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「問いのデザイン」から”場”の創り方を考える

1 ワークショップという魔法の場

初めて”ワークショップ”という言葉を聞いた時、その楽しそうな響きに心が躍りました。皆さんが初めてこの言葉と出会ったのはいつでしょう?

私自身、最初に参加したワークショップがいつだったか、どの内容だったか思い出せないほど、いろいろなものに参加し参加者として様々な経験を積ませてもらいました。それは「家庭科の授業に取り入れたい!」と心から思ったからです。

今ほど、”アクティブ・ラーニング”や”主体的で対話的な深い学び”などは言われてなかった時代です。当時、私が講師で行かせてもらっていた学校では本当は実習中心の科目であるはずの家庭科の授業は時間数や設備などの問題で座学が中心になっていました。知識だけを詰め込んでも意味がないと思っていた時に出会った”ワークショップ”は、ものすごい可能性を秘めたものに思えたのです。

そして気づきました。参加するワークショップによって自分自身の学びというかテーマへの理解の深まり方が全然違う事にです。皆さんはどうですか?何かのワークショップ、或いは受講生参加型の講座や研修、セミナーなどの”場”に参加した事はありますか? そこでの進行の仕方いわゆるファシリテーションを参加者の立場で経験した事がありますか? そこで感じた事はどんな事でしたか? 

私が強く感じたのは場をまわすファシリテーターのやり方次第で、その場で生み出されるものは全く違ってくるという事でした。

場で生み出される成果あるいは課題解決策が参加者やファシリテーションによって別物になるという不思議さ。参加者のつながりや学びや理解の深さ、場への貢献や集中度合いも変わってしまうという怖さ。いろいろな意味でワークショップは私にとって魔法の場となりました。

2 プロとアマの”問い”の違い

参加しているだけの時と自分がメインで場を創るのは全く別物なんだと痛感したのは、初めて中学生にグループワークを取り入れた時です。学校では、ワークショップという言葉は使わず、グループでのテーマ学習として取り入れようと意気揚々と準備したのを覚えています。

皆さんはそんな経験ありませんか? 自分にも簡単に出来そうだと思っていた事が全くうまく行かなくて頭を抱えてしまった事は? そう、私も同じ経験をしました。

全てが自分目線で教師の感覚でテーマを設定し、問いを作り、それを調べさせたのですが結果は散々でした。いや、結果だけではなく学習途中の調べている子供達の様子もです。無理やりやらされている感じが満載でした。

これは何とか手を打たねばと、ファシリテーターについて勉強出来そうな講座などの片っ端から参加し始めたのが、この頃です。そこでファシリテーターのプロに出会い、問いの大切さを教わりました。まさに救世主!

有料でしたが、その方にテーマ学習の問いを作ってもらい実感したんです。センスの違いを…。私の固い常識にとらわれた頭では絶対に出て来ない質問の数々でした。惨敗…。

皆さんはそんな思いをした事はありますか? 圧倒的な違いを見せつけられた瞬間。それは私にとって強烈な思い出となりました。

その時に少しだけヒントをいただいたのが、子供達によって興味がある領域が違うから万遍なく問いを作るという方法でした。そのヒントになるのが画像の本。多重知能の8つの分類です。自分本位の問いかけにならないようにするアドバイスはもらえたものの、問い作りに対して強いコンプレックスを持ってしまうようになったのは、この頃からでした。

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3 問いのセンスの必要性

コンプレックスを抱えながらも、具体的にどうしたらいいか分からないまま時は過ぎていきました。

皆さんはずっと気になっているけど手をつけていない事ってありませんか? 心にずっと引っかかっている事です。私の中では「問い作りセンスを磨きファシリテーションをうまく出来るようになりたい!」っていう気持ちがずっとくぶっていました。

そして迎えたこの春の自粛期間。まざまざと自分のファシリテーションの実力を見せつけられる機会が訪れました。オンラインサロンです。

皆さんはZOOMなどを使ったオンラインサロンやセミナーや研修などに参加した事がありますか? その時にアウトブレイクルームに行った事はありますか? 大人数の参加者がいる時はいくつかのグループに分かれてディスカッションなどをする所です。各ルームで必要となるのがファシリテーター。自分はただの参加者なのだから何もしなくても大丈夫とたかをくくっていたのですが、とんでもない! 年の功なのか、その役目を任される事が多く、そこで長い間、自分の中で蓋をしていたコンプレックスと再会する事になりました…。

4 「問いのデザイン」という本との出会い

オンラインサロンでの苦い経験を経て「何とかして、問い作りのセンスを磨きたい!」「もっと、スムーズにファシリテーションが出来るようになりたい!」その思いが再び沸き上がります。

そして夏休みに入り私は大きな決断をしました。2学期はワークを取り入れると。そうグループではなく個人のワークです。皆さんはいかがですか? 苦手だからこそ、あえて挑戦してみようと思った経験はあります?

もちろん、今回の決断は子供達の気づきや学び等を考えてのものですが、私にとっては大きなチャレンジとなります。

たとえ個人でも何かのテーマについて作品作りをしたり調べ学習をする時に”問い”は動機付けに大きな意味を持つからです。

そこで何とかしなければと参考資料を探し、出会ったのが最初の画像の本。「問いのデザイン」というタイトルから心を奪われます。

5 創造的対話の場づくり

自主的に参加した場合は別にして、授業などで与えられたテーマや課題についてワークを進めていくのは気持ちが入りにくいのは仕方ないと思っています。

ではどうすればいいのか? 本から私なりにポイントをまとめてみました。ここでのポイントは、創造的対話の場を創るためにどうすればいいかです。今年はグループワークを行うのは制限があるので、ここでの対話は基本的に自分との対話という事になりますが…。

〈学習環境デザイン〉

この本を読んでいて、改めて見直す必要があると思ったのは学習環境デザインについてです。準備するものやワークをする場の設定について子供達の目線で考えていたかという点でした。45人以上の大人数の指導という事で作業効率や指導し易さの方に重点を置いていたと反省しました。

〈足場の問い〉

”足場の問い”という考え方にも大きなヒントをもらいました。こちらが作ったワークのメインとなる”問い”を活かすための”問い”という発想です。いつも時間に追われて授業を進めていると、こういう細やかな配慮に欠けた進め方をしてしまいます。でも実際に作業をする子供達にとって問われている事が自分事になる・腑に落ちる事がとても大切だという事を再確認しました。

〈問いの使い分け〉

問いの使い分けについても考えさせられました。子供達にとって、分かりやすい問いと想定外の問いを準備するなどの技術的な事です。この本に整理されている”問いの7つの性質”は、とても分かりやすく、問いについての捉え方が変わりました。またワークショップでの課題設定時の5つの罠というのも考えさせられるものでした。一度設定したものを見直す時に使おうと思います。

〈その他に活用できる事〉

この本を読み進めていき、とてもありがたかった事はセクションごとに大事なヒントやポイントがロジカルに整理されている事でした。事例も分かりやすくスムーズに読み進めました。その中で上記にあげたもの以外に大きなヒントとなったのは以下の2つです。

1つ目は5つの問題をとらえる思考法です。そもそも、どう問いをつくるかに分からない時や、うまく行かない時に活用してみたい思考法でした。また、この中で「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」という、昔読んでとても面白かった本が紹介されていたのも感慨深いものがありました。

2つ目は課題を定義する5つのステップです。自分が問いを作ってしまうと自分が定義したものを子供も分かっているはずと思い込んでいた所がありました。頭をガツンと殴られた感じでした。この中でワークの目標の再設定のステップの所に7つのリフレーミングというのが出て来ますが、これもとても役に立つのではないかと思います。

6 ファシリテーターとしてのスキルアップ

問いの作り方、あるいは課題の立て方については本当にたくさんの学びをいただけた本でしたが、一番印象に残ったのは6つのファシリテーターのコアスキルの部分です。説明力、場の観察力、即興力などなど。自分の中で未熟さを痛感している事ばかりです。こうして並べてみると余計に凹んでしまいますが、何を意識してファシリテーションを行えばいいかの基準が出来たのはとてもありがたいと思います。

ファシリテーション効果を高める工夫として本の中であげられている4つの即興クエスチョンも興味深いものでした。シンプル・ティーチング・コーチング・フィロソフィカルという4つです。問いに関してこういう分類の仕方は今まで意識した事がなかったので取り入れていこうと思います。

7 最後に

私は古い人間だからか(昭和生まれです)、誰かすごい人に会ったり知ったりしてしまうと自分もそういう風にならなければと思ってしまいます。

皆さんはいかがですか? そうすると、どれだけ努力したつもりでも、その人のマネになり思うように行かず、ますます自信を無くしてしまう悪循環に陥る事がありませんか?

本の最後の方に書かれているファシリテーターの3つの芸風は、そんな私に希望を与えてくれます。私は私らしいファシリテーターを目指せばいいのだと…。

これからの時代、いろいろな場面で問いをたて、課題を設定し、時としてファシリテーションを行う事が増えてくるのではないかと思います。

ワークショップではなくても、自分自身への問い、自己との対話でも、どんな問いかけを自分にするかで生き方自体が変わってくるかもしれません。

あくまで私見ですが、この本の内容をシェアさせていただいた事が何かのお役に立てたなら幸いです。長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。〈終わり〉