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ならわし。【掌編小説】

ビビりな弟は兄を攻撃した。
ちょっとした誤解からだった。

暗闇から不意に現れた姿に驚いて
咄嗟に兄をやった。
お前が驚かすから俺はやったんだ。

普段おっとりな兄。
その日は何気なく夜闇で過ごしていた。
突然の事だった。

何もしていないのに僕は襲われた。
それも弟に。

双子の兄弟は二卵性だった。
似らん所為で悲劇が起きた。

小さい頃からずっと一緒で
居なくなると探すくらい仲は良く
散歩も一緒に行くほどだった。
あの事件が起こるまでは。

何度かあいつが驚かすもんだから
俺は反射的にやっちまうんだ。

僕はただ何気なく過ごしているだけなのに
何度も突然、あいつが襲ってくる。

それからというもの兄弟は不仲で
弟が近く度に兄は威嚇するようになった。

弟は、何もしていなくても威嚇されるため
次第に兄へ威嚇し返すようになった。

「兄弟なんだから仲良くしなさい。」

そう言って近づけてみたところで
威嚇に威嚇の横行で仲はさらに悪化した。

最近は縄張り意識が強いもんだから
出会えば常に睨み合い一定の距離を保っている。

思春期か?ホルモンバランスか?
身体の傷も至る所に。
あまりにも酷いもんだから見ていられない。

お互いの暴力は精力からか。

このまま放っておくわけにもいかず
アステカ式を取り入れることにした。

それは古から伝わるものらしく、
睾丸に括った紐を出産時に妻が引っ張り
痛みや苦労を分かち合うというものだ。

聞いたところによると、その後
暴力も精力も落ち着くらしい。

といっても、どちらも男のため
出産時に引っ張ってくれる妻はいない。
互いに引っ張り合うわけにもいかない。

ここは一旦、どちらも痛み分けということで
怯える兄弟をとっ捕まえて紐を繋ぎ、腹を括らせ
先代からお世話になっている先生のもとへと送った。

そして、兄弟の睾丸は無事取り出された。

意外にも兄の方が睾丸は大きかったという。
どーん構えた兄の落ち着きの根源はきっと…
そしてビビりの弟も、そこが原因かたぶん…

しかし、まぁ、取ってみたところで
不仲は変わりはしなかった。

仕方のないことなのかもしれない。
1度入った亀裂はそう簡単には修復できない。

かの有名なアステカ式も
やはり猫には効かぬのだろう。

なんにせよ、アステカ式関係なく
去勢手術はする予定ではあった。

そう、これは飼われる雄猫の習わし。
時期が早まったにすぎないのである。

ただ少し、あの話と同じ匂いがしたもんだから
そういう視点で書いてみたという訳だ。

ならわし。否、にゃらわし。




参考にさせて頂いた作品。
下記、青豆ノノさんの小説『ならわし』です。
こちらも面白いので是非。

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メインの詩は堪能されましたか。

この後にデザートでもいかがですか。

ということで、私が詩を書くに至った経緯や意図、その時の思いや感情などを知りたいと思った方はぜひ以下リンク先の『【デザート】雄猫2匹のこれまでと現在。』を読んでみてください。

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