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高コスト時代の飲食店対策5:従業員のあり方を根本から変える時代

このテーマの記事は10回のシリーズで投稿します。
飲食店の業態変更や仕組みを変えて繁盛店づくりに役立つ内容です。
*10の記事のうち1本は有料記事になります。

  飲食店の経費で変動費、固定費問わずに比べると、1位が食材費、2位がこの人件費です。
しかも、食材費は、(原則的には)売上高に連動して、正比例しますが、
なんと人件費は「売上に関係なく一定額が支出」されます。

考えようによっては、一番難しい敵が人件費と言えます。

従業員さんを活かしながら、人件費を削減する
ノウハウが育たないとクリアできません!

以下はそのヒントを、私なりに解説します。

*ご存じのFLコスト率(食材費比率と人件費比率の合計が
売上高に占める割合)の目標は今や最低60%、できれば55%を目指す
必要が出てきています。

フードコストが、仮に40%に近くなると、
人件費予算は、「売上高の15%~20%しか使えない」ことになります。

今から、人件費比率を上限20%に近づけるノウハウ
一緒に見てゆきましょう。


■社員は1店舗に1名だけ

  私に知っているある飲食店さんは、50坪店舗で社員2名(以前は120坪店舗で社員6名~8名)の飲食業態開発を行いました。

売上高は、開業時850万円~開業数か月後で650万円を基準に推移しています。(*通常フル開業月売上実績×65%=平常付きの平均月商の近似値)

人件費効率が良く、投資効率も良いようで、1年間に数店舗の出店を行ってきています。

  私は、20年以上も前に、マクドナルドの社員は1店舗に1名しかいなくて、しかも、営業店舗の周辺のミニショップを最大5か所まで管理する
(今は3か所くらい?)と聞いていました。

これからの中小型規模飲食店は、
店舗の運営管理責任者1名だけの店舗づくりを基本に仕組みを変えるべきと
考えています。(店舗の管理比重を95%くらいにするなら2名態勢)

*ただし、
数店舗まとめてエリアマネージャーまたは経営者のバックアップ体制の構築がないと、責任者が潰れたり、不正を行うことがあります。

<店舗責任者の役目>
・食材の発注(AI化)、保管管理
・勤務シフト管理(勤怠ソフトの導入)、シフトの微調整
・パートアルバイトの採用、勤務環境サポート、メンタルサポート
・店内機器のチェックと管理等
・金銭管理 その他

店舗のオペレーションに組み込まれて作業をすることは、急な欠員時以外
にはなく、「店舗の安全運転」が任務。

パートさんの中から、「昼パート責任者」「夜パート責任者」を選び、
責任者手当を2~5万円支給して協力してもらう

*調理も接遇サービスも「パート・アルバイトさん」だけで行う

 スキルアップ査定により、時給は100円づつ昇給する仕組みにする


■パート店長、パート調理長の時代

  2人社員の店舗を1人社員の店舗に変え、次は、本部と常時オンラインでつなげた状態で、全員パートさん、アルバイトさんで運営する店舗の時代に
向かっていると思います。

社員を不要にする・・・ということよりも、働くことが人生のような社員が
いなくなり、

「社員のパート化」が進み、
8時間~9時間働く社員が、週に20時間働くパート化する時代が来る

ただし、スキルアップすることで、時給2,000円以上になる世界です。
きっと、嘘みたいと思うでしょうね。
働くことが主体の人生から、人生を楽しみながら働くことに変化すると
考えるとこういう結論に行き着きます。

パートだから・・・社員より待遇が悪いということも
なくなるようになります


■高時給しか払わない

  私個人としては、パート、アルバイトの方についてこう考えています。

1,時給勤務者はすべて一律時給にする
  パート勤務者のくらべて、学生のアルバイトは「マイナス100円」が通例ですが、差別化していないお店が増えています。
意地汚い飲食業界の古い慣習です。

また、見習い期間は、「減額時給」というのもよくありません。
人手不足という中には、
自ら人気を落とす慣習が多く入っていることに気付くべきでしょう。


2,時給の高さで応募効率が決まる
  「短時間勤務×高時給」が一番応募効率の良い人気の方法です。
あるお店で、
5時間勤務➡4.5時間勤務に変え、
900円時給➡1,000円に引き上げました。
渡す賃金は変わりませんが、応募効率は格段に上がりました。

時給は最高2,000円~2,500円は必要です。
社会保険を付加することも必要です。
これからのパートさんは、人間しかできない業務に携わるスペシャリスト
なのですから


3,パートであっても責任ある仕事をしたいと考えている
  
すべてのパートさんに当てはまる訳ではありませんが、能力があっても、都合でパート勤務しかできない方も多くいます。

私は、パート店長、パート副店長、パート調理長がいてよいと思います。
働き甲斐は、雇用の形態に関わらず平等に必要です。

■欲しい収入に達する最短勤務時間にする

  パートさんという言葉ができる少し前から生きてきていますから、
体感的な「パートさん」の意味が分かります。

パートさん=短期間勤務者=短時間しか必要としない業務を
短時間しか働けない人がWINWINで契約することです。

  人件費比率の大きい飲食店を調べてみると、1勤務で9時間で8,000円とかのパート勤務者が多く働いている事例があります。

パート勤務者の目安は、「2時間~4.5時間が目安」

6時間以上のパート勤務者のいるお店は、人件費を垂れ流ししている。

ランチタイムもディナータイムもピークタイムは90分~120分だけ
と知っているのにこの雇用時間の長さに甘んじています。

若しくは、
機械化できる作業を人力で行っている。
(作業をする人がいなくなる前に機械化しておくべきです)

お金を稼ぐだけの労働なら短時間が一番良い
短時間だからこそフルパワーで作業に取り組める

 
 

■社会保険は完備

  社会保険の適用に、社員やパートの区別はありません。
あるのは、月収のみ。
月収の平均値が「月額88,000円」を超えたら、社会保険料の適用
対象者です。

安い賃金で高能力を要求するのは手前勝手の良い話です
それでは誰も長くはいません

今からは、
経営者が従業員をどこまで大切に考えているか試される
時代です!



■キッチンもホールも共用スタッフ化

  省人数効率化時代の飲食店は、店内一律で仕事をカバーし合う態勢が
一番効率の良い経営になると考えています。
作業のボーダーレス化」です。

・キッチンが追い込まれたらホールスタッフが手伝う
・ホールが追い込まれたら、調理をしたスタッフがホールへ料理を持って
 出る
・食器の洗い物は、誰でも手の空いた人がする

店内で働くスタッフをひとりでも少なくできる最初のアクションは、
全員が複数の作業をできるようにしてゆくことです

ただし得意分野はやはり重点的にその人が受け持ちます。
言うなれば「30%以上の作業の共有化」と考えればよいでしょう。


■人件費比率は売上高の20%以内の仕組みにする

  前述したように、食材コストが上がる傾向は今後も続きます。
ヨーロッパのエネルギー不足が、向こう2年間の対策(多分暫定期間)と
しているように、

令和5年も食材高騰はあり続ける
しかも円安が収まるまでは上がり続ける


円安が止まっても、価格は高止まりする。

価格が止まっても、値上は行わないと事業の黒字化はできない。

第一、食材の価格は「値下がり要因がゼロ」なのに下がることはない


従って、FLコスト率のうちの「食材費」の相棒の「人件費」が
20%目安で推移しないといけないのです。
さらに、
水光費の値上げや社会保険料負担、コロナ過借入過重負担などを
支払うために、

人件費比率を引き下げるための対策として、
このシリーズの1~4をご覧ください!


来年の改革はもう今から少しづつ始めましょう。
勝つためには、早期着手が有利です。

(了)

よろしければご覧ください。 宇津宮 正博




飲食コンサルタント業30年の経験を通じてお知らせしたいこと、感じたこと、知っていること、専門的なことを投稿しています。 ご覧になった方のヒントになったり、少しでも元気を感じて今日一日幸せに過ごせたらいいなと思います!よろしければサポート・サークル参加よろしくお願いします