「怖さに慣れているような光景」。2020.12.12.
全国の新たな感染者は、2800人を超えた。
そんなニュースを見る。
人の移動を促す「政策」を止めてほしい、と繰り返す専門家と、止めようとしない政治家。
そんな粗い認識しかないけれど、これから先、感染者が減りそうな気がしない。
単純にこわい。
多い人出
午前9時前。
土曜日は、いつものように、出かける。
薄曇りで、寒い空。
高校生が通学してくる。2人の女子高生が、振り付け的な動きをしながら、笑って、歩いてくる。小学生もけっこう歩いている。人が多いだけで、みんながマスクをしていても、街に活気があるようにさえ、見える。
駅にそばの1000円カットの前に3人が並んでいる。カラスがあちこちに飛んでいて、低い場所に止まっているのが目立つ。スズメも道路にいて、何かをついばんで、また飛び立つを繰り返している。
駅前に近い牛丼屋にも、距離を保ちながら、5人くらいはお店にいる。
駅のホームに着いても、けっこう人がいる。
自分だけが、怖いと思っているのだろうか。こんなことでは、コロナ禍で生きていけないのだろうか。
いつもと同じ車内
ホームに中年男性と外国人らしき金髪の女性が並んでいて、男性は電話で話している。
転ぶと大変だから。
ゆっくりしないと。
そんな言葉をずっと繰り返している。
その会話が終わると、隣の女性と、聞き慣れない、もしかしたらロシア語のような言葉でしばらく話をしている。
さらにホームに人が増える。
電車が来て、電車に乗る。
人がけっこう多くて、感染者数が増大しているのは、あまり関係ないのかもしれない、などと思うほど、表面的には、マスク以外は以前の光景に近づいているように思えた。
怖さに慣れた光景
電車を乗り換える。
静かな車内。
次の駅で、せきこみながら乗ってくる中年男性がいるので、そこから遠くへ移動する。
自分だけのようだ。
ドアの上の小さな画面でのニュースが流れている。
スポーツニュースがいくつか続く。
当たり前だけどプレー中のアスリートの映像はマスクはしていない。
そのあとに、嵐のニュースがはさまれて、当然だけど、嵐もマスクはしていない。
乗り換えが多い駅で、人がたくさん降りて、座席が適度にうまり、だけど、距離をとりたいから立っていたら、車両で一人だけ座っていない乗客になっていた。
人出は普通に多いし、すっかり普通な感じになっていて、緊張感などもなさそうだし、最近の「感染者過去最多」のニュースは、関係がないようだった。
毎日のように電車の移動をしていると、もう感染の怖さに慣れてしまって、感染者が増大しても、いちいち怖くなっていたら、もたないのかもしれない。
あまり電車に乗らないようにしている私のような人間だけが、必要以上に怖がっているだけなのだろう。
トイレに入り、手を洗い、その手で水をすくって、つい、うがいまでしてしまって、それだけで感染の恐怖みたいなことを思うのは、まだ怖さに慣れていないせいだと思った。
夕暮れの時間
用事が終わって、午後4時15分頃に駅のホームにいる。
もう、すっかり夕方の気配。
こんなに怖さが増しているのに、こんなに変わらない土曜日で、自分だけが適応していないような気になってくる。
ホームに女子高生が4人固まって歩いてきて、2人は手をつないでいる。楽しそうだった。
空は、もう夕暮れになってきている。
電車に乗る。
そばの座席に座っている若い男性が大きなくしゃみをする。
こわい。
車内に女性の声で録音されたらしいアナウンスが流れる。
新型コロナウイルス感染防止の観点から、お願いがあります。
マスクをして、会話も控えめにお願いします。
そんな内容だった。
誰も聞いていないかもしれない。
なんだか疲れて、窓の外を見ていたら、夕暮れが進んでいく時間帯だから、ぼんやり見続けてしまっていたら、いくつか駅を過ぎていて、もう目的の駅に着いた。
乗り換えるホームで、ラクロスらしい用具を持った中年男性の集団が、すごく大きい声で、何かを言い合っている。こんな音量の会話を、久しぶりに聞いた。
私鉄に乗り換える。
窓が少し開いている。
優先席に座ってる年配の女性が濁ったセキを何度もして、こわくて、そこから遠かったけど、そんなに怖がってる人間は、他には誰もいないようだった。
たぶん、まだ増える。やっぱりこわい。
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