見出し画像

時間と靴

 身につけているものを捨てるのは難しい。

 例えば服も、明らかにボロボロになったり、あとは自分以外の人の目と判断がないと、捨てられない。

 そして、靴も捨てにくいように思う。

EEE

 昔は、靴全般で、幅が狭めだったと思う。

 当然、サッカーのスパイクも、あまり「日本人向け」ではなかったから、特にプーマのものは、信じられないくらい細く長く感じて、幅が広く甲の高い自分の足には、とてもじゃないが、入れることもできなかった。

 ただ、サッカー雑誌などで見る海外のすごいプレーヤーは、足首から先が細くて長くて、これだけのインパクトゾーンがあるから、あれだけボールを曲げることができるのかもしれない、などと思ったこともある。

 ただ、細めの靴の方が、なんとなく偉いような空気もあった、と思う。

 だから、そういう細い靴に足がフィットする人の方が、おしゃれだったり、現代の人、ということなのだろうか、といった微妙な劣等感まで持ってしまった。その傾向は、サッカーのスパイクという特殊なジャンルだけではなく、一般的な靴でも似たような感じはあったと思う。

 それは、当然だけど、靴の文化は西洋のもので、江戸時代まで、日本では履いている人はいないに等しかったから、その西洋人の足型が主流である、という流れがあるのは仕方ないのかもしれなかったが、そのうちに、実はもしかしたらある年齢以上なのかもしれないけれど、幅広の靴も増えてきた。

 そして「E」という表示がある靴は、幅が広めであることを知ったら、だんだん「E」が増えていって今は「E E E E」くらいもあって、自分にとってはありがたかった。

 妻も、足の幅は広めだったので、「E」がいくつも並んでいるスニーカーを探したら、いわゆるスーパーの靴売り場には「E」が多くついているシューズが多いことを知った。

 何年か前まで、家で介護をしていて、妻が出かけらないのだけど、私は、「通い介護」もして、帰ってきたら家で義母の介護をするという生活だったから、その出かける途中で、そのスーパーに寄って、妻のスニーカーを、好きな色のピンクを選んで買った。

 それから、ずっと妻は履いてくれていた。生活の中で、ずっとその靴はあった。

時間と靴

 妻は、大事に扱ってくれ、途中で何度も洗ってもらったせいもあって、かなり古くなってきたのだけど、そのスニーカーは、ずっと妻の足を支えていた。

 洋服以上に、靴は使っている実感があるのは、例えば、かかとがすり減ってきたり、全体的にも汚れが取れにくくなったり、形が崩れたりしてくるので、そこで年月を感じやすい。

 それも、自分の靴であれば、あちこちにでかけた記憶と共にあるから、気持ちの中で愛着が出てきやすいように思うから、捨てるときも、より抵抗感があるけれど、身近な人がずっと履いていた靴が、だんだんと古くなってくるのを見ていると、そこにやっぱり時間を感じる。

 だから、時間と靴はかなり密接な関係があるし、それが捨てられるかもしれないと思うと、自分の持ち物でなくても、そして、古くなって履き心地が悪くなってきたり、壊れてきたりしたら、捨てなくてはいけなくても、勝手だけど、ちょっと抵抗がある。

 だけど、もう妻のスニーカーは、10年以上は履いているし、そろそろ買い替えたいと思っていた。ただ、コロナ禍が続いていて、なるべく出かけないようにしていたせいもあって、なかなか機会がなかった。

新しいスニーカー

 私も靴をよく買う全国的なチェーン店があって、そこに妻と一緒に行った。

 だけど、以前よりも「E」のコーナーが小さくなっていて、どうやらメーカーでもあまり製造しなくなっているのではないでしょうか、といった話を店員さんから聞いて、そして、そのコーナーには妻が気に入るシューズがなくて、同時に、これからどんどん減っていくのかと思うと、気持ちも暗くなった。

 さらに後日、今度は家の近所のホームセンターに行った。

 そこには「E」が多く並んでいるシューズもあって、そして、いろいろと探したら、デザインなどは、それほどすごく気に入ったといった感じではなかったけれど、実際に、そのスニーカーを妻が履いたら、「すごく軽い」とうれしそうで、表情も明るくなった。

 そのデザインは、どこかで見たと思ったら、1990年代にとても人気のあったスニーカーと少し似ていることを、その後に知ったものの、それよりも、何しろ足に優しくて履きやすいことで、妻は気に入って履いている。

 よかった。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。





#買ってよかったもの    #スニーカー   #シューズ   #EEEE
#靴   #時間と靴   #買い換え   #毎日投稿

この記事が参加している募集

買ってよかったもの

記事を読んでいただき、ありがとうございました。もし、面白かったり、役に立ったのであれば、サポートをお願いできたら、有り難く思います。より良い文章を書こうとする試みを、続けるための力になります。