「ポッドキャスト」に教えてもらったこと。
個人的に、一番多くの時間、「ポッドキャスト」を聞いていたのは、介護をしている時で、自分のiPodが元気な時だった。食器洗いをしている時に聞く機会が多かった。今から8年くらい前だと思う。
ポッドキャストは、自分の中では、聞く時間を問わない「ラジオ」のような位置づけだったが、同時に「ラジオ」と違って、発信者にとっては、始めるハードルが低いようで、独自な色も強い印象がある。
ポッドキャストで始めて、ラジオ番組にもなっている「東京ポッド許可局」は、新鮮だったし、今まで自分には縁がないと思っていたビジネス色が強い番組で聞くようになったのは、「石原明 経営のヒント+」だけれど、この二つの番組は、その後も、毎回欠かさずまでいかないが、ずっと聞き続けている。
さらには、TBSラジオの様々な番組がポッドキャストになり、その後、撤退し、再び復帰し始めた上に、まだ詳しくは分からないのだけど、スポティファイといった新しいポッドキャスト(?)のような番組も聞くようになり、今は、iPodが壊れてしまっているので、こうしてコンピューターでの作業中に、音を流して聞くことが多くなっている。
公開収録
番組数が500を超えているのだから、かなり長寿番組と言っていいのが「石原明の経営のヒント+」で、自分がビジネス関係に興味がないのに、どうして聴き始めたのか分からなかったのだけど、何回か聞いて、これは本当に役に立つのではないか、と思い、聞くようになった。
石原明氏がホストを務めている時には三回ほど、進行役が変わって、最初は意欲的な若手で、その時に、一番熱心に聞いていたように思う。
フォーステップマーケティング、成功曲線などの言葉は新鮮だったし、著作も読んだ。それでも、そんなに熱心なファンではなく、そのせいか、ビジネス的に生かす機会もないまま、時間がたった。
それでも、公開収録が渋谷で行われる時には、申し込んで二回参加した。
その時に初めて、石原明氏の話す姿を見たのだけど、そのソフトな語り口は変わらず、マイクに乗りやすい声でうらやましい、という思いと、自分が話す番でない時に、表情を見ていたら、とても暗い目をしていたことが印象に残った。
それは、とても疲れていたのか、大きな悩みがあるのか、それとも元々抱えているものだったのか。話し始めたら、その暗さは嘘のように去っていってしまったし、ポッドキャストを聴いているだけの人間には、本当のこともわからなかったけれど、その目のことはずっと記憶にある。
経営という、巨額なお金が動く現場というものは、私のような貧乏な人間には分からない大変さがあるのかもしれない、と思っていた。
止まった更新
考えたら、100人くらいは入るような会場での公開収録を行えるのだから、かなり景気がいい話でもあって、そこに無料で参加できたのだから、ありがたくもあったのだけど、その会場は、本当に自分とは無縁のエネルギッシュさにあふれていた。
こういう人たちの姿勢が、経済活動の真ん中にいる、ということかもしれない。その時は、家族の介護を続けていた自分には、より遠くに感じていたのだけど、こうした機会に、注目すべきビジネスパーソンの存在も知ることができた。(他の参加者の方々は、すでにご存知のような感じだった)。
ポッドキャストの番組は、進行役が代わったりの変化はあったものの、週に1度の更新は続き、近年になるほど、あまりにも話が抽象的すぎて、ついていけなくなるような時も多くなった。それは、自分の理解が届かないだけかもしれないけれど、それでも、時々聞き続けていたが、ある時期になって、なんの前触れもなく、更新が途絶えた。
番組が、もう終わるのかと思っていたら、また、何事もなかったように、今度は進行役を女性に替えて、再開した。
このまま600回も超えるのだろうか、そういう時には、また公開収録があるかもしれない。そうしたら、そんなに熱心なファンでないから、何となく申し訳ないような気持ちもあるのだけど、また申し込むかもしれない。
それよりも、急に更新が止まった時は、あの暗い目を思い出して、何か緊急なことがあったのかと思ったし、それは、世の中の理不尽さがむき出しになったようなことだったら嫌だな、と勝手に思っていて、だから、再開したことに、安心もした。
突然の訃報
それが、2021年になって、突然の訃報を聞いた。
久しぶりにポッドキャストを聴いていたら、石原明氏が2月上旬に亡くなったことを知った。まだ60代前半くらいのはずだった。
自分と直接面識もないのだけど、少しショックだったのは、こういうメディア関係は、死に関することは、避けられる場合が多いのに、番組を聴いていただけとは言っても、「いつ終わるか分からない人生そのものの理不尽さ」を、感じさせられたせいもあるのだと思う。
この番組は、石原氏の旧知の経営者でもある小島幹登氏が引き継ぐ形で続いているのだけど、こういう形式も珍しく、メディアでありながら、実社会を映すような出来事のようにも思え、不思議な気持ちになった。
ポッドキャストに、大げさに言えば、人生を教えてもらったのかもしれない。
今も、「経営のヒント+」は、時々聴いている。
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