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映画へGO!「あの人が消えた」

(※多少のネタバレあります)
いろいろな要素がうまくブレンドされ、不思議な魅力に溢れる作品。
そしてなんとも言えない、でもハッピーな気持ちで映画館を後にできました。
あまり前情報なく観に行ったのですが、展開としては以下の通りです。

丁寧に作られたサスペンスのような、ホラーのような、そんなミステリアスなタッチではじまり、ドキドキ・ザワザワした気持ちが続いて緊張感が高まります。
が、少~しづつ「・・ん?」というような、なんだかユーモラスなシーンがちょいちょい差し込まれ出し、気づけばそれがどんどん大きく全体に浸食。前半のシリアスなトーンとはずいぶん印象が変化していることに気づきます。
さらには、最終章でいろいろな伏線が、まるでオセロのように一気にテンポよく回収され、「なるほど!」と思いきや、そこからの大どんでん返し。
・・・からのちょっとホロっとするシーンに着地するかと思いきや、最後の最後には、ファンタジックなエンディングで、うまく気持ちの置き所も見つけられる。。

みたいな、予想のつかない展開力の激しさに振り回されながら、でも心地よい映画体験に浸れました。
本作品観てないと何のことやらわからないかもしれませんが、つまり楽しかった!

思うにいい映画というのは、悲劇であり喜劇でもあるとか、サスペンスの中にも素敵なラブロマンスが溶け込んでいるとか、リアルとファンタジーの絶妙な交差があったりとか、例えばそのような、一言では片付けられない、感覚に奥行きのあるものかもしれないと気持ちを馳せたのでした。

テレビ局が製作する映画あるあるとしては、テレビドラマっぽい作りになり過ぎて、演出の余白や余韻が無くなったり、表現の幅や起伏が足りずに単調に感じたりすることが時々ありますが、本作品にはそのような感覚はなく、むしろ光や音の繊細さは際立ち、画面の構成の変化も適切。そして台詞の間やテンポも絶妙。他では味わえない約2時間のエンターテイメントの旅にうまく連れて行ってもらえました。

併せてキャスティングも良かったと思います。
主役の丸子を演じた高橋文哉さんは、「ブルーピリオド」で初めて認識し、注目していたのですが、誠実な役柄での切ないムードをうまく出しながら、キャラクターに入り込んでいました。
相手役の北香那さんはチャーミングなだけでなく、求められる2つの役柄のキャラクター造形をきっちり表現できています。
そしてベテラン陣においても、染谷将太さんは相変わらず印象に残る爪跡を残してくれてますし、坂井真紀さんや菊地凛子さんもツボを押さえつつ、抑えたトーンながらクセのある存在感で映画全体の格調を引き締め、支えてくれています。
中村倫也さんは、普段の微妙な2枚目役での目立たせ方より、今回のような人知れない変質者的な役の方がはまるのでは?と思いました。

そして何よりの田中圭さん。映画としての進行を司る役割を担いながら、やり過ぎ感がなく、ラストの2つの設定での同じシーンの演じ分けもお見事です。見直しました。

今回、マンガや小説などの原作があるわけではなく、オリジナルの脚本・作品だそうです。
なんか、原作があることで、世界観を守ろうとするがあまり窮屈になるような表現の呪縛もなく、のびのびと監督のひらめきとセンスをフル稼働させて、楽しんで作れていたのではないでしょうか?

個人的評価:★★★☆☆
梅沢富美男さんのくだりが少々くどかったですが、目をつぶりましょう!



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