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ラジオの記憶⑥声の熱気 ー 『1995・スピッツ。2020・あっこゴリラ」。

 2020年のコロナ禍の現在、若い20代の女性のミュージシャンが、「スピッツ」のことを、熱気を持って語る姿を何度も見るようになった。今は、すでに「スピッツ」が歴史であり古典になったことを思った。さらに、その熱気によって、思い出したこともあった。

1995年、「ロビンソン」を語るラジオの熱気

 それは、1995年のことだった。
 スピッツの、「ロビンソン」が発売され、ラジオで、とても多くかかっていた記憶がある。今も覚えているのは、その「スピッツ」の「ロビンソン」の浮遊感のある曲のイメージだけではなく、その曲をかける時に、その音楽について語るDJ(今でいえば、パーソナリティ、という呼称になっていると思います)が、熱気を持っていたことだった。

 J-WAVEのラジオ放送が始まったのが、バブル絶頂期の1988年で、当初は英語しか聞こえてこなかったようなイメージさえあったし、それから、FMのラジオ放送は、よりオシャレだと思えてきた。だから、そこで話をするDJといわれる人たちも、基本的にはクールで、知的な話し方をしていたし、そのように意識していたようにさえ感じていた。

 だから、FM放送からは、基本的にはクールな声しか聞こえてこなかった印象だったのだけど、スピッツの「ロビンソン」を語る時、特に女性パーソナリティが自主的に、熱気をこめていた印象が強い。

 ラジオでのヘビーローテーションも、宣伝の一つの方法だったとは思う。だけど、あのラジオから聞こえてくる声の熱気で、そのたびに、ラジオへ気持ちを向けていたような気がするし、その声に押されて聞いた「ロビンソン」の印象はより強く残ったのだと思う。その熱気のすべてが、プロモーションだとは思えなかった。

 売れるか、売れないか。メジャーか、マイナーか。

 もちろん、それだけが価値ではないし、それは運不運の要素が大きいのだろうけど、(どんな楽曲も、売れるために最大限の努力がされているだろうから)、あの時のスピッツは、ラジオの声の熱気によって、押され、高く浮遊を始めるきっかけをつかんだと、個人的には思っている。

2020年、「あっこゴリラ」・学ぶ喜び

 これは、記憶というよりは、現在進行形のことなのだけど、J-WAVEのラジオ番組から伝わってくる声の熱気は、印象に強い。

 今、月曜日から木曜日まで、午後9時から午前12時までの放送をしているのだけど、いつから始まったのか定かでなく、無知で申し訳ないのだけど、今の放送は「音楽に関する様々なことを学ぶ」がテーマになっているようだ。

 毎回、音楽に関してテーマが設定され、それにふさわしいゲストを呼び、楽曲を聴いて、話を聞くというスタイルが続いている。

 聞いていて、気持ちが明るくなるのは、パーソナリティのラッパー・ドラマーのあっこゴリラ声の熱気のおかげだと思う。

 音楽を仕事にしているのだから、ある意味では当然だと思うのだけど、音楽に関する関心の高さ、好奇心の強さ、そして、「知っている人」への自然な敬意があり、何より、「知らないことを知っていく」時の、おー、という喜びみたいなものがダイレクトに声にあらわれているように感じ、それが気持ちがいい。

 それは、純粋に「学ぶ喜び」だと思う。

 たとえば、2020年10月21日の放送。
 「楽曲のアレンジについて」。
 音楽制作のプロが「講義」をするだけでなく、教材も魅力的だった。
 グランジというジャンルを作ったといわれる「ニルヴァーナ」。その楽曲が今広く聞かれているバージョンだけでなく、違うアレンジャーが制作してボツになった、違うパターンも残っていて、どちらも比べて聞かせてくれた。

 それを聴くことによって、あ、違うと思ったり、え、そんなに違うの?みたいなことを、リスナーとしては思っていたのだけど、あっこゴリラも、ミュージシャンであるのだけど、かなり素直に聞いていて、そしてその感想も率直だった。

 違いは、そんなには分からない、だけど、どちらもいいと思う。そして、今広く聞かれているバージョンとの違いは、キラキラしたものと、埃っぽい違いで、ロックだったら、埃を選ぶのかもしれないけれど、そのキラキラを選んだのもわかるような気がする。といったことを、あっこゴリラは、やや低めの声で語っていた。

 その時間は、本来の「学ぶ喜び」があふれ、その上での自身の新たな視点まで加えていて、その熱気自体が聞いているほうにも伝わってきて、少し明るい気持ちになれる。

 今のところ、毎日、違うテーマを取り上げているようで、たとえば、10月26日には、ストリート出身の「ストリートライブ」にもスポットを当てていた。エド・シーランや、ゆずなどの「ストリート出身のミュージシャン」の楽曲が流れる。そして、その日も、あっこゴリラの「学ぶ喜び」があふれていた。

 そして、10月27日には、ブルーハーツ(リンクあり)を語っていた。その番組の冒頭では、スピッツが、どれだけブルーハーツに影響を受けたかも語られていた。言葉には、熱気があふれていた。それは、ラジオの前の人間にも伝わってきた。ラジオで聞くブルーハーツの音楽は、やっぱり気持ちが「あがる」。



(他にもいろいろと書いています↓。クリックして読んでいただければ、うれしいです)。

ラジオの記憶②「あるミュージシャンの言葉」

「夏の終わりに、聞きたい曲」が、3曲に増えた話。

とても個人的な音楽史③「シド・ヴィシャス」の「マイウェイ」。

いろいろなことを、考えてみました。

「コロナ禍日記 ー 身のまわりの気持ち」③ 2020年5月  (有料マガジンです)。



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