水を縫う(寺地はるな)
相互フォローをさせていただいている方のオススメ本として紹介されていたので手に取りました。
結論=とてもいい小説です。家族のありかた、考えさせられ、少しうるっときます。
最初のほうで、縫製のことが出てきます。正直言って私にはまったくもって縁遠い世界なので、この段階で読むのをやめそうになってしまいましたが、辛抱して読み進めて良かったです。
あらすじ=弟が、姉のドレスをつくる。それにまつわるそれぞれの思いと物語が綴られています。
共感したところはたくさんありますが、とくにこの二つ。
私もそうでした。無理やりつるんでいた感覚が、いつの時代もありました。が、そういう感覚をここまでちゃんと言語化できていなかったです。
「弟」についておばあちゃんが、お母さんに向かって話している場面です。自由にさせるおばあちゃんと、子どもに対していろいろ気になって先回りしてしまう傾向のあるお母さん。その対比は、まるで我が家を見ているようです。
「雨に濡れたっていいじゃん」→「風邪ひいたら困る」→「そんなんで風邪ひかんよ」→「絶対風邪ひかんって言い切れるか?」→「風邪ひいたっていいじゃん」→「看病するのは誰だ? あんたが会社を休んで看病してくれるのか?」
返す言葉が思い浮かびません。
とはいえ子どもはけっこうカッパを忘れ、濡れて帰宅することも多く、でもそれで風邪を引くことはありません(笑)。健康な子です。
ジェンダー的なテーマも出てくるのですが、そちらも皆が考えるテーマです。とくにおばあちゃんの章は、そうだったのだろうな、と思わされました。
世代間の微妙な差を的確に表現されていて、すごい作品だと思いました。
至ってごく普通のサラリーマンのつもりですが少し変わった体験もしています。