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コクーン・コンプレックス

梅雨入りもとっくに始まったので、最近は雨の日が多い。

私は雨の日が苦手だ。お出掛けも傘をささないといけないし、洋服も濡れるし、何より髪の毛がうねるうねる。元々くせっ毛なので毎日せっせとヘアアイロンでまっすぐにしてるのだが、雨の日だと外に出てものの5分で元に戻る。うねうねに戻った前髪を触りながら、はぁーーーと深いため息をつくまでが雨の日のローテーションだ。

ならなぜ『雨の日が嫌い』ではなく『雨の日が苦手』と書いたのかというと、私は『雨の日が苦手であるが、同時に雨の日が好き』でもあるからだ。

雨の日の良さに気づいたのは大人になってからだった。

学生時代も終わり、社会に出て私は『大人の世界』というものを知った。矛盾した要求をされたり、どう考えても相手が間違っていたりするのに、それに目を瞑らなければならない事を始めて知った。白は白だと言ってはいけない事があるんだと。

毎日がそんなカルチャーショックの連続で私は身体も心もくしゃくしゃになっていた。

ある日、天気の急変で雷雨に打たれながら帰り道を歩いていると、とめどなく涙が溢れてきた。やるせない、どこにもぶつけようのない気持ちを雨が洗い流してくれているように感じた。身体全体を雨がくるっと包み込んでくれてるような、そんな感覚だった。身体は冷えきってしまったけど、心はずっと温かかった。

結局そのあと風邪をひいてしまったのだが、あの雨に包み込まれたような感覚は今でも忘れていない。

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時に、身体を丸めて羊水に包み込まれた格好になっているのはきっとそれが一番生物として落ち着く姿なのかもしれない。

コクーン・コンプレックス

そんな言葉は存在しないのだけど、私は何かに包まれているようなものに弱い。こたつの中だったり布団の中だったりテントの中だったり。そこでゴロゴロするのが最上の幸せなのだが、雨の日は部屋から雨が降るのを眺めるだけで、部屋全体がコクーンとなって雨に包まれているようなこの上ない幸せを感じるのだ。



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