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【ショートショート】植物との愉怪な会話
天才発明家Aは植物と会話できる翻訳機を開発することに成功した。
Google翻訳を少しチューニングすれば容易に実現できる技術で、発明家Aは誰も気付かなかった着目点に気付いた自分の視点に興奮していた。
発明家Aはこの技術で億万長者になろうと考え、手始めに有名になるべく、発明したその日のうちにテレビ局へ売り込みに行った。
発明家Aと話をしたテレビプロデューサーBはこの技術を大いに面白がった。
これは視聴率を狙えるぞと考えたテレビプロデューサーBはその日のうちに、発明家AとAの家にある植物との会話の特番1時間番組を企画した。
プロデューサーBはこの目玉企画を業界で話題にすべく、友人知人の著名人に声をかけ、収録に呼ぶことにした。
そして、迎えた収録の時。
ついに世界初の植物との会話の瞬間が訪れた。
発明家Aが家から持ってきたサボテンの第一声は
「こいつ、夜中に裸になってお酒を飲みながら赤ちゃん声で徘徊するから気持ち悪くて困ってるんだよ」
サボテンがしゃべりだしたのは、発明家Aの恥ずかしい夜の奇行だった。
発明家Aの顔は羞恥心によって真っ赤になり、社会的に信用を失ってしまうとの絶望からついには真っ青に変わっていった。
しかし、まずいと思ったのは発明家Aだけではなかった。業界の著名人たちは発明家Aと同じく植物によって自分の後ろめたい行動が世にばれることを恐れた。
その結果、放送はもちろんされることはなく、同じリスクを恐れた著名人たちは、その権力でこの技術を封印し、かん口令が敷かれた。
簡単な技術がこの世で実用化されていないのには訳があるものだ。関係者がこの世からいなくなるまで植物との翻訳技術は再び開発されることはないだろう。
(了)
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