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【イベント感想】 「正解の無いクイズ」イベント in なかのZERO

 ほぼ何の助走も準備もなく、もしかしたら宣伝のようなものがあったのかもしれないけれど、個人的な印象では突然始まったテレビ番組があった。

 どうやら特番があってから、レギュラー番組になったようなのだけど、最初は月曜日から木曜日まで、夕方の5時台から15分ずつという変則的な放送から、一日減って月曜から水曜になった。

 ただ、クイズ番組を見ていて、正解を当てる、という番組は、ずっとあって、夜のゴールデンタイムという時間帯でも、毎日のように放送している印象になっている。一時期はクイズ番組がとても少ない冬の時代もあったはずだけど、それがウソのように、クイズ番組は多く放送しているけれど、個人的にはほとんど見ない。

 どこかで正解のない質問に対して、答えてくれるような番組はないだろうか、といった誰もが考えそうなことを私も思ったことはあったけれど、こうして形になるとは思わなかった。


正解の無いクイズ

 どうやら、「正解のないクイズ」という番組は過去にあったようなので、それでタイトルが「正解の無いクイズ」になっているようなのだけど、最初に見たときは、3人のMCが、こうして並ぶことがないのに、あまり違和感がなかった。

 ラッパーの呂布カルマ
 Aマッソの加納
 相席スタートの山添

 現時点では、知名度もあって、人気もあって、実力もあるのは間違いないけれど、芸人2人にラッパーが一人の組み合わせは新鮮そうだけど、私が見始めたときは、この3人が自然と息があって見えたから、まるで違和感がなかったのだと思う。

 共通するのは、表現のプロで、主に言葉を武器にしていること。

 そして、最初に、「クイズ」が出され、3人がいろいろと話し合う時間がある。やはり、笑いを求めていく答えが出がちで、だから、見ていて楽しい部分もあるのだけど、ラッパーの呂布カルマが、少し違うことを、だけど、流れを止めないでそこに放り込んでくることもある。

 こういう番組は、何しろ誰が出演しているかで、ほぼ決まってしまうと思う。

呂布カルマ

 最初に呂布カルマを見たのは、「フリースタイルダンジョン」という番組だった。
 ラップバトルという形式を世の中に広めてくれて、私もその時に知った。

 眉毛がかなり上がっている独特の風貌。そして、韻を踏む、というラップの基本的な要素みたいなものにはこだわっていない、というような紹介のされ方をしていて、それほど詳しくない人間には、韻を踏むこと自体がよくわかっていなかったけれど、呂布カルマの独特の言葉の強さは、素人でもわかることがあった。

 例えば、ラップバトルだから、お互いにラップをするのだから、相手の言ったことを取り上げ、うまく揚げ足を取り合うような場面も少なくない。そして、今もよく使われるような表現で、ブーメラン、という言葉がある。

 それは、相手を攻撃したはずの言葉が、実は、本人の過去の発言にも当てはまる。だから、自分の攻撃が自分に返ってくる、といった意味でブーメランと揶揄することは、ラップバトルだけでなく、インターネット上でもよく見るような気がする。

 それほど詳細は覚えていないけれど、あるラッパーに、呂布カルマが「ブーメラン」とディスられた場面があった。(このディスる、という言葉も悪口を言う、という言い方よりもうまく表現しているような場面も多いから、かなり定着したが、それでも今、普通に使うのはちょっと恥ずかしい。)

 そのとき、「ブーメラン、ブーメラン、って言って、確かにそうかもしれない。だけど、そのブーメランは、お前の首をかっ切って確実に俺の手元に返ってくる」といった内容を、もっと完成度の高い言葉として返している呂布カルマを見て、すごいと思った。

 冷静に考えると、ちょっと筋が通っていないかもしれないけれど、言葉とイメージの強さがこちらに伝わってきて、おお、と思わさせてくれた。言葉数は多くはないが、一つ一つに力がこもっているタイプに見えた。

 だから、韻を踏むというスキルではなく、言葉一つの力を高めていることにも力を入れているようで、そうなると、ラップバトルであれば、相手の気持ちのダメージは大きいのかも、と想像はできた。

 さらに、今は、多くの人が知る存在になったCreepy Nutsのラッパー・R-指定(この人は自然にとんでもない言葉の種類を繰り出す凄さがあった)とのラップバトルをしたのをテレビ番組で見たことがあった。

 そのとき、どちらも強いラッパーなのは、視聴者でもわかったのだけど、途中で、R-指定が優勢になり、絵に描いたようにたたみかける場面があって、呂布カルマがどうするのか、と思っていたら、急にテンポが落ちて、お前、すごい、強いよ、といって負けを認めるようなことを言っていた。

 私自身は、フリースタイルダンジョンで、ラップバトルを知ったような人間だから、知識は圧倒的に少ないのだけど、こうした場面を初めて見て、負けたのにみじめにも見えず、潔く感じたし、審査員も、R-指定を選びながらも、呂布カルマの負け方は、かっこいいと言っていたのを覚えている。

 それは、相手の強さを認めるというような凄みだったし、格好のいい負けかたは、本当にあるのだと思った。

Aマッソ・加納と、相席スタート・山添

 Aマッソの加納愛子は、頭がいい人、という印象だった。

 同時に、その文章を読んで、思ったよりも守りが固い人、という気持ちにもなった。

 その後、アメトークなどで本を紹介したりする姿を見ていると、基本的にインテリな人で、その上で、ずっと声を張らないような話を聞いてみたいと勝手ながら思っていた。

 相席スタート・山添寛は、最初は、相方のケイさんの方が、今では難しくなってきた表現の「ちょうどいいブス」という言い方で、目立つようになって、その隣にいるおとなしめの影の薄い人、という印象だったのに、その記憶自体が、こちらの見る側の未熟と反省するほど、その後は、本当にテレビでよく見る人になっていった。

 ギャンブルにハマっている、という部分が強調されているし、そうした人独特の妙な怖さもあるので、気がついたら貴重な存在になっているようだった。

 呂布カルマ、Aマッソ・加納、相席スタート・山添の3人を、どうして組み合わせたのかは、その狙いのようなものはよくわからないものの、気がついたら、すっかり視聴者としてすっかりなじんでいて、15分枠の中での最初と最後の3人のトークがないと成り立たないと思うようになっていた。

 のめり込みすぎず、冷めすぎていない。

 3人とも、そうした距離の取り方は似ているかも、と思うようになっていた。

回答者

 そして、当たり前だけど、「正解の無いクイズ」なのだから、誰が答えるか、でその番組の質が決まってしまう。

 書籍も出ていて、それを確認すると、回答者がとても多かった。もしかしたら、個人的には見たこともない人もいるような気がするが、約40人、登録されている。

 改めて、哲学者、という肩書きの人が多く、その中で、小川仁志氏は、他の番組でも見かけているのだけど、さらにキャラクター化していて、その身振りを、一緒に見ている妻は嫌がっていて、他にも何人か、好きではない人がいるようなので、ただ、そうした回答者の幅の広さが、質を保証していくれるから、これからも、色々な人を出して欲しいとは思う。

 何人かの回答者の回答は、いつも楽しみにしている。

 個人的には、岩崎大氏の回答は意外だけど、どこかで世の中をよりよくしたい、という気持ちがあるようで、尊敬もしている。著書「スマホと哲学」も読んだ。

 大晦日の過ごし方についての岩崎氏の回答で、初めてテレビでジルベスターコンサートを見て、こんな年越しをしている人たちがいることに、どこか驚きと、文化資本の圧倒的な違いも感じて、ちょっと怖くなったりもした。

 清原博氏は、プロの法律家として、あらゆることをその視点から語っているので、その凄みを感じつつも、時々、AIなのでは、と疑ってしまうこともあるくらい冷静だった。こういう人が回答者に存在することは、一つのぶれない基準がある、ということで意味が大きい気もする。

 岩崎う大氏は、画面に出てくるだけで、何か気持ちが納得するようになるから、ずっと変わらずに追求し、蓄積してきた人の回答は、どんな内容であっても、そこに微妙な重みが加わる気がしている。

 トム・ブラウンの2人はそれぞれの不気味さをきちんと出しているが、特に布川氏は、自分の役割を、下ネタを引き受けていると考えているのか、そうした回答が多くなってきているが、すごく仕事をしているプロだとは思う。ただ、妻には評判が悪い。

 矢野了平氏は、クイズ作家として、その答えは、その後の基準点になるような、アベレージの高い回答が多く、その安定感に感心もするが、考えたら、この回答が、その後の仕事に直結するという意味では、最も緊張感を持って取り組んでいる回答者の1人なのかもしれない、とも思う。

 和田ラヂヲさんは、絵で語るプロの凄さを毎回感じる。どんな回答であっても、楽しそうに話をしているので、いつも自分にとっては面白いと思っているのだろう、ということが伝わってきて、それも含めてすごいと思ってしまっている。

 山崎直子氏。宇宙飛行士の人たちには、いつも不思議な印象を受ける。それは、もちろん人間だから全くないというわけにはいかないだろうけれど、気持ちの中の影のような部分が極端に少なく感じるからだ。だけど、あの宇宙空間で、不穏な部分がある人が混じっていたら、その中でつい暴力的な気持ちが爆発してしまったら、とんでもないことになるのはわかっているから、宇宙飛行士を選ぶ側も、身体的な部分はもちろんだが、精神的な面でも安定感を重視するのは当然かも、と思うようになった。

 山崎氏も、その見方に適合するように、曇りのない回答を連発していて、妻と見ているときは、「直子の直は、素直の直」と言いながら視聴している。ただ、その印象を裏切られたことは今のところ一度もないから、これだけ徹底していると、すごい人なのでは、と思うようになっていて、この人の存在も、この番組にとって貴重なものだと考えるようになった。

 もちろん、問題も大事だけど、この短い時間の番組に、これだけ回答者を揃えられたから、興味深く見られるのだと思う。

 私が見始めた頃は、最初は月曜日から木曜日の午後5時台だったはずなのだけど、そのうちに、時間帯は同じなのに、突然、月曜日から水曜日の毎週3回の放送になった。

 ただ、そのことは視聴者にとっては、微妙な戸惑いはあったものの、すぐに慣れた。

 そして、放送200回を記念して、公開イベントをする、ということを知った。その日程が、ちょうど自分が行けるときだった。妻と相談したら、自分は行かないけれど、行っておいでよ、と言われた。

 それで、さっそく申し込んだ。

 その後、この番組はやたらと再放送が増えたり、イベント告知の回数がすごく増えて、イベントの日が迫って来るまで、ずっとその告知に触れることが多くなっていたので、もしかしたら、人が集まらないのだろうか。という気持ちもあったが、もしガラガラであっても、それはそれで話にはなるし、何しろ、自分もそうだけど、どんな人が観客として来るのかに、興味があった。

 その日が来るのが、ちょっと楽しみだった。

「正解の無いクイズ」LIVE

「なかのZERO」という場所自体を知らなかった。

 中野といえば、中野サンプラザで、今は営業を終了しているし、他にホールがあるのを知らなかった。

 中野ブロードウェイがあるのは駅の北口で、だから、その逆の出口にはほとんど行った記憶がなく、それだけでちょっと不安だった。駅から歩いて、なんとなく静かな場所で、矢印もあるから確実に存在するのはわかっていても、微妙に心配な気持ちになる頃に着いた。

 なんというか、公共の建物、という印象だった。

 午後7時から開演で、その約20分前に着いた。

 入り口付近では、「カルマルアンサー」と言いながら、入り口を楽しそうに入っていく小学生くらいの男の子がいたり、若い女性も目立ったけれど、1000人を超えるキャパシティを持つ客席は、勝手に心配していたけれど、ガラガラではなく、私の隣は2つ並んで空席のままだったけれど、ほぼ満席のようで、2階席も人でいっぱいだった。

 そして、開演間際に、改めて全体を見渡したけれど、本当に老若男女で、しかもさまざまなタイプの人がまんべんなくきている印象だった。これだけ、バリエーションのバランスが取れている観客も珍しいと思い、自分もその一端を担っていたのが、なんだか不思議な気持ちにもなる。

 MCの3人も少し遠いとはいえ、初めて生で見た。 

 テレビ画面と一番違って感じたのは、呂布カルマだった。

 舞台の上にいる呂布さんは、テレビで見ていた時よりも、もっとスリムで、いわゆるシュッとしていて、スタイリッシュに見え、相席スタート・山添さんよりも背が低いのもなんだか意外だった。

 最初は、なんとなくエンジンがかかるまで時間が長く感じていたのだけど、いつものように回答者のVTRが始まると、時間の進み方は早くなった。

 スマホを持っていないので、自分は回答を出せない。だから、和田ラヂヲさんの描いたアクリルキーホルダーをもらえるチャンスがなかったのは残念だったけれど、周囲の人たちが、回答を打ち込むために、ずっと指を動かしていたのも、他のイベントとは違っていて、新鮮だった。

 それでも、生だからこその小さなハプニングのようなことや、スペシャルゲストの1人である小川仁志さんも、やはり初めて生で見たのだけど、普段、テレビでの「いかがでしょう?」というポーズも含め、自分の役割のようなものを誠実に行なっているのがわかったような気がしたし、ライブならではの「検証」も、好き嫌いは分かれる可能性はあるが、笑いが起こっていた。

 なんだか約2時間が楽しかった。

 それは、いつもテレビで見ていたMCの3人や、ゲストや、検証をしてくれた人も生で見られて、勝手ながら、どういう人なのかが、よりわかったような気がしたし、どんな人がいつも視聴者なのかを確認できたような気がしたからだった。

 カルマルアンサーのポーズも、みんなでできた。

 ただ、もし、次のイベントがあったとしたら、配信で参加すると思う。

 どうしてなのかといえば、おそらく、次の機会までも、値上げが続く状況では、まだスマホも携帯も持たない生活が続きそうだから、配信で参加し、今度は、自分でも考えて回答を出して、和田ラヂヲさんの描いたアクリルキーホルダー(次は違うかもしれないけれど)が欲しいからだ。

 そして、初めてのライブに参加したことが、もう少し年数が経ったら、番組が今では想像できなくらいの「大きな存在」になり、ちょっと自慢ができる行為になっている可能性があるとも思った。


(ライブは終わって、回答への参加はできないとしても、配信ではまだ見ることができる。配信だからこそ気づく可能性が高い「謎」もあるそうなので、それはサービス提供について考えている、ということだとも思いました)。 




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