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脱法トランプ

小学生は自由度が低い。責任を持てないからとかめんどくさい問題が起きないようにとかまぁ色々あるのかもしれないが、とにかく小学校では色んな規則に縛られていた気がする。

その中には変な規則もある。その1つがトランプ禁止のルールだ(私の小学校だけかもしれない)。トランプがあったら休み時間に外で運動しなくなるからとかそんな理由なのかもしれないがとにかくトランプを持ってきた児童が没収されている場面に何回か遭遇した事がある。

けれど、私に関して言えばそもそもトランプがなくても20分そこらの休み時間にわざわざ外で遊ぶ気力なんて持ち合わせていないので本当に意味が分からないルールだと感じていた。そういう訳で、インドア派を極めていた当時の私にとってのトランプは、一般大学生にとっての飲み会くらい重要なものであったと言っても過言ではない。

しかし、ある時私はルールの抜け穴を見つけた。それはトランプを持ってくると没収されるという点にある。「持ってきちゃダメなら作ればいいじゃん!」という究極の屁理屈で私は自由帳を取りだした。良い言い方をすればHUNTER × HUNTERのゴンみたいな柔軟な発想だとも言える。そういう訳で自由帳を切って54枚の紙切れをつくり、そこに数字と絵を書いた。これはあくまでも“自由帳”である。『脱法トランプ』の誕生だ。

 余談だが、私は抜け穴を見つけがちだ。例えば高校の時、カーディガンの色は黒・白・灰・茶・紺の5色しか認められていなかったのだが、私は紺と青の明確な区別はないよなあという屁理屈主張のもと、「紺です!」って言いながらほぼほぼ青のカーディガンを着ていた。ちなみに今だから言うが、あれは買う時に商品名が書かれたタグに『青』って書いてあったくらいには青でした。

とにかく、制限された中でどうにか穴を見つけて楽しむのは本当に楽しい。脱法トランプをして遊んでいるとき、「今私たちは普通なら禁止されているはずの遊びをしているのだ……!」という背徳感も相まって普通のトランプの2倍楽しかった気がする。そしてこの脱法トランプは段々と流行り始める。2人で作った脱法トランプだったが気づけば皆で何度も何度も遊んでいた。

しかし、脱法トランプには大きな欠点があった。それは『手作りすぎる』という事だ。人間なので全く同じには作れないし使えば使うほどヘタったりする。そのため何度もやってるとそのカードのちょっとした見た目の特徴でどれがどのカードか分かってしまうようになるのだ。特にジョーカーなんて2枚しかないからすぐ特徴を覚えてしまう。そうなるとババ抜きは全然楽しくない。ダウトもアウトだ。大富豪はギリ楽しい。流行り始めて何日か経った時には欠点があんまり関係ないという点でスピードばかりやっていたと思う。

そんなこんなで脱法トランプの楽しさに限界が見え始めた頃、あまりに流行りすぎたのか普通に先生に没収された。用意してた「これは自由帳です!」の主張も普通に通じなかった。私はこの時、人生で初めて世の中の理不尽さを知った気がする。製作から没収まで多分1ヶ月もなかったと思う。けど抜け穴を見つけて学校でトランプが出来たあの瞬間は本当に楽しかったな〜と思う。

ちなみにこの没収騒動後、今度は自由帳でオリジナルすごろくを作って人生ゲームを始めることになるのであった、、


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