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3
1話完結
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脚光人生

〈誕生〉
この日だけは生まれないで
流産の可能性もあった命は予定日よりだいぶ早く生まれそうであった
父が出張で不在、立ち会えないその日、親族一同の祈りを無惨に断ち切り、わざわざ未熟児として誕生させていただいた

〈持久走大会〉
小学2年、体も小さく特段運動が得意ではないため、大会のルートを自転車を漕ぎながらついてくる母と共に毎日走る練習
当日はクラスの女子で2位
頑張ると結果がついてくるらしい

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ある人

ある人は、高いところが苦手でした。
階段を上ることさえ怖いのです。
だからお部屋は、一階のお部屋にしました。
そうして、しばらくして引っ越していきました。

ある人は、人付き合いが苦手でした。
友達と呼べる人は、一人もいませんでした。
一階に住み始めてからまもなく、壁の隙間から、小さな虫が顔を出しました。
ある人に、はじめて友達ができました。
そしてまた、しばらくして引っ越していきました。

ある

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インフェルノ

人が地獄に行きたくないと感じるのは、既に地獄にいるからである。
生まれたことで、命という業火に焼かれることになる。
初めてこの世が強く地獄であると感じたのは高校2年。
初めてできた他校の彼氏が3か月で音信不通になり、吹奏楽部の親友とは喧嘩になりほぼ絶縁状態、家族はわたし以外運動部家系で、両親と同じ運動部だった弟の活躍に熱心だった。
当時のわたしは居場所のなさのそのあまりにも地獄の様に、毎日風呂で泣

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