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家庭科アイデアnote :在職中の実践記録&家庭科関連情報

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灘中学高校をはじめ関西の私学での家庭科の授業や実習の実践記録と学校や探究に特化したフリースクールでのインターンの経験談などをまとめています。
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記事一覧

本でたどる家庭科の進化:激変する時代に合わせた自分らしいライフスタイル作りを考えよう

1 はじめに「これ、本当に家庭科?」在職中、生徒達からこんな声を聞くたびにやれやれと思ったものでした。 家庭科という教科は「お料理と裁縫」「良妻賢母の育成」そんなイメージがつきまとうようで、中高生の中にも女子のための生活技術や知識を身に付ける科目というイメージを持つ生徒達がいたからです。 家庭科は男女共修になってから扱う内容を大きく変え、今では共修以前とはかなり変化しています。それなのに大部分の人のイメージは変わらないまま。それをとてももったいないと感じて来ました。 な

探究におすすめの思考法:視点やまとめ方のアイデア

1 はじめに① 探究学習の導入 「この子達にとって一体どんな授業が将来役に立つのだろう?」超進学校の男子校で家庭科を受け持っていた時にずっと考えていた課題です。受験科目でない家庭科は生徒達の関心が低く、加えて生活経験も乏しい生徒達にとっては面白さを感じる要素が少ない科目でした。 「これかもしれない!」一つの大きな転機となったのは〈アクティブラーニング〉という言葉を初めて聞いた時です。"生徒参加型授業”という内容に惹かれ授業に取り入れる事を決めました。 最初に導入したのは

「もっと」と時間の不思議な関係   ~グループワークから見えた景色~

「はっ 」と息を飲む瞬間。生徒の顔つきが一瞬にして、まるで違ったものになる。 「これだ!」 何かの確信、あるいは、手応えをその手に掴んだ! 達成感の証! グループワークを授業に取り入れるとそんな場面に出くわす時がある。 心の中で、一人小さくガッツポーズをする。グループワークを授業に組み込むかどうか、いつも迷う。中途半端に取り入れると遊ぶ生徒が増えるから。でも、一人でも何かに気づき、それがその子の成長につながるなら、こんなにうれしい事はない。 ただ、大抵の場合、グルー

大事な時期に何も出来なかった情けない自分への懺悔とこれからの事

「とにかく何かをしなければ! 」一か月前に突然の休校措置が決まった時、これは自宅で過ごす時間が増える生徒達が、家庭で生活経験をつみ生活面で自立していく絶好の機会になるかもしれない! そう思い、家庭科担当の自分に出来る事を必死で考えた事を思い出します。 事態がこんなに悪化して、社会が、これほど閉鎖される事になるなど考えもしないで…。 生徒が一人で作れる火や包丁を使わない料理の動画配信? マスクの作り方の動画配信? 洗濯の仕方や掃除の仕方のヒント? 家庭科の領域は衣食住

本から考えてみた未来のお金と暮し 「ビットコインはチグリス川を漂う」

1 本との出会いと背景ぱっと目につくオレンジの蛍光色。タイトルが心にひっかかる。さらに副題に興味がわいている。でも、部厚すぎる。2学期の家庭科のパーソナルファイナンスの授業で使えるように、せめてマネーの新常識(って言っていいのか分からないけど)の概要を知る事が出来ればと思い読み始めた。 さっき、4-6月期の実質GDPが戦後最大の落ち込みであると報道された。コロナ禍での景気悪化、倒産件数の増加(秋以降、もっとひどくなると言われている)、雇用状況の悪化、どれをとっても不安材料ば

子どもの未来を拓く”学びのタネ”を信じる勇気:変わる学校での取り組みで感じた事

1 はじめに 「今の子ども達が、これほどの可能性を持っているなんて!」学校での実践内容を読んで思わず涙ぐんでしまう程、胸があつくなったのは久しぶりの事でした。 タイトルにも載せた「RITA」という冊子の15号では、私自身が灘中で取り組んでいた家庭科での”探究学習”の内容も最終ページに掲載していただいています。その関係で冊子をいただいたのですが、そこに載っていた他の高校の取り組みがあまりにすごい内容でショックを受けました。 (内容は全てこちらから、ご覧いただけます。)

ライフスキルを磨くための料理へのアプローチ

「どのやり方でいこう? 」 家庭科の調理実習は 生徒達がとても 楽しみにしてくれる時間の ひとつです。 でも、調理実習の説明を どうするかは いつも迷います。 なぜなら料理は、 どんなアプローチも可能な マルチプレーヤー的な分野 だからです。 食材一つとっても 生産のプロセスから 旬の話に安全性、 流通の実態、 消費者としての見分け方や 判断基準の持ち方、 家計の中でのバランス、 さらには、保存法や 廃棄率の捨て方まで 広範囲になります。 さらに調理では 食材の扱い方、

「何のための10代?」今を生きる子ども達の”モチベーション”と大人の関わり

1 子ども達のモチベーション「先生、やりたい事は何もありません。」 高1の最初の家庭科の授業で高校生活でやりたい事や目標などを考える課題を出した時、生徒が言った言葉です。その子だけではなく他のクラスでも同じ事を聞き、ショックを受けた事が昨日の事のようによみがえります。 高校時代は社会に出て自立するための準備期間。生徒それぞれに将来進みたい道は違っていても「何らかのモチベーションを持ち高校に進学し、これから始まる高校生活への期待に胸を膨らませているはず🎵」という期待が大きく

自分が一番見下していた”私の仕事”:進学校の家庭科講師がたどりついた天職

1 豆腐が導いた家庭科の世界「誰か、お豆腐屋さんで”にがり”を もらって来てくれる? 次の実習で豆腐作りをするから必要なの」 中学の時の家庭科の先生の この一言が私の人生を変えた。 調理実習は生徒達の自主性に任せて 先生自身はちょっと高度なモノを作って 生徒達に試食させてくれる。 被服実習は中学生では扱いずらい ニットの糸と伸縮性の大きい生地で Tシャツを作らせる。 今考えると、 その先生の家庭科の指導は 通常の実習からは大きくずれていた。 それでも、 私にとっては魔法の

中学生と考えた”子供にとって遊びとは”:マインドマップ活用事例〈家庭科〉

1 マインドマップの導入を決めた背景「アイデア出すの難しい!  本当に発想力ないわ…。」 生徒達がよく言っていた事です。 当時は、 家庭科の授業でも 知識の詰め込み中心から グループごとに付せん等を使って アイデアを出し合い、 課題に取り組ませる形式を 取り入れ始めた頃でした。 「きっと、 とんでもないアイデアが出てくるはず!」 若い彼らの柔軟な頭の中は アイデアの宝庫と信じて 疑わなかったのですが、 現実はそうは行きませんでした。 公立から私学に勤務先を変えて 気が付

子供達に知って欲しいアニマルウエルフェア:セミナーで知った現状と授業

1 知らなすぎる子供達 ~昔の記憶から~「どうしよう。怖くて入れない。」 九州の山奥で育った私にとって 家畜がいる暮しは 当たり前のものでした。 ただ、親から用事を頼まれた時に 一軒だけどうしても 行けない家がありました。 玄関の前で 大きな牛を飼っていた家です。 小学生の私よりはるかに大きく しっぽを振り回す牛は 今にも襲ってくるかもしれな 恐ろしい生き物に見えました。 小学校の通学路には 鶏をさばく場所があり 皮をはがれた鶏が ぶら下がっているのを 見ながらの登下校だっ

プラスチックごみとのディスタンス:見ようとしないと見えない暮しの景色

「こんな事になっていたなんて…。」 「ここまでひどい事態なの!!」 どこかで聞いた事はあっても 情報として何となく知っていても 他人事としか思えなくて 向き合って来なかったプラスチックごみ問題。 ここでは年末年始にオンラインで受けた 講演やセミナーで見聞きした事のシェアや これからの暮らし方などについて まとめてみました。 1 プラスチックごみってどうなってるの?海洋プラスチックごみも含め、 これまでに受けた講演やセミナーは3つ。 ・勤務先の学校での外部講師による講演 ・”

「問いのデザイン」から”場”の創り方を考える

1 ワークショップという魔法の場初めて”ワークショップ”という言葉を聞いた時、その楽しそうな響きに心が躍りました。皆さんが初めてこの言葉と出会ったのはいつでしょう? 私自身、最初に参加したワークショップがいつだったか、どの内容だったか思い出せないほど、いろいろなものに参加し参加者として様々な経験を積ませてもらいました。それは「家庭科の授業に取り入れたい!」と心から思ったからです。 今ほど、”アクティブ・ラーニング”や”主体的で対話的な深い学び”などは言われてなかった時代で

夏休みの自由研究等にも 使える食品の着色実験 昔、職場でやった取り組みを インスタでまとめたので こちらでもシェア ↓ https://www.instagram.com/p/CSwX_ZdpmmH/?utm_medium=copy_link おうちでも出来る簡単な実験で お子さんの科学への興味が 広がるかもしれません。 キッチンサイエンスはおすすめ