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「バーチャルリアリティ体験」の映像を見て、少し安心した理由。

 バーチャルリアリティの時代が来る、と最初に聞いたのがバブルの頃で、それから30年くらい経って、どうやら、やっと実現しつつあるらしい。

VRゴーグル

 今は、自宅で機材があれば「VR」が見られる、ということを知ったけれど、その機材を使っている姿を何かで見て、あれだけ無防備な姿になるのは、怖いのではないかとも思ったけれど、それでも、すでに普通に販売されている。

 今は、それ本体だけで使えるゴーグルを「スタンドアローン」タイプというらしいのだが(「攻殻機動隊」みたいだけど)、それで5万円くらいで、まだちょっと高いから、購入するにも少し覚悟がいるかもしれないと思った。

 ただ、今のところ、ぜひほしい、というような感じは、まだしない。

バーチャルリアリティ体験

 もう少し関心を持てたのは、VRが、アトラクションとして体験ができるということで、これまでも時々は、アートの展覧会で、あのゴーグルをつけて映像を体験したりもしたことはあったのだけど、そういう時は、人が並んでいる時も多く、自分としては、その体験数自体が少ないままだったりするし、それはVR体験としては変則的だったのも自覚している。

 一般的な「バーチャルリアリティ体験」ができるアトラクション的なものを、テレビ番組などで紹介していた。例えば、ビルの窓から細い板が出ていて、そこを歩く高さと怖さを味わえるような映像を見たときに、少し安心したような気持ちにもなった。

 それは、その映像を体験している人の感じと、周りで見ている人の気配と、自分が画面を通して見えている映像を見て、どうやら、ほぼ同じものが見えているらしい、という感触があったからだ。

見える、ということ

 認知心理学を持ち出すまでもなく、見えたり、聞こえたり、味わったり、といった知覚に関しては、少しでも考え出すと、とても疑り深くなったり、捉えどころのない感覚になる。

 例えば、常識的なことだけど、人間が見るというのは、直接、世界に存在するものを見ているわけではない。

 目を通して入った刺激が脳で処理をされてから、初めて「見える」。だから、乱暴な言い方をすれば、あらゆるものは、その人の「脳が見ている」ことになる。

 人によって、見えるものが、かなり違うのではないか。
 そんな気持ちはずっとあって、その違いが思ったよりも大きい可能性はないだろうか、という微妙な怖さもあった。

 ある程度、長く生きてくると、(あまり知らなくて失礼なのだけど、視覚障害者の方の見え方は分からないものの)「見えているもの」は、人によっても、そんなに違わないのではないか、という思いと、どこかで、それでも想像以上に違うことがあるのではないか、という気持ちもあった。

 だけど、バーチャルリアリティ体験の映像を見たとき、どうやら、他の人たちも、自分も、同じような映像を「脳で見ている」らしいと思った。

 だから、「見えていること」は、人によって、そんなに変わらないことを、初めて実感として思えて、それで、少し安心できたようだった。

それでも違うこと

 ただ、もう少し考えると、そのバーチャルリアリティの映像は、見せるものを、かなり限定しているようだった。だから、誰もが一緒の場面が「脳で見える」ようにしているはずだ、と気がつく。

 見ているものが違うというのは、例えば同じ場所にいて、同じところを見ていると思っても、人によって、驚くほど違う場合がある。

 そのときに、見え方が違うのではないかというような気持ちになっていて、それは、バーチャルリアリティの映像で、ほぼ一緒ではないか、という感触を得たことで、やや安心もしたのだけど、それでも普段「見えていること」は、何を見るのか、という選択の違いだから、それは人によって、かなり違うことは予測できる。

 だから、それを確認するとすれば、それぞれの人が「一人称視点」のカメラなどをつけて、それも、できたら、同じような場所を移動したり、生活したりすると、人によっての違いが、かなり明らかになるから、私の見たかった「違い」は、バーチャルリアリティの映像ではなく、もう少し原始的な方法で分かることらしい、と勝手に気がついた。

流行する、ということ

 ただ、爆発的に定着するかのように言われていたVRも、しばらく経つと、なんだか熱気もかなり落ち着いてきたように感じる。

 この書籍は、ベテランのノンフィクション作家が、様々な出来事を取材する、という企画をまとめたものなのだけど、その中でVRも取り上げられていた。実際にVRを体験して、そのリアルさに驚いた筆者は、さらに取材を続ける。

 ネットで調べてみると、すでにVRは多方面で活用されているように見える。そこでまず新築マンションをVRで「疑似体験できる」という会社に電話で問い合わせてみると、「そのサービスは終了しました。今後の予定もありません」と素っ気ない返事。結婚式にVRに参加できると宣伝しているウェディング会社もなぜか連絡がつかない。建築業界ではVRを使った設計が始まっているとのことだったが、ある一級建築士に訊いてみると「パソコンの3Dパースで十分です」とにべもない。スマホに連動したVRも話題沸騰のはずだが、実際に家電量販店でたずねてみると取り扱いをやめたという。「なぜ?」とたずねると、「VRは流行りませんでした」と過去の遺物のように釈明されたのである。
 もしかしてブームが仮想現実なのではないか。
「実はVRはまだキラーアプリが見つかっていないんです」
 そう打ち明けたのはテレイグジスタンス社の彦坂雄一郎さん(中略)VRの技術は応用先をどうするのかという大きな課題を抱えているそうなのである。
「現段階では、やっぱりゲームとエロですかね」
 彦坂さんも指摘するように、実はVRが本格的に導入されているのはアダルト業界らしい。日本では毎月数十本のVR作品が発売されており、「世界一のアダルトVR大国」とも呼ばれているそうなのである。
 実際、私が渋谷にある個室ビデオ店を訪れてみたところ、約60分待ちで、人気のほどがうかがえた。2000円で90分VR見放題。

 ただ、この書籍は様々な連載をまとめたものなのだけど、この「VR」を取材した記事が掲載されたのが2019年1月だから、その後にコロナ禍になり、リモートワークなどが普及した現在では、また少し状況が変わっているのかもしれない。

 これから先、VRが、本当の意味で普及した時は、もしかしたら、人間の知覚自体に影響を与えるかもしれない、というような薄い予感まである。


 今は、VRというよりは、「メタバース」が注目されているようだ。





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