サミー渡邉

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最近の記事

「面構 片岡球子展 たちむかう絵画」(そごう美術館・神奈川県横浜市)に行ってきた

正直に言うと片岡球子という人が日本画家だと知らなかったので、最初に見た時は現代アートの人だと思っていた。 (その最初も2022年に配布されたそごう美術館のチラシである) とはいえ平成までしっかり活動し、2008年に亡くなった人なので、現代(の)アーティストと呼んでも失礼には当たらないかもしれない。 片岡球子(1905-2008)は愛知県立芸術大学の日本画家主任教授も務めた正真正銘日本画の人だが、きっぱりした太い線と鮮やかな色彩を使って顔の皺までくっきりと描かれる巨大な人物画

    • ブラインドブック体験記 in PASSAGE

      これは初めて挑戦したブラインドブックで盛大につまづいた私が再挑戦した、当事者にとってのみ重大な事件の記録である。 ブラインドブックとは本を提供する側が著者やタイトルなどを隠し、わずかなヒントから読み手に選んでもらうスタイルがブラインドブックだ。 ヒントは本文の抜粋もあれば「SF好きにおすすめ」「とにかく笑いたい人向け」のようにジャンルや雰囲気重視のものもある。 「自分で選ぶと同じ作者や似たジャンルになってしまうから他人のおすすめが知りたい」という本好きはもちろん、あまり本

      • ピーターラビットの新旧訳を読み比べてみたら

        新旧のピーターラビットシリーズを読み比べては、ちょっとした違いを見つけては面白がっている。 同じ話とはいってもやはり時代に合わせた変化があるようだ。 石井桃子さんの旧訳がほとんどの場面で「です・でした」という調子なのに対して、川上未映子さんの新訳はキャラクターの視点で話しているような感情的な語りや体言止めがちょいちょい顔を出すのが面白い。 作者のビアトリクス・ポターさんから「こんな事があったんですって」と語り聞かせてもらう雰囲気だった旧訳に比べると、新訳はキャラクターとの距

        • 神保町SANKOUEN(三幸園)でジャージャー麺を

          古本棚ぼろぼろ店主、搬入初日に食い意地に負ける今だから言える話をしよう。 神保町の共同書店PASSAGE by ALL REVIEWSの棚主は、自分の棚に書籍を搬入する際、直接持ち込むか郵送かを選ぶことができる。 持ち込みの場合はあらかじめネットで時間を予約して商品を持っていくのだが、私は初めての搬日にSANKOUENのジャージャー麵セットがどうしても食べたくなって、危うく予約した時間に遅れそうになった。 PASSAGEの搬入時間はそれほど厳密なものではなく、予約した時間の

        「面構 片岡球子展 たちむかう絵画」(そごう美術館・神奈川県横浜市)に行ってきた

          アイデアマンになりたくて(読書記録)

          書籍 vs ジャポニカ学習帳図書館で借りた本のコラムに、こんなことが書いてあった。 反射的に「それは違うでしょ…」と思ったのは、小学生の時に持っていたジャポニカ学習帳のコラムに「色鉛筆の芯は普通の鉛筆よりも軟らかいため、木の厚みが均等な丸い軸にすることで保護している」という内容が書いてあったのを覚えていたからである。 うっかり鉛筆削り器で削ると芯が中折れしてすっぽ抜ける(電動ならほぼ確実に、手回しでも5~6割の確率で…)色鉛筆の軟らかさを実地で知っていたこともあり、ジャポニ

          アイデアマンになりたくて(読書記録)

          AIは人間から「奪う」のか? ―『僕とアリスの夏物語 人工知能の、その先へ』(谷口忠大著。岩波化学ライブラリー、2022)

          人工知能(AI)とひと夏の青春物語舞台は今よりAI技術が発達した近未来の街。 自宅に引きこもっている少年のもとに、謎の美少女がやってくる。 何か秘密があるらしい少女に振り回される少年。 幼馴染の少女やライバルの同級生なども登場する、ひと夏の成長物語… こんな青春小説と、現役の情報工学者による「本気のAI解説」が同時進行するのが『僕とアリスの夏物語』だ。 それぞれの章が小説パートと解説パートに分かれていて、小説と人工知能(AI)入門書のどちらとしても読めるようになっている。

          AIは人間から「奪う」のか? ―『僕とアリスの夏物語 人工知能の、その先へ』(谷口忠大著。岩波化学ライブラリー、2022)

          上か下か問題 ― 古本棚ぼろぼろはかなり水際

          上は絶対選べないPASSAGE(正確には PASSAGE ALL REVIEWS)は、棚主が本棚のスペースを借りて商品を置くシステムだ。 月ごとの店賃(棚賃?)は場所によって変わり、来店したお客さんの目につきやすい中段の棚は当然お高め。逆に一番上や一番下はあまり人目につかないために比較的安価。 私が入居を決めた時、中段の一等地はほとんど埋まっていた。 オープンから数か月が過ぎていたのだから、空きがあったのがラッキーと言える。 …認めたくないが、コロナの影響もあったかもしれな

          上か下か問題 ― 古本棚ぼろぼろはかなり水際

          ピーターラビットの出版120周年に、ベンジャミン・バニーと握手を

          新訳の刊行を期に「ピーターラビット」シリーズを読み返す2022年は、イギリスでピーター・ラビットの絵本が出版されてから120年目にあたる。 それを記念して日本でも「出版120周年 ピーターラビット展」が東京・大阪・静岡に巡回し(私は東京展に行きそびれ、遠征するか悩んでいる)、さらにシリーズ全23巻(童話21冊、詩集2冊)が川上未映子さんの新訳も早川書房より刊行予定だ。 だいぶ長いこと手に取ってもいなかったが、私もピーターとうさこちゃん(ミッフィーのこと。私の世代はそう呼んで

          ピーターラビットの出版120周年に、ベンジャミン・バニーと握手を

          ツイッターで「いいね」したら古本屋になった話 ― 古本棚ぼろぼろ開店の顛末

          共同書店PASSAGEとの出会い 不思議なことが起きて、古本屋を始めることになった。 私の世代はほぼ例外なく「その時不思議な事が起こった」とさえ言っておけば何があっても納得してもらえるだろうと思っている。多分。 (2022年秋には大人用にリメイクされた「仮面ライダーBLACK SUN」が配信されるそうだ) きっかけは、ツイッターのタイムラインに何やらインパクトのある表紙の本が流れてきたのを見て「いいね」を押したことで、調べてみたらその呟きの主が神保町の共同書店PASSAGE

          ツイッターで「いいね」したら古本屋になった話 ― 古本棚ぼろぼろ開店の顛末

          『桃尻娘』を読まなかった話(ほぼ日の学校)

          2020年のほぼ日の学校「橋本治をリシャッフルする」に参加するまで橋本治がどんな人か知らなかった私でも『桃尻娘』という本があることくらいは知っていた。 「桃尻」という語感から想像するに、何かイキのいい若い娘が出てくるちょっとエッチな話なんだろう…くらいの認識で、今思うとそれほど間違っていない気がする。橋本治の命名センスの賜物だろう。 この『桃尻娘』が小説家・橋本治のデビュー作だと知ったのも、講座に通うようになってからだ。 橋本治の著作は数が多い上に分野が広い。 近くの図書館

          『桃尻娘』を読まなかった話(ほぼ日の学校)