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#67 深海都市への扉の鍵

Oliviaは父のGregoryの声を背に
逃げるようにスタスタと歩き出した。

「まずは花屋さんに寄るわね!」

そう言って広場のカフェの向かい側にある
50mほど先の花屋を指差した。

「もう買うものを決まってるからすぐ済むわ。」

「Olivia、あなたのお父さん、
ただの私の案内じゃないって
気付いてたみたいだけど?」

「でしょうね…。
だから、1時間以内には必ず戻るわ。」

「うん、どこ行くのか知らないけど、そうして。
私も約束しちゃったから。」

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花屋に着くと店員に話しかけ
すぐに青いバラを一本受け取った。

「素敵ね。これに防水ラッピングをお願い。」

店員は杖でトンッと軽く花に触れた。
Oliviaは満足そうに出てきた。

そして、色とりどりで
見たこともない形や質感の花を見ている私に
無闇に触らない方がいいわよ、と忠告した。


花屋を出ると、
今度は街の扉の方へ向かった。

「ところで、どこへ行くの?」

深海都市よ。
Cedric(セドリック)に会いに行くの。
手紙に書いたでしょ?」

「あぁ、Oliviaの彼?
えっと…深海都市って?」

「あ、そうか。
慌てて書いたから、そんなに詳しく書いてなかったっけ。
Cedricは深海都市で深海生物の研究をしているの。」

「え、研究してるんだ。すごいね。
深海都市に住んでるってこと?」

「そうよ。来週彼の誕生日なんだけど、
ずっと研究室に籠もりっきりなのよ。
だから、今日は少し早めのお祝いを持ってくの。」

Oliviaはさっき買った青いバラと
カフェから持ってきたカップケーキの箱を
強調するように持ち上げた。


「研究所は扉をくぐってすぐのところにあるから
挨拶して、これ渡して
少し街を見て帰るくらいなら1時間もかからないわ。
あ、カップケーキがお店のだってこと、内緒ね。」

Oliviaはいたずらっぽい笑顔を見せ、
扉へ一歩近付いた。


その瞬間、何か顔程の大きさの何かが
Oliviaの顔に向かって飛んできた。
そのままOliviaの顔の前でバタバタと飛んでいた。

Oliviaはキャッと声を上げ
しっかりとそれを見た後の顔には
微かに恐怖のような表情が見てとれた。

よく見ると、それは15㎝ほどもある
半透明のトンボだった。

「まずい…パパだわ。
M.ちゃん、ごめんなさい。1人で行けるかしら?
届けてもらえると助かるんだけど…」

「パパ!?え!?あなたの…お父さん?…え??」

「えぇ、パパの守護動物なの。
街を出ないようにココに寄越したのね…」

「えぇと。わかった。1人で行ってみる!」


そう言ったと同時に、トンボは
Oliviaの顔の前から離れ、肩の留まった。

「ホントにごめん!
あなたの鍵は多分深海都市へは行けないから…
深海都市への扉の鍵はあそこの鍵屋さんにあるわ。
気を付けて行って来てね。」

私は、あとでね、とOliviaに告げて
指差された鍵屋に向かった。

1畳ほどしかない店の壁には
大量の鍵が所狭しと掛かっていた。

「いらっしゃい。
どこの鍵をお求めですか?」

「あ、えっと…深海都市へ行く鍵は…?」

「それならソコ。タツノオトシゴの形の鍵ですよ。」

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彼が指差す先を見ると、
青と紫のグラデーションが美しく
アンティークな雰囲気が漂う鍵があった。

鍵にはユラユラと揺れる
本体と同じく青と紫のグラデーションのチャームと
巻き付いたチェーンには虹色に輝くストーンが
付いていた。

「この青と紫のこれ?ですか?」

「そうだよ。カッコイイでしょ。
深海の色がしっかり出てて。」

「そうですね。
やっぱりなんだか深海っぽいんですね。
…じゃぁ、これください。」

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私はその鍵を持って店の外へ向いた。




これが深海都市への扉の鍵を手にした時のおはなし。
続きはまた次回に。


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