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息子と母の壁

 夏休み中で、のんきにしている大学生の次男が、午後の珈琲☕️を入れました。就職の話でも聞こうと、声をかけました。
「ちょっと、ゆっくり話を聞かせて。」
母に捕まり、諦めのまなざしでソファーに座りました。

 就職の話を始めると、興味ある分野の話が、いつの間にかゲーム🎮の話になりました。分からないことを分からない言葉で語る様子をみて、つくづく母親の知らない世界を好んで進んでいるのだと感じました。


バカの壁

 約20年前の話です。もうすぐ出産予定日という日、
「生まれたらしばらくは外食できないね。」
と近所の洋食店へランチ🍽に行きました。食事中にチクっと痛みがあり、陣痛が始まるかもしれないと感じました。ゆっくり食後の☕️🍰も味わってから、産院へと🚙で向かい、👜の中に『バカの壁』を入れていました。

 当時は、母親👵に泊まりに来てもらって、上の子👦の世話をお願いしていました。初めての時とは違って妙に落ち着いていました。陣痛の間隔が短くなるまで待ち時間が長いだろうと予想して、本を何冊📚か持って行きました。その中の一冊が『バカの壁』で、この本は私の出産の思い出です☺️


「話せば分かる」なんて大うそ。見えない壁が分かると世の中が見えてくる。 
本の帯には、見えない壁があると書いてありました。

養老孟司 『バカの壁』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

ハハの壁

 ベッドで横になり、陣痛をこらえながら本を読んでいる様子を見て看護士さんは、
「あまり痛みは感じないタイプですか?」
と聞かれました。私なりに耐えているつもりでした😆
「それぐらいの痛みで産めるなんて楽でいいですね。」
と言われ、愛想笑いをしながらも、さすがにムッとしました。微弱陣痛が続くのですが、本当に痛い時は、本なんて読めませんから😭
「痛いー痛いー。」
と叫ぶ人もいれば、奥歯をかみしめている人もいるのです。

 陣痛に耐えながら?読んでいて気づいたことがありました。ミステリー好きには納得のいく内容でした。
 それは、一回読んだらもう二度と読む前の自分には戻れないということです。もう二度とあの衝撃を同じように感じることはできない。読む前と読んだ後では違う人間になったと考えられるという文章を読みながら、
「まさに出産がそうじゃない!」
と思っていました。

 初めての出産は、なるほど衝撃的でした。出産後しばらくは、すべての過程がスローモーションで、頭の中で繰り返し何度も再生されました。ほとんど寝ていない次の日の朝、昨日とは違う自分になっていると感じました。


壁のない、空は広がって。


「バカと賢い人には壁がある」
 賢い人とバカの人の決定的な違いは
 自分の知らない世界を
 知ろうとするかどうかです。
バカの壁

 そして現在、母(私)は、バカの壁を感じています。子どもとの関係は良好だけれど、幼い頃の子どもに感じていた太いパイプのようなつながりが、どんどん細くなりました。子どもの生活すべてが見えていたのに😢

 息子の世界を知りたいし話したい。けれど、息子は母に分かってほしいとは思っていません。寂しいけれど、互いに十分理解し合えるほど話す時間は少なくなりました。

 就職の話から、インターシップでお世話になった建設会社のことや、社会人として必要なマナーについて話していた時のことです。

ゲームの「バッドマナー」について、話が及びました。「死体打ち」というそうで、相手が倒れた後も、打ち続けることです。ゲームの好きな方はご存知だと思うのですが、私は全く知らない言葉でした。

 それは世界大会でも、一部の人ですが、行われているそうです。話を聞くと、ルール上の違法行為ではなく倫理的な面での「バッドマナー」だそうです。ゲームとはいえ、ちょっと悲しい😢嫌な気持ちになりました。

「もちろん、やらないよ。」
と本人はいうので、その行為を否定的に捉えていると思ったら、文化としてみている(容認している)とのことでした。私の感じ方とはずいぶん開きがあります。

ヒトの壁

養老孟司 『ヒトの壁』 | 新潮社 (shinchosha.co.jp)

 進化はしょうがない。なるべくしてなる。変わるべくして変わる。

ヒトの壁

 先日、会議の時間が長引くことについて、改善策を検討しました。働き方改革の一環で、前提が労働時間短縮です。そうなると、短い会議が良いという流れにあえて疑問を呈することができませんでした。短い会議は、討議の時間ではなく報告会になってしまいがちです。もともと多様な意見が出ることを嫌がる雰囲気があるので、結局発言できませんでした。

 時間を守ることは大切です。しかし、時間をかけてでも理解を得る必要がある事案については、協議を重ねたいです。もちろん、時間をかけて話し合っても、全員が分かり合えるわけではありません。

 子どもとの間にも、分かり合えない事柄が横たわっているのに、会社の人に上手く伝えられないかもと不安になりました😢 

「話せば分かる」なんて大うそ。(バカの壁より)
だそうですから。


『ヒトの壁』に戻ります。
なせばなる日本の章では、
「会議が長くて何がいけないのか。」

という小見出しがあり、そこには日本の傾向として、
①全員の意見が一致していればよしとすること、
②ルールを逸脱する存在を認めたがらないことが挙がっていました。

だから意見が出せないのですね。逸脱する勇気のない私は、言えませんでした。


翻って我が家では、
息子がはっきり母に言えないのは、母が①②を重視しているといると肌で感じているからなのですね。
母の壁を壊さないと。


最後に85歳の養老孟司さんが、愛猫まるの死への思いを綴っておられました。

まるを見ていると、なぜ人間はそんなに必死になって働くんだろうと考えてしまう。まるは何もする気がないけれど、あれでもいいんだ、人間ってばかだな、まるみたいにして十分、暮らせるのに。
ヒトの壁

そうなのかなぁ?私も必死なんだなぁ。

息子と母の関係も、
これでいいのかなぁ?


☆夜中です。しかし今、ゲーム🎮世界大会をしているそうです。プロゲーマーたちが対戦している様子を、観戦している息子に聞きました🤣

まだまだ、親子の壁が万里の長城のように聳え立っています☺️

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