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「少数派の投票者」-------2023春「統一地方選挙」。

 統一地方選挙。そんな呼び方をされているけれど、地元では、区議会の議員の選挙と、ベテランの現役区長が引退したこともあり、新人三人での区長争いになっている。

 そうしたことはぼんやりと知っていたけれど、区議会は、もう選挙があるのか、と思ったくらいで、任期も当然決まっているはずだけど、そのこともよく知らなかった。

 ただ、投票に行くことは決めていた。

選択

 選挙公報が家のポストに入っていたのは、投票日の2日前の金曜日だった。その前の情報だと、水曜日に投函されるはずだったのに、と思いながらも、それから、選挙公報を見るしかない。候補者は82人で、当選は50人。だから、32人が「はみ出し」などと表現されているようだ。

 当選確率が、60%を超えるから、例えば、同じように並べられないものの、資格試験などの合格率と比べたら、とても高い数字だから、もっと被選挙権の年齢を下げれば、若い候補者が増えるのではないかとも思った。

 さらに、よく供託金が話題になって、もっと安くなれば、ということは言われて、私もそう思うのだけど、そういえば、ほとんど知らなかった。

地方選挙の供託金は、都道府県知事が300万円、都道府県議会議員が60万円、市や区の長が100万円、市や区の議会議員が30万円です。

 そんなことを知ると、選挙公報に目を通すと、自分のプロフィールよりも、自分の意見のようなものだけが書いてあるような候補者もいるので、もしかしたら、こういう人は、当選ではなく、供託金を払って、自分の意見を世の中に少しでも伝えたいという目的があるのかもしれない。

 そのうちの一人は、「私は妻からのDV被害者です」から始まり、自分の名前すら入っていなくて、でも、最後の方で、「共同親権にすべき」という政治的な主張があったのだけど、こんなことも可能なのかとは思った。さらに、今回は2人が手書きだった。

 そんなことを思っていたのだけど、妻は先に選挙公報を読んで、決めていた。赤い線で囲われている。さらに、区長選は3人しかいないけれど、消去法で選ぶしかなかったけれど、一人に決めた。

 消去法で選ぶのは、選択の気持ちよさは、ほとんどない。

選挙当日

 午後から投票に行くことを妻と相談して決めていた。そのついでに図書館に寄って、さらには、帰りはスーパーに行き、買い物をする予定にした。それだけで、なんだか立派なスケジュールのような気がする。

 朝方から、ピンポンポンポン。と非常時のような音が鳴り響いて、投票を促すようなテープの声が何回も流れていた。

 昼頃から、日がさしてきた。遠くに出かけるわけではないけれど、ちょっとうれしい。

 図書館に返却する本が8冊くらいはあるから、それなりの重量があり、選挙のための封筒と、買い物のためのトートバッグなどを持ち、4月から「努力義務」という微妙な意味合いだけど、買ってしまったので、いつもつけるようになったヘルメットも用意する。

 それだけで、なんだか大荷物になった。

 それから、出かける。

 妻は今日になって、投票する候補者をかえたようで、それで、選挙公報を、その人のところだけ切り抜いて、クリップで止めて、ポケットに入れていた。

 うちには自転車が一台しかない。妻が歩きたいと言うので、ヘルメットは私が着用し、すごくゆっくりと走って、妻が卒業した小学校が投票所なので、そこに向かって進む。

 午後2時頃。選挙に行く人は、全くいないわけではないけれど、列ができるほどでもない。

 道の途中には、候補者のポスターを貼った掲示板がある。80名だから、選挙の中でも、大きい方だと思う。その前に立ち止まって、そのポスターをゆっくりと見ている人がいる。おそらくは、ここで、誰に投票するかを決めているのだと思う。

 自分もそうしたことをしていたけれど、この前も、それだけだと情報が少なすぎるので、もったいない、といった言葉を聞いた。選挙公報だけではなく、候補者のSNS、「議員だより」など、候補者のことを知る媒体が、いろいろあると知ると、確かにそうかもしれない。

投票

 荷物が多いので、自転車に積んだまま、投票所の外に停めて、一人ずつ交代で投票することにした。

 妻が、先がいいと言うので、投票権を渡し、小学校の中へ入るのを見届けて、自転車を支えながら、外で待つ。人も少ないから、静かで、ただ時間が流れる。この間に、図書館へ返却して、もう一度借りようと思っている本を読もうかと思って、自転車のカゴに乗せていたバッグをゴソゴソし始めた頃に、妻が出てきた。

 お疲れ様。どうだった?

 え、ちゃんと投票したよ。

 じゃあ、よろしく。

 そんな会話をして、私も投票所になった小学校の校舎に入る。靴箱が並んでいる。反射的になつかしいと思ってしまうが、それだけ、変わっていないことは、もしかしたら異常なことかもしれない。

 家に届いた投票券を持って、それは、とても薄くて、頼りないけれど、まずは、最初の係の人に渡すと、自分の名前を確認され、はい、そうです、と答えると、最初は、区議選のための投票用紙を渡される。

 相変わらずの、ちょっとしっとりした質感の紙。

 投票用紙に書き込むために、小さく仕切られた台を探す。ラーメン屋の「一蘭」のような感じにも思えるけれど、思ったより多くの人が投票に来ているので、意外と埋まっている。

 空いているのは、少し低い台だけど、そこはおそらくは車イス利用者のためか、点字と言う文字が見えるので、そこは避け、いま誰かが使っている台で、後ろで並ぼうと思ったら、空いた。

 近寄ると、目の前に表がある。

 区議に立候補している候補者の名前が、並ぶ。
 80人を超えるから、一人当たりの文字が小さい。

 一瞬、ぼやけているから、老眼鏡を持ってくるのを忘れたことを後悔し、だけど、ここから、いったん外へ出て、メガネを持ってくるのは、ややこしそうだから、もう少し落ち着いて、よく見て、その表を順々に見ていって、自分が投票しようとする人の名前が見つからない。

 一瞬、そうじゃないけど、同じ政党なら、別の人にしようか、などと思い始めた頃、自分が投票しようとした人の名前を見つけ、なるべくゆっくりと、渡された鉛筆で書いた。

 そういえば、どうして鉛筆なのだろう。ボールペンの方が、修正が難しいから、適しているはずなのに、などと思う。

 そして、2つに折って、投票箱の細いスキマに紙を落とす。

 それから、また次の机で、投票券を渡して、区長選の投票用紙を渡された。これで、持ってきた投票券の役割が終わる。

 区長選のほうが、書くための台に貼ってある表は、3人だけだから、一人の名前が大きく書かれていて、間違いようがなく、さっきより気持ちが楽にかけて、また2つに投票用紙を折って、投票して、終わった。

 立会人で高齢の男性が、ずっと腕を組んで、体をそらした姿勢をとっているのが、目に入って、なんだかモヤモヤした。

 それでも、それで投票は終わった。

 外へ出て、妻と合流し、やっぱりホッとした。

 それから、図書館へ行き、そこで、飲み物を飲み、そのあと、スーパーに寄って、買い物のあと、飲食コーナーで、妻はサーターアンダギーを食べ、今回のできについて、細やかに語り、私は、どら焼きを食べて、卵を極限まで少なくしたので、色味が薄いような気もしたけれど、おいしく食べて、家に帰った。

 午後4時になっていたから、なんだか、少し遠くへ行っていたような気持ちになった。

 

 投票率は、今回も50%以下だった。投票する人間の方が少数派になっている。




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