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さようなら 。「アタック25」と、「オーソドックスなクイズ番組の時代」。

 日曜日の午後に放送されていたクイズ番組「アタック25」が、2021年9月26日に、最終回を迎えた。

 46年の歴史に幕を閉じた、という表現がされているが、同時に、一般の視聴者が応募し、クイズの実力を競う、という「オーソドックスなクイズ番組の時代」も、終わったと思った。

勘違い

 完全にただの勘違いなのだけど、「アタック25」が2021年9月で終わる、ということは、何かで知って、そして、9月18日の放送で終わるのではないか、と思い込んでいた。

 そして、その回は、「クイズマニア集合」というようなサブタイトルがついていたから、最終回っぽい、と勝手に盛り上がっていたら、「クイズ歴」が3年くらいの出場者が多くて、それに対して、「こんな最終回はイヤだ」と、一方的に憤っていたら、今日ではなく、来週の25日が最終回だと知った。

 それまで、無駄な熱を発していて、一緒に見ていた妻にも、ちょっと恥ずかしかった。
 どうして、勘違いしていたのだろう。

 来週は、レジェンドの大会だった。
 それが最終回だと、納得できる。

クイズ番組の変化

 子供の頃は、いわゆるゴールデンタイムに「クイズ番組」が多かった記憶がある。それも、一般の視聴者が応募して、クイズを競う。そして、「夢のハワイ旅行」を目指したりする番組が多かった。

 いわゆる「早押し」が基本だが、番組によっては、一人が一分間に何問答えられるか。そんなクイズの出題スタイルへの工夫はあったけれど、基本的には、一般参加者が、クイズを答える力を競い合う、というようなオーソドックスな部分は、どの番組にも共通しているようだった。

 そのうちに、ニューヨークを舞台に、高校生を競い合わせ、クイズで負けた人間は「罰ゲーム」的な扱いを受ける、あたりから、クイズ番組が変化してきたように思う。

 ショーアップ化という方向だった。

 そのうちに、一時期は、クイズ番組自体が、とても少なくなり、このままなくなるのか、と思った後に、再び、クイズ番組が多い時代になった。今では、ゴールデンタイムには、毎日、クイズ番組があるような印象さえある。

 ただ、もう改めて言う必要もないのだろうけど、今のクイズ番組は、タレントが出演する、「ショーアップクイズ」になっていると思う。(アマチュアでも、タレントのように扱っている番組も含めて)。

「クイズ番組」へ近づいた時

 そんな時代の変化の中で、個人的には、クイズ番組が身近になる機会が3回あった。

 子供の頃は、ただの視聴者であって、出場者よりも早く答えられたら、テレビ画面の前で、嬉しかった。とても無邪気な反応だった。

 それが、高校生の頃、一気に身近になったことがあった。
 当時「クイズグランプリ」という番組が夜にやっていて、短めの放送時間だけど、平日に毎日のように放送されていた。夏になると、「高校生大会」というのがあって、そこに自分が通っている高校の同学年の3人が出場し、チームとして、優勝したことがあった。

 その3人の彼らとは、ほぼ面識もなかったのだけど、それでも、やっぱり少し誇らしかった。それは、通学している高校の運動部などが日本一になると、自分とは直接関係なくても、ちょっと自慢したくなる気持ちと、近いのかもしれない。


 二度目は、大学生の頃、クイズ番組の予選に出かけた時だった。


 3回目が、「アタック25」に大学時代、サッカー部のマネージャーだった後輩の女性が出場した時だった。

 卒業以来、ほぼ会ったことがなかったのだけど、随分と時間が経っても、画面越しの印象はあまり変わっていなかったし、懐かしい気持ちになった。そして、視聴者として、テレビの前で、応援していた。その回のトップ賞になって、やっぱり少し誇らしい思いになった。

 その後、おそらくは同じ年の「トップ賞」の大会の時に、その女性が出場していた。こんなにクイズが強かったのを知らなかった。

最終回 前半

「アタック25」の最終回は、出場者の条件が「過去にトップ賞になった人物」ということだったので、それは、かなりのハードルの高さだったけれど、50年近く続いたクイズ番組の最終回としては、納得のいく条件でもあった。

 予選会場の映像も少し映った。もしかしたら、後輩の女性がいるのかも、と見ていたが、分からなかった。

 そして、決まった出場者は、12名。
 特に、ベテランの参加者の紹介の時は、過去に活躍している映像が映る。

 それから長い時間が経って、その姿が、当然ながら変化をしていて、それで、時間の流れをリアルに感じたりもするが、どの参加者も過去のチャンピオン経験者ばかりであり、最も若い人が20代で、最年長は50代だった。

 最終回の前半は、東日本と西日本で、6名ずつに分かれ、早押しで4問正解すると勝ち抜けだが、2名だけが決勝に進むというシステム。ただ、2問、間違えると、そこで退場というペナルティもついている。

 6名でクイズが始まる。

 とにかく押すのが早い。
 おそらく、問題を最後まで聞いたら全員、正解が分かるはずだから、その問題を読み上げている途中で、どんな答えを要求しているかを推理して答えているようだ。

 そんな勝負になっているから、視聴者は、クイズの問題として、何が問われているか。それが、分かる前に、参加者が答える場面が少なくない。

 視聴者としては、「そこまで推理したのはすごい」と思うが、参加者が間違えるのは、正解が分からないわけではなく、問題が何か?の読みが外れた時がほとんどだった。

 まるでアスリートの戦いになっているようだった。

 2回間違えたら、退場というシステムにしたのは、それがなければ、どの参加者も、とにかく先を読んで、ボタンを押しまくるのを避けたのかもしれない、と思った。

 さらに、見続けていると、参加者は、間違えて「✖️」が一つついても、ボタンを押すことにためらいがないように見えて、そういう心の強さも含めて、本当にアスリートだった。

 そして、2回に分けて行われた予選で、勝ち残った4人は、12名のうちでは、年齢的に、ほぼ若い順だった。改めて「クイズ競技」であり、アスリート同士の戦いだと思えた。

最終回 後半

 いつもは30分番組だけど、最終回は60分になって、そして、後半は勝ち残った4人で戦う

 その戦いは、引き続き、正解を答えるのは当然として、それよりも、問題は何なのか?それをどれだけ早く分かるか?という「読み合いの勝負」になっていた。

 最後まで問題が読まれて、誰も答えられない時に、その間を埋めるような電子音は、今回は、一度も聞かれなかったと思う。


 アニメ「ちはやふる」での知識にしか過ぎないのだけど、「百人一首」の競技かるたの世界では、上の句を読んで、下の句がどれなのかは、出場者は、全員分かっている。

 そうなると、残りの札から、絞り込みが行われ、読み手が最初の文字を発声する瞬間に、出場者は、すでに札を取り合う、という勝負になっているらしい。

 さらには、前の句から、次の句へ移る時の、読み手の言葉の空気の響きたいなもので、次に、どの句が読まれるかを判断し、札を取る、といった戦いのようだ。

 それは、すでに超人とか、達人の域なのだと思うから、もし目の前で、観客として見ていたとしても、何が起こっているのか、分からないと思う。

達人の戦い

「アタック25」の最終回。4人の「達人」の最後の戦いも、そんな様相を見せていた。

 このクイズは、正解をしてから、25枚のパネルの中から、一枚を選ぶ。それは、一種のオセロゲームと同じルールだから、正解したとしても、どのパネルを選ぶか、どのタイミングで選ぶかで、勝負が変わってくるから、正当数が多いだけでは単純に勝負が決まらない。

 だから、場合によっては、正解しても、パネルの取り方が「間違っていて」、それを視聴者として気がついてしまう、といった「楽しみ方」もあると思うが、当然だけど、この4人は、そんなミスをすることもない。

 しかも、誰かが独走することもなく、接戦が続いたので、パネルの取り方が難しく、視聴者からは、それが正解かどうか分からない複雑なパネルの取り合いになっていた。

 正解は分かっているのは前提として、何が問題であるのかを、問題を読んでいる途中で、推理し、いかに早くボタンを押して、答えるか。

 その戦いの中で、視聴者から見ると、参加者の「読み過ぎ」によって、結果として答えを間違えたりする場面も少なくなかった。とてもレベルの高い戦いだったと思う。

最後のチャンピオン

 そして、最終的にチャンピオンになったのは、唯一の20代。最も若い参加者だった。

 それは、ある意味では最後にふさわしいことだと思えたし、これは、「オーソドックスなクイズ番組」でもあるのだけど、行われていることは「クイズ競技」でもあるから、体力も関係してきていて、タイトルを多く持っているベテランではなく、若い参加者が勝つ、というのも、リアルな結果にも見えた。

 さらに、最後に、トップだけが答えられるクイズにも正解し、46年の歴史は、閉じられた。確かに、最後に、これを誤答したら、番組の歴史の印象自体が変わってしまうので、その役割も、若いラストチャンピオンは、分かっていた上で、プレッシャーもあると思われるのに、見事に、正答を出していた。

 最後の問題の答えは、「秦の始皇帝」だった。

競技クイズの可能性

 番組の最後は、司会の谷原章介の、「クイズを愛する皆さんの熱い思いは永遠です。これからもクイズを愛し続けてください」というセリフで締めくくられた。

 クイズは永遠だと思うが、おそらくはクイズ番組には限りがあるし、まして、一般視聴者が参加する「競技としてのクイズ番組」は、なくなっていく可能性が高い。

 もしも、これから、こうした形式の「クイズ番組」が残るとすれば、例えば、参加者のクイズの答え方、もしくは間違え方も含めて、何が凄かったのか、どこが優れていたのか。

 そんな説明を分かりやすくしてくれる「クイズ解説者」がいるとすれば、地上波でも、深夜か早朝であれば、高齢者層をターゲットとして、細々と、生き残っていけるかもしれない。

 そんなことを、最終回を見て、考えた。

 ただ、50年近く続いた番組は、すでに「公共財産」に近い価値も、実は持っているような気がするので、ずっと続ける方法もあったのに、とも改めて思った。



(実際のクイズ番組チャンピオンの書籍です↓。一般視聴者参加型のクイズが、隆盛を極めていた頃の記録でもあるかもしれません)。




(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえると、うれしいです)。



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