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「緊急事態宣言下の土曜日」。2021.1.9.

   新しい年になって、松の内が明けたとたん、2度目の緊急事態宣言の日々が始まった。

 東京都内では、今週、1日あたりの新型コロナウイルスへの新規感染者数が、初めて2000人を超えた。全国でも過去最多、という言葉を、また聞くようになり、どこまで増えていくのだろう、と怖さを感じる。

 ちょっとでも体調が悪いような気がすると、感染したかも、と思い、そう思うことで、また体調が下がっていく。
 もう感染者数が、どれだけ増えても、たぶん驚かないけど、どんどん逃れられないような気持ちになり、寒さがそれを増大させる。

 やっぱり、こわい。

1月9日土曜日 朝

 2週間ぶりに電車に乗って、出かける。
 午前9時前。
 冬晴れ。すごく青くきれいな空。

 家を出たら、人通りが少なかった。
 歩いていくと、一人で、美容院に入っていくお客さんがいる。
 向こうから色の違うマスクをした2人の女子高生が歩いてくる。

 新しいコロッケ屋の前に、イスに載った小さめのポスターみたいなものがある。「緊急事態宣言により、営業時間を変更します」といった控え目な通告あるが、立ち止まって読まないとわからないような文字の大きさとレイアウトだった。

 駅に着いたら、ホームには10人くらいの人がいて、その中の一人の女性がマスクをしていない。

 この1週間の感染者の増え方や、アメリカでの議会での出来事や、今年最大の寒波襲来の大雪のニュースを見ていると、この世の終わりだと思った。そう感じたことを、思い出す。

 ただ不安になる。

変わらない車内

 乗った電車は、いつもの土曜日と変わらなく感じる。
 少し窓が開いている。
 緊急事態宣言が、2020年の4月に出た時は、自分の気持ちの反映もあるけれど、一気に緊張感が高まって、電車に乗った時も空気が変わっていたように思った。

 あの時は、突然閉じた図書館とか、いろいろなことが狭くなる急激な閉塞感があったのだけど、今回は、そこまでの切迫感がないように思える。

 今日(9日)は、土曜日だから、満員電車ではないけれど、確かに、これまでと、そんなに人手は変わっていないと感じる。

 せきこむ声があちらから聞こえ、その後に、違うところから聞こえてくる。

 静かな車内に、中年女性の話し声が低く小さく、だけど、途切れずに同じようなトーンで、ずっと聞こえ続けている。

ポジティブな広告

 いつも乗っている私鉄のターミナル駅に着いて、人が降りていく。
 ここ1ヶ月と比べても、特に人手が減っているような感じはしない。

 電光掲示板に「寒い季節ではございますが」という言葉の後に、感染拡大防止のために「窓の一部を開けさせていただきます」といった文章が続く。

 歩いて、次の電車に乗り換える時に、改札をセキをしながら通り過ぎる若い男性を見かける。改札を入ってすぐにあるアルコール除菌のボトルを使っているのは、今日も自分だけだった。

 ホームに降りて、次の電車に乗ると、車内広告には、明るい色であふれた美容皮膚科のものが目立つ。
 「昨年のぶんまで輝け、女の子」
 「2021年、上がるしかない」
 「4ヶ月で世界は変わる」

 ポジティブなメッセージばかりで、もう不安の中で縮こまっているようなことを続けるのは、嫌になっているのかもしれない。

 この電車は、車両の窓がどこも開いてないようだった。
 ドアのそばに立っていたけれど、なるべく次の駅で開く場所にして、駅に着くたびに換気ができるようにしたつもりだった。

 他には、男性向けの、やはり美容関係の広告も目立つ。

 次の駅に着いたら、赤っぽいカップに入ったコーヒーを、片手で持った若い女性が乗ってきた。

 いくつか駅を過ぎて、もうすぐ目的の駅に着く。

孤独な不安

 窓の外に広がるとても青い空を見ていたら、目の周りが微妙にかゆくなる。
 それで、ちょっとぼんやりしていたせいもあって、目のところを触ってしまった。すぐに、あ、触ってはだめなのに、と思う。

 少し空席があるけれど、「ソーシャルディスタンス」がとれないので、立っていたりもして、それでも孤独に不安で、一人だけ怯え過ぎなのかもしれない、とも思う。

 目的の駅に着く。
 いったんマスクをとって、そして、またマスクをつける時に、一瞬、今までの表と裏がわからなくなって、あちこち触ってしまい、あ、これはまずいのではないか。駅の階段を登って、トイレに入り、手を石けんで洗い、口周りをさわってしまったので、うがいを少しして、この行為でかえってリスクを高めてしまったのではないか、と思う。

 この2週間の不安で、やっぱり気持ちが追い込まれているのかもしれない。

 それも含めて、こわい。

いつもの夕方

 午後4時20分。
 人と会う用事が終わってから、また駅に来る。
 家にずっといた時よりも、いつもと変わらなく見える人たちと話をした方が、不安は減ったような気がする。もちろん、それで感染リスクが減るわけでもなく、感染者が減少するわけでもない。

 電車に乗った。緊張感が感じられるわけでもなく、いつもの夕方になっているように思い、本当に自分だけが不安なのか、それとももう1年近く、コロナ禍は続いているわけなのだから、もう慣れたのか。不安であり続けることに飽きたのか、それとも耐えられなくなったのか。
 緊急事態宣言の意味が、分からなくなっている。

 ドアの上の小さな画面に、ニュースが流れる。

 大雪のこと。
 去年の4月と比べて、8日の夜、外出大幅増。 

 岐阜では独自の非常事態宣言を発表。
 トランプ大統領への弾劾決議案を準備。
 
 そうしたニュースが終わった後、同じ画面ではITでテレワークのCMを延々と続けている。車両の広告が、全部、同じITでテレワークだったことに気づく。

ハグする二人

 駅に着いた。
 男性の慣れないアナウンスで、沿線が火災で止まっていることを、繰り返し告げている。電車が止まる理由として、沿線での火災はイメージがしにくかった。

 改札の前で、おそらく国籍も人種も違うように見える男女のカップルがハグをして、お互いの背中をケアするようにさすりあっていた。

 電車に乗って、いくつか駅を過ぎて、最寄りの駅に着く。
 改札を通る時に、手作り感のあるポスターのようなものがあって「当駅の改札は抗ウイルスコーティング済みです」ということを初めて知った。

外から見た東京

 夜に関西に住む身内から電話が来た。
 緊急事態宣言も出て、心配をしてくれたようだった。
 食料品などの買い占めが起こって、食べ物に困るようだったら、お米を送ろうと思って、と言ってくれた。
 それは、とてもありがたかったが、今の東京は外から見たら、そんな風に感じるんだ、と思った。

 今日も帰りにスーパーに寄ったが、拍子抜けするくらい、変わっていなかった。
 その変わらなさが、怖くなる、というような話をした。

 それで、ありがたいけど、今のところは大丈夫、と伝えた。

 それでも、今日も感染者は多いから、怖さは、ずっとある。




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