑張る目標すら見失ったり、わからなくなったりするときもある。無理してでも頑張ることだけが、正しいとは限らない。ただ、『何かを成し得たいとき』や『目を背けることができないとき』は、誰しもやってくる。そんな前に進むチカラが必要な時に、リポビタンは“あなたの歩幅”で“あなたの一歩を支える”存在でありたい、というメッセージを込めています」

 これが、このCMのコンセプトと語られていて、もちろん広告的な戦略に基づいているはずだけど、それでも、リポビタンDで、こんな言葉が語られるようになるとは思わなかった。

 この言葉が表現しているのは、すでに「エナジードリンク」ですらなく「サポートドリンク」もしくは、実はリポビタンDがずっと打ち出していた「疲労回復」が大事になってくるとしたら、「ケアドリンク」の方向にも感じる。

 コロナ禍によって、本当にいろいろなことが嫌でも本質的な変化を促されているのかもしれない。そんなことまで思った。

 若い層へのアピールを考えたら、木村拓哉の起用など、この戦略が正解なのかは、自分が若者でないから分からないものの、このCMの変化は個人的には気になったし、確実にリポビタンDのあり方の変化にも思えたから、初めて購入してしまった。

リポビタンD

 思ったよりもビンが小さい。
 
 妻は、「すごくレトロな味」と言った。
 そのあと、少し詳しく聞いたら、考えながら、話してくれた。

「まずは、子どもの頃、飲んだシロップの味…というか、駄菓子屋な味がする。なんでだろう…それに大人の味を、ほんのり入れた感じ」。

 私も口に入れた瞬間、飲んだことのない味がした。
 妻の感想と似ているけれど、何しろ、知らないはずなのに、なつかしい感じがする。何か独特で、ちょっと薬のような、効く感じがした。

 

 さらには、このドリンクが「アンチドーピング認証」を取得していることを初めて知った。

 リポビタンDを夕方に飲んだのだけど、その後、効いたかどうかは、はっきりとは分からなかった。




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